エアガン

2024/08/21

世界各国で軍用小銃として開発・配備された軍用ボルトアクションライフルの基礎知識

 

第一次世界大戦から第二次世界大戦にかけて軍用小銃の世界標準であったボルトアクションライフル

 

 

 1840年代にプロイセン王国で作られたドライゼ銃を起源とし、1800年代後半に現在と同じ構造を持つボルトアクションライフルが完成した。連射できるライフルとしてはレバーアクションが先だが、ボルトアクションライフルはレシーバーに設けられたボルトを手で前後動させて装填・排莢、ファイアリングピンのコッキングを行ない、強力なライフル弾を連射できることから世界各国で軍用小銃として開発・配備された。ボルトアクションライフルはオートマチックライフルに比べて連射スピードが遅く、装弾数が少ないなどのデメリットはあるもののシンプルな構造で壊れにくい、命中精度が高い、様々な種類のカートリッジが使えるなどメリットも多い。現在、軍用小銃としては一線を退いたもののスナイパーライフルやハンティングライフルとして使われている。そんなボルトアクションライフルは一見するとどれも同じようにみえるが、外観以外の最も大きな違いはファイアリングピンをコッキングするタイミングが違っていることだ。機種によって細かな違いはあるものの、そのタイミングの違いは2種類に分類できる。ここでは軍用ボルトアクションライフルの二大巨頭であり、ファイアリングピンをコッキングするタイミングが異なる日本軍の三八式歩兵銃と、ドイツ軍のモーゼルKar98kを見ながらボルトアクションライフルの構造を解説する。

 

 

三八式歩兵銃の構造

 

 

 三八式歩兵銃の構造は同銃の騎兵バージョンであるタナカの三八式騎銃 Ver.2 Black鬼胡桃銃床仕様ガスガンを例として解説する。

 

三八式歩兵銃のレシーバー部分のアップ。レシーバーには左側に分解用ラッチがある以外パーツは付属していない。極めてシンプルな形状をしている

 

ボルトハンドルを起こしてボルトを後退させたところ。ボルトハンドルは起こすと真上を向くのが
三八式歩兵銃の特徴

 

ボルトエンドにはマニュアルセーフティ(ボルトスリーブ)が備わっている。コッキング後、ボルトスリーブを押し込みながら右に回すとセーフティオン

 

三八式歩兵銃のコッキングのタイミングはボルトが閉鎖される(ボルトハンドルを戻す)直前に行なわれる。まずボルトを前進させてカートリッジをチャンバーに送り込む

 

ボルトが止まるところまでボルトを押し込む。ファイアリングピン(ストライカー)がシアにかかり、ファイアリングピンがコッキングされる準備が整う

 

レシーバー右側にある溝にあわせてボルトハンドルを倒すとファイアリングピンがコッキングされて発射可能な状態になる。三八式歩兵銃はカートリッジの装填・排莢をしないならボルトを数cm前後させればコッキングが完了するのだ

 

 

モーゼルKar98kの構造

 

 

 モーゼルKar98kの構造はタナカのモーゼルKar98kモデルガンを例に解説する。

 

モーゼルKar98kのレシーバー部分のアップ。通称「モーゼルアクション」はボルトアクションライフルの基本とされている

 

モーゼルKar98kはコッキングが完了するとボルトエンドに備わっているコッキングピースが突出するので、コッキングされているか見た目に把握しやすい

 

ボルトエンド上面にあるレバーがマニュアルセーフティとなっている。コッキング後に右側に180度回転させるとセーフティオンとなる

 

モーゼルアクションはボルトハンドルを起こす時にファイアリングピンがコッキングされるのが特徴。レミントンモデル700も同じ構造を採用している

 

ボルトハンドルを起こすとボルトが少し後退してファイアリングピンがコッキング状態になる。三八式歩兵銃は押し込み式(コックオン・クロージング)なのに対してモーゼルKar98kは引き起こし式(コックオン・オープニング)を採用している

 

そのまま最後端までボルトを後退させてカートリッジを装填・排莢する。そのままボルトを前進させてカートリッジをチャンバーに送り込み、コッキングピースがシアにかかりボルトを戻すとコッキングピースが突出して射撃準備が完了する

 

三八式歩兵銃(左)とモーゼルKar98k(右)のボルトを比較したところ。ボルト本体の形状に大きな違いはないもののボルトハンドルとボルトエンドの形状が異なる。ボルトを引き起こす時の角度も異なっている

 

ボルト先端部分を比較したところ。左が三八式歩兵銃、右がモーゼルKar98k。ボルト閉鎖時にレシーバー側のリセスと噛み合うラグが左右に設けられている。どちらもコッキング時は右側のエキストラクターがボルトと一緒に回転しない。

 

ボルト後部下側を比較したところ。左が三八式歩兵銃、右がモーゼルKar98k。モーゼルKar98kはボルトエンド/コッキングピース部分が別体になっており、ボルトの回転と同調しない。三八式歩兵銃はモーゼルKar98kのようなボルトエンドに相当するパーツはなく、セーフティを兼ねたボルトスリーブがセーフティ機能時に回転する

 

 

TEXT:毛野ブースカ/アームズマガジンウェブ編集部

 

この記事は月刊アームズマガジン2024年8月号に掲載されたものです。

 

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