装備

2025/04/26

過酷な環境で活動をするプロフェッショナルのためのサポートツール「THYRM」

 

専門家たちの問題解決のために開発を行う気鋭のメーカー、THYRM LLC

 

過酷な環境で活動をするプロフェッショナルのためのサポートツール「THYRM」

 

 THYRM(サイリム) LLCの創設者であるAndrew Frazier(以下アンドリュー)は、アメリカ人とイギリス人の両親の間に生まれ、アメリカ人としてオレゴン州ポートランドで育った。そして、カリフォルニア州のベイエリアで、医療技術デバイスの設計に携わるようになった。この仕事で得る収入は、彼をいくつものホビーに親しむだけの余裕をもたらした。数ある趣味の一つが「競技射撃」だった。ハンドガンの射撃にすっかり魅了されたアンドリューは、IDPAの国際試合に出場するほどまでにのめり込んだ。そして、その試合の最中に彼は低視認空間で、ハンドガンと一緒にハンドヘルドライト(懐中電灯=フラッシュライト)を使用する際の問題に直面した。

 読者の皆さんもご存知のように、フラッシュライトをはじめとする別のデバイス(装備)を持つと、ハンドガンは握り方が変わってしまう。フラッシュライトを使ってターゲットを照らしつつ効果的に射撃を行なうためには、それまで身につけてきた「基本」を根本から変えるような練習が必要だった。大きな壁にぶつかった。だが、アンドリューが諦めることはなかった。

 彼は同じくベイエリアでAppleをスタートアップしたスティーブ・ジョブスとスティーブ・ウォズニアックのように、ガレージにこもって革新的な「何か」を作ることはお手のものだったのである。そう。彼は、ギア(道具)をつくればいい、と考えたのである。
 試行と錯誤の上で生まれたギアが、THYRMのフラッグシップモデルの「スイッチバック」である。フラッシュライトをより効果的にハンドガンと併用できることから世に送り出されてほどなくプロフェッショナルを中心に評判を呼んだ。

 

過酷な環境で活動をするプロフェッショナルのためのサポートツール「THYRM」
THYRMのスイッチバックが誕生したことで、ローライトシューティングでのハンドヘルドライトの使用方法が明確なものとなった

 

SwitchBack Flashlight Ring & LPC Clip

 

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 THYRMのフラッグシップアイテムと言える”SwitchBack(スイッチバック)”はハンドヘルドライトを順応性のあるタクティカルツールに変身させる。装着方法は簡単。ボディとテールキャップの間にはさみ込むだけで、捜索や射撃時に保持、展開、その他の操作を容易にする。操作方法も簡単。指かけに添えた親指を押すことで、中指の後方に圧力をかけてライトを作動させることができる。親指を使って武器に装着したウェポンライトを作動させるのと同じ方法である。

 

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“SwitchBack(スイッチバック)”モデルは現在、「SwitchBack Large 2.0」「SwitchBack DF」「SwitchBack HOG」「SwitchBack S Backup」「Low Profile Carry Clip」の5種類を製造販売されている。写真のSwitchBack Largeは初期モデルだが、「2.0」の発売に際して販売終了となった

 

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「SwitchBack Large 2.0」は多くの1インチ径ライトに対応するSwitchBack Largeの最新バージョン。フィンガーリングの強化やMOLLE/PALSウェビングにも対応する強力なポケットクリップの位置変更など細かな部分に至るまで、さらに使いやすいように改良された

 

 

 理にかなったギアは、現在、タクティカルシューティングインストラクターのクリス・コスタ、軍や法執行機関の職員、さらにはプロのアウトドアマンに至るまで、幅広い分野の人々に愛用されている。このスイッチバックの成功を手始めに、防水バッテリーストレージデバイスであるCell Vaultなど、数多くの製品を開発供給してきた。

 

CellVault Battery Storage

 

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 Switchbackの販売開始後、THYRMは “CellVault(セルヴォルト)” の開発に着手した。CellVaultは、1列のMOLLEウェビングに簡単に取り付けられる防水バッテリーストレージデバイスである。チェストリグやプレートキャリア、リュックサックなどにあるMOLLE1列だけを使って装着可能な省スペース運用アイテムだ。“CellVaultバッテリーストレージ”には、「CellVault」「CellVault XL」「CellVault-18」「CellVault-21」「CellVault-5M」がある。バッテリー収納用にデザインされているが、食品にも安全なプラスチック製でできており、サバイバル用品や医薬品など様々なものを収納可能だ。

 

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「CellVault」はCR123バッテリー3個、単4乾電池4個、単3乾電池2本(少し余裕があり)だけでなく、小型サバイバルギアや応急処置用品、医薬品、消耗品、緊急時の現金、フラッシュドライブなどサイズが合うものは収納可能だ

 

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ユーザーの使用目的と好みに合わせて選ぶことができる豊富なカラーバリエーションを展開。色は、ブラック、オリーブドラブ、レスキューオレンジ、フラットダークアース、アーバングレー、ブラックヒンジ付きクリアがある

 

 

 

DarkVault Critical Gear Case

 

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 内部が大きめの汎用ケースとして現役の軍人と連邦法執行機関からの意見を取り入れて開発されたのがこの ”DarkVault Critical Gear Case”(ダークヴォルト・クリティカル・ギア・ケース) だ。「ナビゲーションや通信タスクのために通信機器にすぐにアクセス可能。なおかつ最大の保護性能を持っているケース」という現場からのタフな要求に応えるこの耐衝撃保護ケースは、携帯電話、ナビゲーション機器、各種デバイスなどの精密機器を衝撃、埃、水などから保護し、MOLLE/PALSウェビングに対応している。

 

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堅牢な外装に水、埃、汚れを防ぐガスケットシールで収納物を保護する。使いやすさも考慮されており、調整機能付きのヒンジはナビゲーションツールや各種スマートフォンを固定したい位置で保持できる。クイックMOLLEアタッチメントシステムで各種キャリアに装着可能なため、装着するキャリアを選ばず運用可能だ

 

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内側と外側にIDや内部の整理整頓に便利なベルクロパネルを装備

 

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ケースをMOLLEに固定するためのロックや不正開封防止装置用のストラップホール&ラッチホールは、収納物の機密保全を考えると必須と言える仕様だ

 

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カラーバリエーションは、ブラックやレスキューオレンジのような単色以外にもマルチカムブラック、マルチカムトロピックなどマルチカムのカラーバリエーションがあり、それぞれには耐久性の高いマルチカムコーティングが施されている

 

 

VariArc Helmet Mount

 

過酷な環境で活動をするプロフェッショナルのためのサポートツール「THYRM」

 

 “VariArc Helmet Mount”(ヴァリアック・ヘルメット・マウント)はタクティカルインストラクターであるLMS DefenseのJosh Jackson(SWAT-LEO)が、他のSWATチームのリーダーや現役の特殊作戦兵士からの意見を取り入れて考案した、現場が求めるヘルメットマウントだ。スチール製ハードウェアを装備した耐久性に優れた強化ポリマー製で、ヘルメットマウントのライトは通常固定されているが、このマウントは360度全方向の照射を可能にする。VariArcHelmet Mountには「VariArc Ops-Core」「VariArc Team Wendy」「VariArc M-LOK」「VariArc-VS」のそれぞれ異なるヘルメットマウントシステムに基づいた4つのバージョンがある。

 

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「VariArc Ops-Core」「VariArc Team Wendy」「VariArc M-LOK」はそれぞれ対応するヘルメットに3-slot、4-ridge Picatinny Accessory Railを装着できる

 

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「VariArc-VS」はピカティニーレールベースまたはスカウトマウントのいずれかを選択して使用できる

 

 

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 THYRMはフレイジャー家全員が関わる家族経営企業だ。アンドリューはデザインとマーケティングを担当している。新しい製品ができるまでは、まず自宅のCADソフトウェアで図面を作成、ガレージツールを使用してプロトタイプを製作、最終的には米中西部で射出成型のプロトタイプを完成させるという手順を踏む。完成したプロトタイプはレビュー、改良、テストのために使われる。
 アンドリューのパートナーは、シリコンバレーの教師兼Java開発者である。ウェブサイトと店舗インフラ(施設と設備)を開発しながら、リモートフルフィルメントオペレーション(遠隔業務管理)とカスタマーサービスを管理している。彼らの親友であるスコット・ノーブルは、社内の従業員に対してマーケティングと販売のサポートを行っている。

 THYRMの全製品は“Made In USA”である。設計とテストはカリフォルニア州サニーベールで行われ、製造、プロトタイプ製作、物流管理などの業務全般は、オハイオ州とイリノイ州のシカゴで行なわれている。

 


 

TEXT:Ghost(Ghost in the Dark)/アームズマガジンウェブ編集部
SPECIAL THANKS:THYRM LLC

 

この記事は月刊アームズマガジン2025年6月号に掲載されたものです。

 

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