2025/03/21
Saga of Patents パテント探究9 FN モデル1936
Saga of Patents
パテント探究 9
FN モデル 1936
床井雅美 Masami Tokoi
Gun Professionals 2013年1月号に掲載
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FN モデル1936は、1935年から1937年にかけておこなわれたフランスの制式ピストルトライアルに提出すべく、ベルギーFN社で設計・製作されたシングルアクションの大型セミオート ピストルだ。
同じフランス語圏で、第一次世界大戦をともに連合国側として戦った国同士ということもあり、ベルギーFN社は、第一次世界大戦直後の1922年から1924年にかけておこなわれたフランス軍の第一次制式ピストルトライアルに参加した。
この1922年から1924年にかけておこなわれた第一次のフランス軍の制式ピストルトライアルは、制式ピストルを選定するトライアルというより、第一次世界大戦に出現した多くのセミオートマチックピストルの性能を比較し、それぞれの特質を調査するという性格が強いものだった。
ベルギーFN社は、このフランス軍の制式ピストルトライアルにジョン・M・ブラウニングが設計を進めていた新型ピストルの原形を参加させた。フランス軍の制式ピストルトライアルを通じ、この銃が徐々に現在の生産型に向けて改良されていったことは、以前のFNモデルハイパワーピストルのパテント探究の記事で紹介した通りだ。
1933年フランス軍は、それまでにおこなった比較トライアルの結果を踏まえ、次世代のフランス軍の制式ピストルが備えるべき要求性能をまとめた。
第一次世界大戦中にフランス軍は、主にスペイン製ルビータイプピストルとスターピストルを大量に使用した。これらが共に中型で7.65mm×17(.32ACP)口径だったことも大きく影響し、最終的に7.65mm口径であることや、ピストル本体の重量が650〜675gと軽量なこと、弾薬容量が8〜9発であることなどが要求性能に盛り込まれた。
しかし、7.65mm×17弾薬では、軍用として威力が低すぎるため、第一次世界大戦末にアメリカがフランスに搬入したピーダーセンディバイスで使用される7.65mm口径の弾薬を原形に開発したと伝えられる、7.65mmロング弾薬が使用されることになった。
1935年から始められるフランス軍のトライアルに、9mm×19弾薬を使用する大型のFNハイパワーを参加させるつもりだったFN社は、7.65mmロング弾薬口径のピストルを設計する必要に迫られた。
1934年にFNは、フランス軍トライアル用のピストルを試作完了した。それが、FNモデル1936だ。しかし、このピストルの名前が、本当にモデル1936だったのか、はなはだ疑問がある。理由はあとで記述する。
FN社が提出したFNモデル1936は、トライアルでMASモデル1935、フランス人ペッター原案のモデル1935とともに、最終段階まで進んだ。

最終的にフランス軍は、MASモデル1935とペッター原案のモデル1935の2機種を選択し、FNモデル1936は、選択されなかった。国産ピストルを優先的に選択するという政治的判断だったと言われている。
FNモデル1936は、フランス軍制式ピストルとして特化させ、フランス軍しか使用していなかった弾薬で設計されていたため、一般的な市場性を持っておらず、FN社は、このピストルを量産しなかった。
リポーターが知る限りで、FNモデル1936は、シリアルナンバーが、No.1、No.6、No.7が存在する。いずれも一桁番号で、おそらくFN社が製作した総数は10挺ほどだったと考えられる。
このうちの1挺、シリアル・ナンバーNo.7は、もともとFN社が所有していたものだが、第二次世界大戦の混乱期に何者かによって持ち出され、アメリカに渡ったことが知られており、現在もアメリカのどこかにある。
FN モデル1936の名称についてだが、もともと10挺程度しか生産されず、量産されることもなかったので、正規のモデル名がつけられなかったのではないろうか。少なくとも正規の記録には名前が残っていない。
ブラウニング モデル1936、あるいはスモールバージョン ハイパワーと呼び始めたのはアメリカだった。
しかし、実はこのピストルのパテントが存在している。パテントは、トライアルがおこなわれたフランスでFN社が取得したものだ。
パテントは、このピストルの特徴でもあるハンマーとシアをユニット化させたことに対する特許だ。FN社は、1935日3月4日にパテントを申請、1935年6月17日に公示され、1935年9月7日にフランス・パテント第786652号を取得している。
そのことから、あえてこのピストルに名前をつけるとするなら、パテントが発給された年をとって、FN試作モデル1935とすべきかもしれない。
床井雅美 Masami Tokoi
Gun Professionals 2013年1月号に掲載
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