2024/09/12
ハートフォード コルトM1877ライトニングのすべて
実銃の歴史からトイガンラインアップまで徹底解説!
複雑なメカニズムからトイガン化は不可能と思われていたコルト初のダブルアクションリボルバー、コルトモデル1877ライトニングを、ハートフォードは数年の歳月をかけてモデルガン化した。このトイガン史に残るモデルについてトルネード吉田が徹底解説する。
■実銃のコルトモデル1877ライトニング
19世紀アメリカ西部開拓時代、伝説の銃。その1挺がコルト モデル1877ライトニングだ。この銃は、有名なコルトシングルアクションアーミー(SAA)をそのままダブルアクション化したような外観の銃だが、実はSAAよりひとまわり小さく、可愛らしさと美しさを兼ね備えた中型のリボルバーだ。だが、コルト初となったそのダブルアクションメカニズムの構造は複雑で壊れやすいという欠点を持っていた。また伝説の少年アウトロー“ビリー・ザ・キッド”の愛銃としても有名だ。その他にも有名なアウトローガンマンのジョン・ウェズリー・ハーディンもコルト1877を愛用していたと伝えられる。
コルトSAAの登場(1873年)から4年後の1877年にコルト1877は新発売された。「モデル1877」という年式によるナンバリングの名前は、実は20世紀になってからコレクターによって付けられた愛称だ。この銃の新発売当時の名前は「Colt’s New, Double Action, Self Cocking, Central Fire, Six Shot Revolver」、すなわち「コルトの新しいダブルアクション、自動コッキング、センターファイア、6連発リボルバー」だ。何だか銃の性能(セールスポイント)を列記しただけの抽象的な名前だが、この当時のコルトの銃の名前は、どれもこんな感じの曖昧なものだった。だから後にコレクターが年式のナンバリングの名前を付けて呼ぶようになったのだ。
さすがに機能を列挙しただけのものを銃名とするのは広告的にイマイチと思ったからだろう、当時のコルトの大手ディーラーのひとつであったB・キットレッジがコルト1877の.38口径のモデルに「ライトニング(稲妻)」、.41口径のモデルに「サンダラー(雷)」という愛称を広告に付けて販売した。なお、ややこしい話で恐縮だが単に「コルトライトニング」というと、同じ名前でコルトが1884年から発売したスライドアクション(ポンプアクション)のライフルもあるので要注意だ。
最初に発売されたコルト1877は銃身にエジェクターチューブのない、短い銃身のモデルだった。SAAと似た外観の1877だが、ここからもSAAとは違った使い道を想定して作られた銃であることが分かる。SAAのオリジナルの口径はストッピングパワーに優れる大口径の.45ロングコルトで、SAAは軍用向けの銃だ。それに対してダブルアクションメカによって即応性に優れる1877はセルフディフェンス用や警察用だ。携帯しやすいように銃身は短く、中型で重量も軽め。いざという時に素早く銃を取り出して、そのまま銃口を向けてバンバンと連射し、状況を回避することが第一で、リロードをしてまで撃ち続けることは想定されていない。だからエジェクターは装備されなかったのだ。
だが実際に発売されると「やはりエジェクターを付けてほしい」という要望が多かったことから、翌1878年にはエジェクター付きのモデルも発売された。エジェクターを付けるためには銃身に一定の長さが必要なため、銃身長は4.5インチ以上となった。コルト1877の銃身長のバリエーションとしては1.5インチから10インチまで複数あったが、スタンダードな銃身長はエジェクターなしのモデルでは2.5インチ、3.5インチで、エジェクター付きでは4.5インチと6インチだった。
銃の標準の仕上げはフレームがケースハードンで他のパーツはブルー(黒染め)。ニッケルメッキのシルバーモデルも人気だった。グリップは、初期はチェッカリングの入ったワンピースのローズウッド木製グリップだったが、すぐにランパンコルトのマークの入ったチェッカリング入りのハードラバー製へ変更され、これが標準となった。また、わずか約200挺ほどだが「レインメーカー」(雨雲)と呼ばれる.32口径のモデルも造られた。
コルトは1877の後に.44~.45口径のコルト1878ダブルアクションアーミーを発売し、さらにダブルアクションリボルバーを現代に続くスイングアウト式へと発展させていった。コルト1877は1909年までに計166,849挺が製造されたが、そのほとんど(約111,500挺)は1898年までの製造だった。
■ハートフォードのコルトM1877ライトニング
- 全長:230mm
- 全幅:120mm
- 全高:32mm
- 重量:520g(カートリッジ含む)
- 装弾数:6発
- 価格:¥39,380
- 発売日:2023年11月8日
コルト1877は構造が複雑で故障が多いため、その人気や知名度に反して「トイガン化するのは難しい」と長年言われてきた。20数年ほど前にもコルト1877をモデルガン化すると公言し、試作品を作っていたモデルガンメーカーもあったが(R社)、結局、発売されることはなかった。そのため永くトイガンファンの間では「絶対に出してほしいが、もう出ない銃」と思われてきたのだ。
そのコルト1877を思い切った大胆なアレンジでバンバン撃って遊べる“快調発火”のモデルガンとして、ついに製品化したのがハートフォードだ。コルト1877は、実銃の世界でもマスプロダクションのリアルなレプリカ銃が製造されたことはないため、これは世界初の快挙と言えるだろう。
このモデルガンの開発期間は、約3年間の長きに渡った。設計の採寸元はハートフォードの社長であるコネティ加藤氏がアメリカで購入・保管している実銃だ。設計が始まると、実銃どおりの図面は比較的早く出来上がった。だが実銃どおりの構造にするとトリガーが戻らないのだそうだ。
実銃はトリガースプリングの構造に無理があり、亜鉛合金と樹脂でパーツをそのまま構成するのは耐久性の問題で困難。併せてダブルアクションでハンマーを起こすシアの部分やボルト(シリンダーストップ)の構造も厄介だ。トリガーを戻すためにはモデルガン独自のギミックを組み込む必要があるが、その試作が思うようにいかず十数案にもなり、ついには本社の設計部の手を離れ、コネティ加藤氏自らがアイデアを捻り出して、ようやく完成にたどり着いた。
最終的に設計の参考としたのは何と昔、日本で発売されていたアメリカ製の高級輸入玩具銃の「マテル シューティングシェル .45」(Mattel Shootin’ Shell.45)だ。これは1950年代にマテルが発売したモナカ分割構造の子供用トイガンで、外観はコルトSAAにそっくりだが、シングル&ダブルアクションで(ファニングも可)カート式、紙火薬による発火と弱いスプリング圧でブレットの発射も同時にできる、という優れもの。このトイガンの基本構造をトレースすることでコルト1877の快調に動く試作が出来上がったのだ。
実銃のコルト1877は、シリンダーストップのノッチ穴が通常のリボルバーのようにシリンダーの外周にはなく、何と背面にあることが特徴の一つとなっている。ここの作動調整もモデルガン化するのに苦労する部分だが、ハートフォードはシリンダーストップを何とカートのリムで機能させるという、超大胆な発想で克服した。
最新設計のリアルな外観のモデルガンが、昔の輸入玩具銃の構造を参考に出来上がった、というのは何ともユニークな裏話だ。そのため内部構造は実銃と異なるものとなったが、ファンからすれば、実際に製品となって自分の物にできることこそが何より大事、すべてはそこから始まるのだ。ガスガンだって当たり前に内部構造は実銃とまるで違うし、製品コンセプトが“バンバン撃って遊ぶモデルガン”なのだから、内部の違いくらいは気にせず楽しむのが真のトイガンファンというものだ。
実際、筆者も新発売された製品を手に取って早速、二挺拳銃でバンバン撃ちまくったが、長年の夢だったコルト1877をこの手で楽しめるという大満足感でいっぱいになった。とにかく素晴らしい製品を出してくれたハートフォードには感謝しかない。
■コルトM1877ライトニングのバリエーション
ハートフォードが最初に発売したコルト1877モデルガンは銃身長4.5インチ、エジェクター付きのライトニングで、材質はヘビーウエイト樹脂のモデルだ。おそらくこの形こそが多くのウエスタンファンにとってのコルト1877と筆者は思うし、筆者としても一番欲しい形のモデルだった。
その新発売から、わずか5カ月後にハートフォードが製品バリエーションとして登場させたのは、エジェクターのない「シェリフス・モデル」の銃身長3.5インチと2.5インチのヘビーウエイトモデルだ。
コルトM1877ライトニング シェリフスモデル3.5インチ
- 全長:206mm
- 全幅:120mm
- 全高:32mm
- 重量:510g(カートリッジ含む)
- 装弾数:6発
- 価格:¥39,380
コルトM1877ライトニング シェリフスモデル2.5インチ
- 全長:183mm
- 全幅:120mm
- 全高:32mm
- 重量:504g(カートリッジ含む)
- 装弾数:6発
- 価格:¥39,380
間髪入れず、続けて次の新製品として発表されたのは待望のABSオールシルバー、銃身長4.5インチ、エジェクター付きモデルだ。「ライトニングはシルバーで欲しい!」というファンも多いため、この早いタイミングでのリリースは非常に嬉しい。
コルトM1877ライトニング 4.5インチオールシルバー
- 全長:230mm
- 全幅:120mm
- 全高:32mm
- 重量:535g(カートリッジ含む)
- 装弾数:6発
- 価格:¥40,700(近日発売予定)
さらにハートフォード東京店オリジナルの少数限定カスタムモデルもあり、フレームケースハードンのモデルや、金属の経年の枯れた味わいを表現するエイジドモデル(予価¥43,780)、さらに錆までも表現に加えた超絶ヴィンテージ仕上げのエイジド・エキストリーム(予価¥49,500)も予定/販売されている。
ハートフォード東京店カスタム コルトM1877ライトニング 3.5インチケースハードンカスタム
- 全長:206mm
- 全幅:120mm
- 全高:32mm
- 重量:510g(カートリッジ含む)
- 装弾数:6発
- 価格:予価¥49,500
今後の話として、実銃のコルト1877の主なバリエーションには銃身長6インチモデルもあり、.41ロングコルトのサンダラーもある。コネティ加藤氏のお話では「コルト1877は非常に長い時間をかけ、大変苦労して出したモデルなので、より多くのバリエーションを出していきたい」とのことだ。まだ詳しくは書けないが、今後もファンの期待にしっかり応える新製品が計画されているそうなので、期待して待ちたい。
- 商品のお問い合わせ先:ハートフォード
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TEXT:トルネード吉田/アームズマガジンウェブ編集部
この記事は月刊アームズマガジン2024年9月号に掲載されたものです。
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