2019/11/16
実銃レポート「ストックガンの精度を検証!」【前編】
ただでさえ難しいといわれるハンドガンシューティング。当たらないのをガンのせいにする人も少なくないが、果たしてストック(箱出し)のファクトリーガンは、どのくらいの精度を持っているのだろうか。ストックガンとカスタムの精度比較をしてみた。
左上から時計回りに:S&Wパフォーマンスセンター M945、SA(I セイリエント・アームズ・インターナショナル)M&P PROカスタム、グロック Gen3 TT(I タラン・タクティカル・イノベーション)セミカスタム、グロック Gen5 G19、コルト 1911ガバメント。
もう30年以上も昔だが、渡米して初めて憧れのガンを手に入れた時のことである。虎の子の持参金を張り込んで、S&W M686とコルト コンバット ガバメント.45ACPを手に入れた。夢の.357Mag・リボルバーと.45オートである。有頂天になって、ガンをピックアップしたその足で、最寄りのインドアシューティングレンジに向かった。
まずはM686だ。すべてが初体験なので、ふたつ離れたレーンにいる人に見習って、15ヤードほど離れた場所にでっかいシルエットターゲットをセットして、感激に打ち震えつつ.357マグナム弾をロードした。射撃経験はゼロ。日本でモデルガンは持っていたが、幸か不幸か、人生初発砲が.357マグナムだったのである。
S & Wパフォーマンスセンター M945
1999年から数年だけ少量作られたカスタムモデル。当時、1911モデルを持っていなかったS&W渾身の.45オートだ。スライドやバレル周りのガタは一切なく、スライドの動きはウルトラスムーズだ。
今回のテストで最小グループ(58mm)となったM945のターゲット。もっと撃ち込めば、さらにタイトなグルーピングが期待できそうだ。
1発で面食らったといっていい。すさまじい音、発射炎、強烈なリコイル、そのすべてにぶっ飛んでしまったのだ。2発目を撃つまでに、かなりの時間がかかったように思う。弾痕はとみると、あんなにデカい人型シルエットターゲットなのに、左肩上部。黒いターゲット部分から外れた白紙のところにポツンと穴が開いている。人生初弾はハズレだった。惨憺たる衝撃の結果である。6発中2発が弾痕不明(いわゆるターゲットミス! )、2発は白紙部分、2発はかろうじてシルエットの端をかすった程度でしかない。
そして、満を持して撃ち始めた.45オートは悲惨な結果となってしまった。撃ち心地は最高だった。ただし当たらない。テーブルに固定しようがどうしようが、ターゲットの弾痕は満遍なく散らばり、50発を撃ち終えて数えてみると、その弾痕は44発しかない。そのほとんどをテーブルに固定して撃ったにもかかわらず、6発もターゲットミスをしてしまっていたのである。
コルト 1911ガバメント。ピストルレストに固定すると、グリップ下部が支点となって強烈なマズルライズが襲ってくる。左利きのブライアンは、リコイルで右手のサポートが引っこ抜けてしまっている。
後日、シューティング仲間ができて判明するのだが、この1980年代半ばに製造されたコルトガバメントモデルは、その麗しい容姿とは裏腹に、工作精度や仕上げに難があり、こういったストック(箱出し)状態での精度やファンクションには大いに問題があったのだ。
まあ、これは30年以上も前の話なので、現在の状況は大きく変わっている。工作機械そのものの精度は著しく向上し、さらにはコンピューター制御になり、何よりもエンドユーザー(いわゆる消費者)のレベルも上がったために製品の質も向上したのだ。
ここで興味が湧いてくるのは、果たして最新の技術を駆使して昨今製造されたファクトリーのストックガンと、プロフェッショナルによってカスタマイズされたカスタムの間には、どれほど精度に差があるかということである。
ストックながら健闘を見せたガバメントモデル。2発をフライヤーとして除くと、95mmの精度となった。通常行なわれる3発とか5発の集弾テストなら、50mm以下の結果も出せただろう。旧モデルのシリーズ70は裸足で逃げてしまうほどの性能だ。
そこで、今回は.45ACP対決として、3年ほど前に手に入れたコルトのガバメントモデルと、我が家のセーフクイーン、S&Wパフォーマンスセンターが作り上げたM945をカスタムとして比較、さらには9mmでは、グロックGen3のG17と、Gen5のG19 TT(I タラン・タクティカル・イノベーション)セミカスタム vs. SA(I セイリエント・アームズ・インターナショナル)がフルカスタムとして作り上げたM&P PROカスタムの精度テストをお目にかけたいと思う。
【アームズマガジンウェブ編集部レビュー】
美しい写真と共に実銃のホットなレポートをお送りするHiro Soga氏。今回は、知られざる過去に触れつつ最新のカスタムモデルも詳細に取り上げている。エアガンのカスタムネタ元ともされる有名モデルも登場するので、ビルドする際の参考にもなるだろう。
Photo&Text:Hiro Soga
編集部レビュー:アームズマガジンウェブ編集部
この記事は月刊アームズマガジン2019年12月号 P.114-121より抜粋・再編集したものです。