2025/01/25
Manurhin MR38 Match かつてフランス警察が採用していた国産リボルバー
フランスのレジェンドリボルバー
Manurhin
MR38 Match
マニューランというリボルバー
Photos & Report by Tomonari Sakurai 櫻井朋成
Gun Professionals 2012年Vol.4(7月号)
フランス警察を始め、税関など内務省に属する法執行機関と憲兵隊は、現在SIG SAUER P2022を採用している。さらに一般の警察官や交通整理の警官や白バイ隊も皆P2022だ。
ドイツ製のP2022が2004年に採用されるまでフランスの公的機関は長い間、自国製のリボルバーを使用してきた。マニューランMR73だ。日本では英語読みからマニューリンとされているようだが、Manurhinの最後の二文字は”in”でフランス語ではアンと発音する。したがってマニューランと書くのがよりフランス語に近い。この銃はフランス製なので、ここではフランス語の読み方で表記したい。

MR73はモデル名からように1973年に誕生したリボルバーだ。当時、マニューランでは最高のリボルバーを作ろうという意気込みで開発を行なった。その結果、リボルバー大国であるアメリカのコルトやS&Wよりも精度の高いものを作り上げた。バレル長は、2.5インチ、3インチ、4インチ、5-1/4インチ、6インチ、8インチ、そして、10-3/4インチがある。
口径は.357マグナム、.38スペシャル、そして9mmパラベラム、.22LR。後に.32S&W Longの競技用が加わった。
この銃は、フランス警察を始め、憲兵隊でも採用された。さらに各地の警備員、特に原子力発電所のセキュリティも採用、その幅広い普及振りから、正にフランスの守り神となっていった。そして、このマニューランと同時期に創設されたフランスの対テロリスト特殊部隊であるGIGNがこれを採用したことでも、一躍有名になった。

全長:209mm
バレル長:5-3/4インチ
重量:1,080g
装弾数:6発
使用弾:.38 Special
GIGNはこのマニューランMR73に絶大な信頼をもち、彼らのシンボル的存在にもなっている。現在ではサイドアームはグロックやSIGなどが採用されているにもかかわらず、彼らの装備からMR73が消えることはない。通常型だけでなく、スコープとバイポッドを装着したモデルまである。
GIGNはその信頼をチーム全員で共有するために、新しいメンバーを受け入れる際、ある儀式を行なう。それは新しいメンマ―がボディアーマーを身に付け、ちょうど心臓の位置にクレーターゲットを取り付ける。そしてGIGNの隊員が25m離れたところからそのクレーを撃つというものだ。ボディアーマーを着けているので正確にクレーを撃ち抜けば問題はないが、ちょっと外れればボディーアーマーで覆われていない部分や、その上の頭部に当たることだってあり得るだろう。まさに命懸けの儀式だ。
ちなみに、仲の良いGIGNのメンバーに彼らへの私の信頼を示す意味で、この洗礼を受けたことがある。実弾の入った銃口が自分に向き、さらに実際に発砲されるのは気持ち良い事ではなかった。しかし、このような事に使うほど、彼らはMR73の精度を信頼しているのだ。


これだけのフランスで信頼されている銃なので、その銃についての話は尽きない。そこで2回に亘ってマニューランリボルバーを紹介していきたいと思う。今回はマニューランリボルバーの中でも変わり種のスポーツ射撃用のMR38マッチを紹介しつつ、MR73の基本性能を見ていくことにしよう。