2019/04/27
「ENFORCE TAC & IWA」編集部注目製品紹介!その1
ドイツの世界的イベントで、注目を受けた銃は!?
3月にドイツのニュルンベルクで行なわれる銃器の大イベント「IWA」。期間は、金曜から月曜までの4日間。その前の2日間は、ローエンフォースメント(法執行機関)専門のイベント「Enforce TAC」が行なわれるというトータルで6日間のイベントだ。
今回の一番のトピックは「Enforce TAC」の盛り上がりだったと言えるだろう。元々は小さい一室で開催していたのが、ホールに移り、さらにそのホールすら手狭になり、車輌などの大型機器は別会場で…、と発展を重ね、ここ数年は複数の小さいホールで開催するというスタイルになっていた。この方式だと「来場者が集まるホールと閑散としたホールの差が目立つな」と思っていたのだが、今年は大きなホールをまるまるひとつ使用しての開催となった。多くの来場者が1カ所に集まったこともあり、盛り上がりは非常に大きかったように感じた。その印象に間違いはなかったようで、終了後の公式レポートでは、来場者数は、昨年に比べて25%増しとなったそうだ。ヨーロッパのマーケットに売り込みができるとあって、銃器だけでなく、車輌や各種エクイップメントのほか、ドローン関連の企業も数多く出店していた。もちろんメインイベントの「IWA」も出展者は50社以上増え、1,600業者を超える勢いとなった。
残念ながら銃大国であるアメリカの「ショットショー」開催後ということもあり、大きなニュースが出にくいと思われがちな面もある。だが、そこは銃器の本場ヨーロッパのイベント。大手はもちろん、ヨーロッパ内の小さなメーカーなども参入しており、ショットショーとはまた違った顔ぶれ、雰囲気の「お祭り」となっているのだ。
今回の「Enforce TAC」でひときわ注目されたのは、なんといってもグロックだった。近年のグロックは、バリエーションの増加が目立ち、新機構の採用が乏しい印象だったが、今年は見た目から「おっ!」と思わせるバリエーションが登場した。ドイツ警察向けという事で、このイベントに合わせて発表されたのだ。
GLOCK
一見してすぐに「ただ者ではない!」と分かるモデルが展示されていた。スライドのパネル部分になにやらダイヤルが付いている。手に取るとエジェクションポートから見えるスライドが妙に分厚く、バレルが遠くに見える。担当者を呼び「これは何だ?」と聞くと「フルオートのセレクターだ」意地悪く笑ってから「冗談だよ」と話してくれた。噂のロテイテッドバレル式のロックシステムを搭載したモデルなのだ。
GLOCK46
噂には聞いていたモデル、初見参。GLOCK19をベースにカスタマイズされたモノ。ドイツ地方警察の要望に応えるためにここまで変更を加えたという意欲作だ。トリガーガード下の突起は展示用のステー
ティルト式のロックが不要になった分、スライドの内側が剥き出しになって見える。ここだけ見ると22口径の練習用のモデルと勘違いしてしまう
ロテイテッドバレルに関しては2017年に発表されてはいたが、一般公開されたのはおそらくこれが初めて。スライドの後端に設けられたレバーは、実は分解時のセーフティ機能。レバーを回転させて引き延ばすことでストライカーがフリーとなり、チャンバー内に万が一、弾が残っていても暴発させない。
ファイアリングピンをフリーにするパーツ。分解時に徹底的に暴発をなくすためにデザインされたもの。事故よりも複雑な仕組みを選んだ。そんなに分解時に暴発が起こるのか疑問でもある
分解手順はマガジンを抜き、スライドオープンにする。そして前述のファイアリングピンをフリーにするレバーを回転させて引っ張り出す。スライドストップの後に設けられたテイクダウンレバーを回転させる。スライドを元の位置に戻してちょっとだけ前進させる。スライドを横に回転させればスライドが外れる。前に抜くというよりは横に折るような感覚で取れてしまう。フレームの中にはバレルを回転させるためのラグが見られる
スライド側を見てみると、ストライカーが新設された分解時のセーフティレバーと連動しているのがよく分かる。バレルの回転用のラグも確認できる。ローテッドバレルはティルト式と比べバレルが上下に動かないのでアキュラシーに優位な点、バレルの先端に重量物、サイレンサーやカービンモデルなどのロングバレルが来たときに作動不良を起こしにくい。またバレルの位置を更に低くすることができる。実際にGLOCK46はほんのわずか、およそ0.3mmほどだがバレルの位置が低くなっている
位置変更となったテイクダウンレバーはマガジンを抜かないと作動しないという念の入れようだ。ドイツのザクセン地方警察が採用するために出してきた要望をすべてつぎ込んで完成させたモデル。要するに「グロックは細かな要望にもお応えします」というプロモーションだ。「他のドイツメーカーが外国への売り込みに躍起になっている間に、ドイツ本国から売り込みができたよ」とグロック担当者はこの成功に満足げに話してくれた。
REPORT:櫻井朋成(Tomonari SAKURAI)
この記事は月刊アームズマガジン2019年6月号 P.125~126より抜粋・再編集したものです。