装備

2025/10/18

アメリカのニューヨークに本部を置くタクティカルアパレル&ギアメーカーの最新作 TACTICAL GEAR PICKUP:CRYE PRECISION R-SERIES

 

CRYE PRECISION R-SERIES

 

PHOTO BY DOD

 

About Crye Precision

 

 2000年に創業したアメリカのニューヨークに本部を置くCrye Precision(クライ・プレシジョン)は、Caleb Crye(ケイレブ・クライ)とGregg Thompson(グレッグ・トンプソン)によって創設されたタクティカルアパレル&ギアメーカーである。「創業当初からミリタリー、私たちの自由を守る人々に貢献することを重視」することを標榜し、ベリー修正条項(アメリカ国防総省が調達するものは、米国で生産されたものに限るとする法律)準拠の製品を生み出してきている。2002年に発表された迷彩パターン「マルチカム」をはじめ、同社が開発した製品は、世界中の軍や法執行機関に採用され、多くの装備メーカーに影響を与えてきた。


 クライ・プレシジョンは、装備好きな読者にとっては馴染みのあるブランドのひとつであり、本誌でも何度か同社の製品についてご紹介させていただいた。今回はクライ・プレシジョンのプレートキャリアJPCシリーズに触れつつ、最新作であるJPC-Rについてご紹介をしていこう。

 

 JPC(Jumpable Plate Carrier)

 

 

 JPC(ジャンパブル・プレート・キャリア)は、2010年のショットショーで発表され、デザインが微調整されて翌年から供給が開始されたプレートキャリアである。
 初期型はスリック形状で、飛行機からジャンプする際に薄く折りたたんでバッグに簡単に収納できるよう設計されていた。背面プレートポケットのスロットを通してバンジーコードで固定するコーデュラ素材とプラスチック系硬質素材を組み合わせた表裏がモールシステム対応のSkeletalカマーバンドシステム、前面のプレートにはピストルマガジンを収納可能なトップアドミンポケットと3つのARタイプマガジンを収納可能な一体型のマガジンポケットを備えている。

 

 

 JPC2.0 

 

 JPC2.0 Maritime 

 

 2015年のショットショーで発表されたJPCの発展型であるJPC2.0は、収納可能な防弾プレートはSAPIプレートとスイマーカットプレートとなっている。
 プレートポケットはプレートサイズに合わせて各サイズと、コーデュラナイロン以外に水はけのよいメッシュ素材を採用したマリタイムモデルがある。
 その特徴は、フロントパネルのマガジンポーチ部のパネル化、クイックリリース機構、バックパネルの装着可能なギミックがあげられる。1枚目の写真の隊員はJPC2.0にカマーバンドをCOYOTE TACTICAL SOLUTIONSのJPC QUICK DETACH RIGID CUMMERBUNDに交換して使用している。
 TEGRISシートのカマーバンドに装着された樹脂製クイックリリースパーツで純正とは違う着脱方法を採用している。他社からJPCシリーズに対応したアクセサリーが多数あるのもJPCの使用者が多いからである。

 

カマーバンドに縫い付けられた腹部のループストラップを外側に引くことでカマーバンドの前面フラップが本体前部のパネルから外れ、さらにショルダーストラップ付け根前部にあるフックを引っ張るとショルダーストラップが分離して本体を前後に分割できる

 

AVS (Adaptive Vest System)のDetachable Flapシリーズのパネル以外にも前面にある垂直ウェビングループを使ってチェストリグを装着できる

 

本体と各種ジップオンパネルのジッパーで左右を連結して装着可能。バックパネル未装着時はリアプレートポケットのパルスループが使用可能だ

 

 

CRYE PRECISION R-SERIES

 

 

 2023年のショットショーで発表されたRシリーズは、特殊部隊と共同で開発され、彼らの独特で多様な任務に対応するため重量と耐久性、汎用性と拡張性を調和させて高度に進化した装備一式となっている。
 Rシリーズは、JPC R-SERIESを中心に作戦内容に応じてセットアップでの対応、現在の通信システムに対応したケーブル管理の改善、着用した隊員が重い荷重運搬に対応できる設計と簡素化された装着方法による装備への装着感の向上、複数のプレートサイズと構成に対応できる製品仕様になっている。

 

Rシリーズは18のアイテムがあり、作戦内容や用途に合わせて「Assault Configuration」「Jump Configuration」「RECCE Configuration」「Pack Configuration」の4つを組み合わせで運用していく

 

R-Series Lineup

• R-SERIES M4 JUMP FLAP
• R-SERIES PLATE COVER
• R-SERIES ASSAULT HARNESS
• R-SERIES 3-BAND SKELETAL CUMMERBUND
• R-SERIES 3-BAND STRUCTURAL CUMMERBUND
• R-SERIES 2 BAND STRUCTURAL CUMMERBUND
• R-SERIES HARNESS ADAPTER
• R-SERIES RADIO SIDE POUCH
• R-SERIES M4 SIDE POUCH
• R-SERIES SHOULDER PAD SET
• R-SERIES SIDE MOLLE PANEL SET
• R-SERIES JPC PADDED INSERT
• R-SERIES ZIP-ON PACK ADAPTER
• R-SERIES RADIO POUCH
• R-SERIES M4 MAG RETAINER
• R-SERIES DROP GP POUCH 8X5
• R-SERIES ZIP-ON PACK

 

 

Assault Configuration

 

 

 「Assault Configuration」は、Rシリーズの中核となるJPC R-Seriesと各種アクセサリーを使って構成されたプレートキャリアのセットアップである。

 

 JPC R-SERIES 

 

 JPC R-SERIESは、機能的な拡張性と軽量化を含めた快適性を重視したJPCシリーズの特徴をさらに強化したデザインとなっている。ショルダーパットはJPC 2.0 Maritimeに採用されたメッシュタイプになっており、肩部のクイックリリースの樹脂パーツもデザインが変更されている。前後のプレートカバーも上部左右が開放されており、SAPIやさまざまな形状のプレートに対応できる。

 

 R-SERIES 3-BAND SKELETAL CUMMERBUND 
 R-SERIES 3-BAND STRUCTURAL CUMMERBUND 
 R-SERIES 2 BAND STRUCTURAL CUMMERBUND 

 

 RシリーズのカマーバンドはAVS Extendable StKSSが併用可能で、荷重を耐える強固なモールが2列と3列のSTRUCTURALモデルと、柔軟性を生かせる2列のSKELETALモデルの3種類ある。開放が楽にできる薄型ハンドルは、3バンドはJPC2.0と同じ形状、2バンドはラバー素材の持ち手が付いたハンドルをそれぞれ装備している。

 

肩部分に重量を支えつつ通信ケーブルを保持できるミルスペック1/2インチウェビング、通信ケーブルを保護と携帯性を考慮してプレートカバー内側のラバーストラップが採用された

 

サイドパネル各種を装着時に可能な限り薄く保持するために前後のプレートカバー内側にベルクロ内蔵のスロットを装備

 

STRUCTURAL CUMMERBUNDの前面の突起パーツをフロントカバーのスロットに挿入してカマーバンドを保持することで、重くなったプレートキャリアの運用をサポートする

 

共通パーツの小型の薄型ショックコードリテーナーは、背面の接続をサポートしつつ引っ掛かり防止になっている

 

 R-Series JPC Padded Insert 

 

 RシリーズJPCパッド入りインサートは、JPC Rシリーズの前後のプレートカバーに挿入するフォームパットだ。前面は胸骨、背面は鎖骨を保護しつつ着用者とプレートの間に挟むことで圧迫からの疲労を軽減する。着用者の体格に合わせてトリミングも可能だ。

 

 R-Series Shoulder Pad Set 

 

 R-Series Shoulder Pad Set は、JPC Rシリーズ用の左右の外側にケーブル/チューブ保持用の2本のループが縫製されたショルダーパットだ。従来のJPCシリーズのショルダーストラップに社外品のショルダーパットを装着して重量軽減を行う隊員が多かったが、純正オプションとして採用された。

 

 

EXTENDABLE Structural Kinetic Support System (StKSS) 

 

 StKSSは、長期間のプレートキャリアの装着による腰への負担を軽減するために、プレートキャリアとモールベルトを接続して着用者の身体への負担を両足や骨盤のような荷重耐性のある部位に分散するシステムだ。

 

既存のプレートキャリアの着用方法では身体の高い位置に重心がくるため、疲労や運動能力の低下を起こすが、StKSSによって下半身に重心が移るので安定した動作で疲労軽減にもつながる

 

 

 

Jump Configuration

 

 

 Jump Configurationは、RシリーズのマガジンキャリアとなるR-Series M4 Jump Flapに専用のハーネスとハーネスアダプターを用いてマイクロチェストリグとして運用するセットアップである。

 

 R-Series M4 Jump Flap 

 

 R-SERIES M4 JUMP FLAPは、30連ARマガジン3本を収納可能なポケットを装備した取り外し可能なフラップである。チェストリグに変換するための着脱可能なバックルを用いてRシリーズアサルトハーネスとハーネスアダプターの追加でチェストリグ、RシリーズZIP-ON PACKアダプターとPACKの追加で軽量プレートキャリアに仕様変更できる。

 

 R-SERIES HARNESS ADAPTER 

 

 R-SERIES M4 MAG RETAINER 

 

 

 R-SERIES HARNESS ADAPTERは、R-Series M4 Jump Flapを外側に装着でき、内側のストレッチポケットに防弾プレートが保持可能な2インチリテーナーストラップを内蔵する。R-SERIES M4 MAG RETAINERをリアポケットに装着することでARマガジン3本を携行可能にするベースコンポーネントになっている。

 

 R-SERIES ASSAULT HARNESS 

 

 R-SERIES ASSAULT HARNESSは、R-SERIES M4 JUMP FLAPと組み合わせてチェストリグとして運用できるハーネスである。コンパクトなパネルに対応するX型に伸びたハーネスストラップのベース内側は、快適さと通気性のためのスペーサーメッシュになっており、外側には3/4インチミルスペックキャリーハンドルを装備している。

 

 R-SERIES DROP GP POUCH 8X5 

 

 R SERIES DROP GP POUCH 8X5は、8×5×2.5インチ(20.32×12.7×6.35cm)の汎用型ポーチである。内側のループパネルを展開することでR-SERIES M4 JUMP FLAPの下部のスリップポケットに装着可能だが、ベルクロ止めとなるプレートキャリアやチェストリグのハンガーポーチとしても使える。

 

 SIDE POUCH&SIDE MOLLE PANEL 

 

 Rシリーズの特徴として、サイドポーチやパネルを装着する想定で核となるプレートカバーやチェストパネルやバックパネルがデザインされている。追加パーツとなるそれらサイドパーツは作戦に必要不可欠な専用品と汎用性のあるものが用意されている。

 

R-SERIES SIDE MOLLE PANEL SET

R-SERIES SIDE MOLLE PANEL SETは、各種デザインのMOLLEシステム対応ポーチを装着可能なMOLLE対応パネルである。ベルクロでの取り付け方式の左右方向のパネルセットなのでパネルを前面または背面の左右に接続可能だ。


R-SERIES M4 SIDE POUCH

R-SERIES M4 SIDE POUCH は、リバーシブル設計によって左右または下部にサイドにあるベルクロで取り付け可能なマガジンポーチである。調節可能なストラップを上下してポーチ内のマガジンの深さを設定でき、コードロックとプルタブでマガジンを保持する。


R-SERIES RADIO SIDE POUCH

R-SERIES RADIO SIDE POUCHは、両手利きポーチデザインとサイドベルクロによる装着方式によって前後カバーの左右に配置可能だ。軍用無線機であるPRC 163・152・148を収納して運用可能。ベルクロ付きのフロント3/4インチサイドリリースバックルにより、無線機本体をポーチから取り出すことなくバッテリーを素早く簡単に交換ができる。


R-SERIES RADIO POUCH

R-SERIES RADIO POUCHは、R-SERIES RADIO SIDE POUCHと同型のポーチで装着方法がMOLLE対応になっているため装着位置が自由に決めやすくなっている。

 

 

RECCE Configuration

 

 

 RECCE Configurationのセットアップは、チェストリグシステムの中核となるR-Series M4 Jump Flapに、Rシリーズのアサルトハーネスとハーネスアダプターで構成されたJump Configurationにジップオン・パックアダプターとパックを装着。軽量なプレートキャリアとして運用する。RECCEはRECONNAISSANCE(偵察)の略語である。

 

 R-SERIES PLAT COVER 

 

 R-SERIES PLAT COVERは、R-SERIES HARNESS ADAPTERと併用することで軽量フロントプレートキャリアカバーを構築できるパーツである。左右を強力な3インチゴムで保持するので、さまざまな厚さのプレートが使用できる。上部中央のトップループプラカードの後ろにある内部スロットでATAKフリップダウンアダプターを装着可能だ。

 

 

Pack Configuration

 

 

 Pack Configurationのセットアップは、R-SERIES ZIP-ON PACK ADAPTERとR-SERIES ASSAULT HARNESSを併用してR-SERIES ZIP ON PACKをバックパックとして運用する。

 

 R-SERIES ZIP-ON PACK ADAPTER 

 

 R-SERIES ZIP-ON PACK ADAPTERは、パッド入りのサイドとセンターメッシュ設計によって空気の流れが確保され、通気性と快適さが得られる。ベルクロサイドアタッチメントシステムにより、すべてのRシリーズのサイドポーチを背面に装着可能だ。

 

 R-SERIES ZIP-ON PACK 

 

 R-SERIES ZIP-ON PACKは、500Dナイロンの外周の内側に250Dポリメッシュインサイドポケットを備えるバックパックである。防弾プレートを保持するストラップ付きのインナーポケットがあるので、無線機やハイドレーションブラダーと一緒に持ち運べる。
 内部には通信ケーブル配線用の複数のポートがあるのでケーブルの引っ掛かりを起こすことなく配線可能だ。JPC2.0同様にサイドジッパーでR-SERIES ZIP ON PACKに簡単に接続可能なことを含め、Rシリーズの各アイテムとの組み合わせを選択することでJUMP、RECCE、PACKなどの各バージョンで運用できる拡張性を持つ。

 


 

 Rシリーズは、装備好きには興味深いアイテムであろう。JPCを含めクライ・プレシジョンのプレートキャリアや各種アクセサリーのよさを生かしつつ、近年の特殊部隊装備のトレンドと言えるマイクロチェストリグとプレートカバーを中心としたチェストリグやバックパックとの連結や転換可能なギアデザインに沿ったものだ。
 日本における正規販売店のWARRIORSでは、Rシリーズが順次入荷しているとのこと。全種類が揃うタイミングで現物を見てさらにレビューできたらと思う。

 

 

TEXT:Ghost(Ghost in the Dark)
PHOTO:Crye Precision/Ghost(Ghost in the Dark)
SPECIAL THANKS: Crye PrecisionWARRIORS(CRYE PRECISION 日本正規代理店) 

 

この記事は月刊アームズマガジン2025年11月号に掲載されたものです。

 

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