陸自のすべての戦闘職種が集う! 富士学校開校 富士駐屯地開設 70周年記念行事

 

圧巻の観閲行進&訓練展示

 

機甲教導連隊第1中隊の10式戦車
機甲教導連隊第1中隊の10式戦車。陸自戦車部隊の最新鋭装備とはいえ量産型初期ロットの登場から年数が経過しているが、ソフトウェアアップデートにより現代戦に充分に対応できる

 

 2024(令和6)年7月21日、静岡県にある陸上自衛隊富士駐屯地にて「富士学校開校 富士駐屯地開設70周年記念行事」が開催された。富士駐屯地には普通科学校、野戦特科学校、機甲学校を統合した富士学校などが所在しており、富士学校が行なう各種の教育研究を支援する富士教導団本部も所在する。そのため、全国でも珍しく、すべての戦闘職種が集う一大記念行事でもあるのだ。

 

特科教導連隊第4中隊の19式装輪155mm榴弾砲
特科教導連隊第4中隊の19式装輪155mm榴弾砲。徐々に配備数を増やしつつあり、特科教導隊では引き続き射撃に関する諸元の収集などが行なわれている

 

多数の装甲車輌が一堂に会する

 

情報学校が持つスキャンイーグル
情報学校が持つスキャンイーグルも観閲行進に参加。いつかは実際に飛行させる様子や、離着陸の様子などを訓練展示の一環として紹介してもらいたい

 

 この記念行事は式典、観閲行進、訓練展示と一般的な流れではあるものの、多数の戦車や装甲車などによる観閲行進は圧巻そのものであった。

 一般人がこれだけの数の装甲車輌を一度に見られるイベントとして匹敵するのは、北海道の東千歳駐屯地の記念行事くらいだろうか。また、今年は駐屯地創設70周年という節目でもあったため、例年よりも多くの来場者が訪れていた。

 

第1ヘリコプター団のV-22オスプレイ
木更津から飛来した第1ヘリコプター団のV-22オスプレイ。航空支援は現代戦に必須であり、オスプレイは人員や物資輸送に活躍するだろう

 

米海兵隊第3軽機甲偵察大隊のLAV-25とLAV-ATM
米海兵隊第3軽機甲偵察大隊(3rdLAR)のLAV-25(歩兵戦闘車型:左)とLAV-ATM(対戦車型:右)が祝賀行進で参加。本隊はカリフォルニア州の29パームスに所在し、1個小隊規模でキャンプ富士にローテーション展開している

 

登場する装備に変化が

 

16式機動戦闘車
訓練展示にて、即応機動連隊や偵察戦闘大隊に配備が進む16式機動戦闘車が展開。10ネットワークにより車両間の即時情報共有が可能で、より詳細に戦場を俯瞰して見ることができる

 

 訓練展示は、まず普通科の装備品紹介から始まった。小火器からFVまで普通科教導連隊の多様な装備は、見ていて非常に興味深い。比較的新しいところで言えば20式5.56mm小銃となるが、すでに次期5.56mm機関銃もあると噂されており、来年の登場が期待される。

 

普通科教導連隊の狙撃班
LAVから下車し展開する普通科教導連隊の狙撃班。狙撃手はM24SWS、スポッター(観測手)は20式小銃とスポッティングスコープを持つ。スポッターは狙撃手以上に優秀さが求められると言われている


 機甲科は機甲教導連隊が各種の戦車や機動戦闘車などの動体展示を行なった。74式戦車の退役により戦車は90式と10式だけとなんとも寂しいが、次期主力戦車の研究が開始されたとも噂されている。

 

威力偵察を行なうLAVの乗員
奥に見える87式偵察警戒車の援護を受けながら威力偵察を行なうLAVの乗員。隠密偵察が得意だった偵察隊は、偵察戦闘大隊の発足以降は威力偵察も積極的に行なうようになった


 富士学校や富士教導団だけでなく、富士駐屯地には情報学校や開発実験団も所在する。いずれはこれらの部隊にも積極的に参加して欲しいのだが、特に開発実験団は研究や試験中の場合は表に出したがらない性分のため、実現は難しいかもしれない。

 

バイクに乗る偵察隊の隊員
敵情偵察が終わり、その場から離脱するためアクセルターンを披露する偵察隊の隊員。バイクの高度な操縦技術は、偵察活動を行なう上で非常に重要である

 

見応え抜群の訓練展示

 

20式5.56mm小銃の空包を発射する普通科隊員
模擬戦闘訓練に先立つ装備品紹介で20式5.56mm小銃の空包を発射する普通科隊員。この他に機関銃や狙撃銃なども展示されていた


 いよいよ、待ちに待った訓練展示がスタートする。多くの来場者はコレを楽しみに来ているだろう。
 内容は一般的な攻撃に任ずる戦闘団の様相であったが、やはり多くの装甲車輌が登場するこの訓練展示は桁違いの迫力だ。

 

89式装甲戦闘車から展開する普通科隊員
89式装甲戦闘車から84mm無反動砲を持つ普通科隊員が展開。対戦車火器を持つ歩兵は物陰に隠れたり、車輌が入れない場所にも行けるため、戦車からすればどこから狙われているかわかりにくい。それゆえ、戦車乗員から最も恐れられる存在といえる


 決して広いとはいえないパレード場を、所狭しと車輌が駆け回り、空包を射撃する。90式戦車や10式戦車の空包は控えめな音だが、16式機動戦闘車は74式戦車譲りの大音量空包を使うため、耳栓をするか、しっかりと身構えていないとカメラがブレてしまうほどである。

 

89式装甲戦闘車に随伴する普通科部隊
戦車部隊のみで広い地域を確保することは困難なため、随伴する普通科部隊の協力が不可欠となる

 

90式戦車
北海道専用装備とも言われている90式戦車。衝撃力は陸自No.1で、真っ向勝負した場合、90式戦車に勝てる敵戦車は数少ないだろう


 また、非常に地味な点ではあるが、92式地雷原処理車で開設した戦車用の突破口をドーザーが整地し、装輪車が通行できるようにしていたのは、元施設科隊員の筆者としては見逃すことができないシーンであった。目立ちにくい場面だが、こうした作業が行なわれることで、戦果拡張を実現するのである。

 

96式装輪装甲車から下車展開した普通科隊員
96式装輪装甲車から下車展開した普通科隊員も20式小銃を装備。小銃小隊は生身の人間で構成されているため、背後にある装甲車などで防御力を得ることが必須となる


 来年も行なわれるであろう富士駐屯地の記念行事。共通戦術装輪車や次期軽装甲機動車などはすでに調達が開始されている。もしかしたら、こうした新規取得装備品の登場も期待できるかもしれない。

 

Text & Photos : 武若雅哉

 

 

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