2019/08/31
ローエンフォースメントウェポンピックアップ:リアルガン編
実銃ライターSHINが語る、法執行機関特殊部隊の銃器
かつて法執行機関のサービスピストルといえばリボルバーが主役を務めていた。1980年代以降、ベレッタM92FやシグザウエルP226、グロック17などの登場により、サービスピストルの主役はオートマチックピストルへと移った。また犯罪の凶悪化に対応するため、AR15などのアサルトライフルもSWATだけではなく制服警官用装備(パトロールカービン)として採用されるようになった。ここではすでに法執行機関で採用されている、もしくは採用が期待される銃器を集めてみた。
グロック19 Gen5
法執行機関の8割が使用しているグロックピストル。特にコンパクトサイズのグロック19は私服刑事からSWATまで幅広く使用されているバランスのよいハンドガンだ。グロック19の中でも第5世代にあたるGen5モデルはG19MとしてFBIの要請で完成された最新のモデルであり、スライドストップのアンビ化、新型バレルの採用による高精度化等グロックシリーズの中でもっとも進化したモデルとなっている
スミス&ウェッソンM&P
スミス&ウェッソンM&Pは、ミリタリー&ポリスピストルの名のとおり軍、警察のデューティー向けに開発されている。グロックにはない自然なグリップアングルとより幅広いセーフティバリエーションでロサンゼルス市警察を始め多くの警察に採用されている。カルフォルニア州オレンジカウンティSWATチームは、M&Pの最新型である2.0モデルをエージェンシーアームズがカスタムした特別なモデルを採用している
シグザウエルP320/M17
米軍に採用されたばかりのシグザウエルP320/M17。最新型だけにまだ配備しているSWAT部隊は少ないが、今後確実にそのシェアを伸ばしていくだろう。モジュラーハンドガンとして開発されたP320は、トリガー&シアからなるイグニッションシステムを収めたFCUを中心に様々なサイズ、口径のスライド、フレームと組合せることができる。これにより、私服刑事の小型拳銃、制服警官のフルサイズ、そしてSWATの使用するロングスライド等様々なバリエーションを同じトレーニングで配備できる利点を持つ
FNH FN509
FN509は、ベルギーのFNHが開発した最新のストライカーファイアコンバットピストルである。FNSをベースに元米陸軍デルタフォースオペレーターであり、ファイアアームズコンサルタントであるラリー・ビッカーズの意見を反映して完成されたのがFN509であり、優れたエルゴノミクスとサプレッサーや小型ドットサイトといったSWATオペレーターに必要なアクセサリーの取り付けが確実に行なえる高い拡張性を持つ
ベレッタM92F
ベレッタM92FSは長年にわたって米軍に採用されたバトルプルーフされた信頼性の高いコンバットハンドガンである。ベレッタM9A3は強化型スライドとともに交換式サイト、ストレートバックストラップ、アクセサリーレールを追加した進化版であり、多くのダブルアクション&シングルアクショントリガーを持つハンマー式オートピストルの中でも高い評価を誇っている。現在ではポリマーフレームストライカーオートに切り替わりつつあるが、ベレッタ92系ハンドガンは今後もSWATオペレーターにとって信頼のおけるハンドガンであり続けるだろう
シグザウエルP226
シグザウエルP226はベレッタM92Fと並んでもっとも成功したダブルアクション&シングルアクショントリガーを持つハンマー式コンバットハンドガンの1つである。シンプルな操作性と確実な作動、そして高い命中精度で多くのSWATを含め特殊部隊で採用されている。P226はアクセサリーレール付きのP226Rへとアップデートされ、現在でも第一線の部隊で使用されている気の長いマスターピースである
KIMBER LAPD METRO CUSTOM II
米国でハイエンド1911ガバメントを製造するキンバーがカルフォルニア州ロサンゼルス市警察SWATを含め特殊部隊が所属するメトロディビジョンのために特別生産した「LAPD METROCUSTOM 2」。1911ガバメントを採用する警察機構は少ないが、ロサンゼルス市警察では通常の射撃検定に加えボーナスコースと呼ばれる特別な射撃検定をパスした警官のみ1911ガバメントの携行が許される。1911ガバメントはガンファイターの証でもある
KIMBER LAPD SWAT CUSTOM II
キンバーがロサンゼルス市警察SWAT専用に製造した「LAPD SWAT CUSTOM 2」。年間400件以上の出動件数を持つもっとも歴史が長く、実戦経験が豊富で全米最大規模のSWATがロス市警の「LAPD SWAT」である。彼らにとって.45ACP口径の1911ガバメントを携行することは誇りでもあり、LAPD SWATのシンボルでもある。アクセサリーレール付きとレールなしモデルが作られシリアルナンバーはKLA(キンバー、ロサンゼルス)、最初の3桁はLAPD SWATが所属するメトロディビジョンが発足した部屋番号である114から始まる。LAPD SWATオペレーターでなければ購入することができない特別なモデルである
KIMBER SIS CUSTOM
ロサンゼルス市警察SIS(スペシャル・インバスティゲイション・セクション)は、ロサンゼルス市警の刑事の中から選び抜かれたディテクティブとLAPD SWATで特殊作戦経験を持つオペレーターからなる、凶悪事件に専門に対処するアグレッシブな捜査部門だ。暴力組織犯罪、人質事件等現在進行形の暴力犯罪に対抗するため、高いスピードと攻撃性を持つ。キンバーはLAPD SWAT専用1911ガバメントをベースに、私服で活動するSISのためにより軽量、コンパクトなカスタムガバメントシリーズを提供した
スプリングフィールドTRP
スプリングフィールドによる1911ガバメントはスタンダードな入門モデルから、同社のカスタムショップによるハンドメイドされた1911ビューローモデルは、米国法執行機関特殊部隊の頂点に立つFBI SWATに採用されているトップモデルである。TRPはSWATが必要とするカスタムをしっかりと抑えて開発された「タクティカル・レスポンス・ピストル」であり、多くのSWAT オペレーターによって使用されているモデルである
STI2011 マローダー
これまで多くの競技射撃の場で使用されてきたSTI2011は、ユニークなモジュラーフレームを持つハイキャパシティー1911ガバメントである。9mmパラベラム弾を20発装填できる攻撃性の高いコンバットオートであり、2019年より信頼性の高い第2世代マガジンとともにロサンゼルス市警に複数のモデルが認可された。1911ガバメントと同様、特別な検定をパスしなければ携行することはできないが、現在ではすでに複数のロス市警メトロディビジョンSWATオペレーターが使用している
ヘッケラー&コック HK416
HK416 はドイツのヘッケラー&コックが開発したM4バリエーションの1つ。SWATの行なうCQBオペレーションにおいて必須となる10インチ程度のショートバレルとサプレッサーの併用において高い性能を発揮するデザインとなっている。現在では特殊部隊のスタンダードなチョイスとなっており多くの国の警察、軍特殊部隊が採用している。写真はロス市警SWATによって使用されているもの
ロックリバーアームズ AR15
ロックリバーアームズ製M4は米国麻薬取締局によって採用されたスタンダードなM4のバリエーションの1つである。ロックリバーアームズは銃身長やグリップ、ストック、ハンドガードなど多くのアクセサリーをオーダーメイドで組み合わせることができる。現在でも多くのSWATに採用されているM4だといえるだろう
MP5A2
MP5はSWATの代名詞ともなった高精度なサブマシンガンである。G3アサルトライフルを中心としたウェポンシステムの一部として完成され、そのためサブマシンガンでありながら高い命中精度を誇る。SWATが必要とした近距離での外科的な精密射撃による脅威の排除に適したユニークな銃器とした注目され、世界中の特殊部隊のスタンダートとなったサブマシンガンである
MP5SD3
MP5をベースにサプレッサーを内蔵した消音サブマシンガンがMP5SDシリーズである。バレルにはガス抜きの穴があけられており、通常の9mmパラベラム弾を使用しても亜音速となり、大型のサプレッサーとの併用で現在でももっとも静かなサブマシンガンの1つでもある。現在でも多くのSWATによって使用されており、CQBのエントリーだけではなく突入前に街灯や外周の明かりの破壊、警備犬の排除などに使用されている
MP7A1
MP7A1はNATO軍のPDW(パーソナル・ディフェンス・ウェポン)として開発された。ユニークな5.7mm弾を使用し、レベル3のボディーアーマーを無効化できる。SWATにとってコンパクトで片手で扱えるサイズでありながら、防弾ベストを無効化できる特殊な武器として一部で採用されている。写真はロス市警メトロディビジョンK9が使用しているMP7A1である。警察犬を扱いながら片手で扱える強力な武器を求めての採用であった
B&T APC9
米軍にSCW(サブ・コンパクト・ウェポン)に指定採用されたスイスのB&Tによる最新型小型サブマシンガン。90年代からSWATによって採用されてきたMP5の買い替え需要とともに現在多くのSWATチームから注目を浴びている最新型のサブマシンガンである。M4に準じたトリガーメカニズムとよりシンプルな操作性、フラットトップとレールの追加からなる高い拡張性がMP5に大きく勝る利点となっている
シグザウエル MPX
シグザウエルが開発した最新のサブマシンガンがMPXだ。ライフル弾を使用するMCXのファミリーとして生まれたモデルで、高いモジュラー性を誇っている。異なる口径やサイズ、ストックの変更がユーザーによって簡単に行なえるユニークさを持っている。やはりMP5からの買い替え需要によって今後多くのSWATに採用されていくであろう新機軸のサブマシンガンである
ベネリ M4
ベネリM4は米海兵隊にも採用されているセミオートショットガンである。デュアルガスピストン作動方式により幅広い弾薬での確実な作動を約束し、短銃身のバリエーションでも正確な射撃が行なえる。現在ではロス市警SWATを始め多くの警察特殊部隊に採用されているオートショットガンのスタンダードである
レミントンM870
レミントンによるポンプアクションショットガンのマスターピースであるM870。SWATではこのシンプルなポンプアクションショットガンを、ビーンバック弾などの非致死性弾薬の使用。ドアのヒンジやデットボルトを破壊しブリーチングを行なうため、また車輌の強化合わせガラスを貫通させるためのスラッグ弾を発射する用途で使用することが多い
モスバーグ M500
モスバーグM500はレミントンM870と人気を二分するポンプアクションショットガンである。SWATにおいてショットガンは至近距離での高い制圧力を持つ武器であると同時に、ブリーチングや車輌に対しての射撃など、サブマシンガンやアサルトライフルでは行なえないオプションに使用されるツールとして運用されている
TEXT&PHOTO:SHIN
この記事は月刊アームズマガジン2019年10月号 P.44~47より抜粋・再編集したものです。