2024/06/15
【実銃】H&Kの傑作汎用マシンガンHK21の優れた設計と射撃性能をクローンモデルから視る「RDTS HK21EUG & MM21E/MM23E」【後編】
RDTS HK21EUG
&
MM21E/MM23E
H&KがG3をベースに展開したシステムウエポン構想で、その汎用マシンガンの部分を担ったのがHK21とそのバリエーションだ。1986年のFOPAにより、オリジナルのHK21をフルオート仕様で民間が所持することは極めて難しいが、アメリカで作られたクローンモデルであるならば、レジスタード オートシアーを組み込むことでそれが合法的に可能となっている。
アメリカ製HK21
1986年5月19日の法改正(Firearm Owners Protection Act of 1986:FOPA)により、アメリカで一般人が所持可能なフルオート火器はこの日より以前に製造・登録されたものに限定された。これにより個人売買可能なフルオート小火器のコレクター価格は現在上昇する一方となった。よってこれ以降に製造されたものは、軍および警察等にのみに販売され、一般市場へ出回ることはなくなった。
HK21シリーズもこの規制以前に輸入されたオリジナルもアメリカには存在している筈なのだが、熟練コレクター間でも見た事がないというほどレアな存在だ。当然、出物があっても相当な値段が付き、撃つのを躊躇するようなコレクターズアイテムでしかない。
こんな話も伺った。ディーラーサンプルとして入荷した新品のHK21Eのレシーバーのシリアル番号部分をカットしてパートキットして売ってもらい、それとは別に一般所持可能なフルオートのG3と合体させて可能な限り純正パーツで組み立て直したHK21Eモドキが存在するという。そんなビックリなH&K好きもいるわけで、驚くべき執念!というべきだろう。
しかし、これはかなり突拍子もない話であり、相当なお金持ちでないとできない事だ。
そこでより現実的な手段がある。アメリカ国内でH&K銃器の加工を得意とする小規模メーカーがHK21のパーツを購入、G3系レシーバーを改造して組み上げたり、また自社で徹底的にH&K純正パーツを精密に再現するなどしてアメリカ製HK21クローンの製造を行っているのだ。
今回ラスベガス支局の協力で実射テストを行なったHK21とHK21E/23Eはどちらもそうして誕生した再現度の高い精密なクローンモデル達だ。
HK21の方はアリゾナ州フェニックスのRDTS社製でラルフ・スミスというH&K小火器のスペシャリストが組み上げたHK21EUG(E UpGradeの略)で10年以上前に$8,000くらいで購入されたモデルだが、なんと注文してから4年くらい待ったとか。Eタイプの方はイリノイ州のMM(Michael’s Ma-chines)社製で現在全米のH&K系メーカーではNo.1の腕と言われる存在だ。
同社はHK22E、HK11、HK12、HK13、PSG1/MSG90系スナイパーライフル、MP5系ピストル、HK51/53系のSBR(ショートバレルドライフル)なども組み上げ、またE タイプ所有者に向けて7.62mmから5.56mm(またはその逆)へのコンバージョン用バレル&ボルトグループ、そしてフィードボックスも販売している。やはり注文から何年も待ったそうだが、品質は純正の域に達し、仕上げも加工も瓜二つだ。
しかし86年規制より後に製造されたマシンガンがどうやって所持可能なのか?これには理由がある。今回のクローン達は元々一般的に買えるセミオートライフルとして組み上げられたものだ。
G3系ではトリガーパックにレジスタード オートシアーを追加し、フルオート用ボルトと組み合わせる事でフルオート機能を追加する事が可能だ。アメリカにはそのレジスタード オートシアー自体にシリアルが刻印され、それがフルオート火器として登録されているものがあり(ただし特定のシリアル番号を持つレシーバーとペアで登録された個体もあり、その場合は他の銃へのオートシアーの移植は許されない)、ラスベガス支局は登録されたオートシアーをクローンに組み込んでマシンガンとして射撃しているのだ。
こうすれば、セミオートライフルをフルオートで撃っても合法となる。レジスタードオートシアーがフルオート火器そのものだからだ。さらにレジスタード オートシアー組み込み時にはSBRとしても合法的に変換できるので、16インチ以下のバレルを組み合わせたり、またライフルだけでなくピストル登録されたハンドガンをSBRのフルオート小火器にする事までも可能となる。
という事で今回はH&Kのユニット化されているレジスタード オートシアーが組み込まれたトリガーパックを入れ替えながら、2つのHK21タイプのライフルでフルオート射撃してみた。これもH&Kのシステム化の恩恵とも言える。
実射ではHK21を7.62mmで撃ち、Eタイプを5.56mmと両方の弾でフルオート射撃を行なった。
両者の使用感はほぼ同一だが、大きな差を感じるのは装填プロセスだ。実射前に装填方法のレクチャーを受けた。一般的なベルト給弾方式のマシンガンでは上部のカバーを展開し、そこにリンクでつながれたベルトを押し当て蓋を閉じて射撃準備を行なうが、G3を出自に持つという特殊な設計のHK21では上にも下にもカバーが展開する事は無い。
装填プロセスはボルトをホールドオープンさせた状態でスタータータブを通し、その過程で歯車とかみ合うので、後はボルトを前進・閉鎖させれば射撃準備が整う。但し、一度内部でジャムを起こすと、最悪の場合、分解しないとクリアできない状況も生まれるという。そして連結されたベルトを使う場合、一度通して装填してしまうと撃ち切るまで、進み始めたベルトは容易には取り外せない。
実戦や訓練ではベルトを最後まで撃ち切る事が常なので、この辺は割り切られたという事らしい。この辺の不便さを解消する事が後に求められたのは理解できる。
発展型のEタイプではフィードボックスがレシーバー前方のヒンジで回転する解放式に改良されており、途中でベルトを外す事もトラブルの対処もかなり容易になった。ただし一般的な上部展開式の設計では弾を銃機関部に押し当てながら歯車に固定できるが、この設計ではフィード機構が可働するので自由に動くボックスを手で保持しなければならない。この部分は少し慣れが必要だ。
ベルトの装着が完了したら、あとはHK スラップと呼ばれるコッキングレバーを掌で叩いて切り欠きからレバーを外す動作をして、ボルトを勢いよく前進させれば射撃準備が完了する。
ヘビーバレルで重量が増したが、全体的なデザイン、とくにグリップ、セレクター、ストックなどの形状はG3に近く、同系列のユーザーには馴染みやすい。まずは初期のHK21を撃つ。こちらは7.62mm口径のみだ。以前G3をフルオートで試射した経験はあるが、リコイルがソフトと言われるローラーディレードブローバックといっても強力な7.62mmのフルオート射撃はかなり強烈だ。G3の発射サイクルは比較的遅い毎分500発から600発程度と言われるが、1発毎の反動は大きく、それが連なるので他の7.62mmのフルオートと比較して特別に撃ちやすいという印象もなかった。
今回のHK21クローンのフルオート発射サイクルは毎分800発くらいで高速だがG3よりも重量があり、バイポットで安定した姿勢で射撃する事でG3よりも高い集弾性能を発揮できる。しかし、5.56mmや9mmのフルオートと比べるとそのリコイルはかなり大きく、トリガーを引いた瞬間から肩に強い衝撃が伝わる。そこからHK21をいったん分解し、レジスタード オートシアーの入ったトリガーパックを取り外しEタイプへと移植する。組み換え作業はG3やMP5系ユーザーなら簡単だ。
Eタイプの良さはやはりフィードボックスが展開式になっているところだ。どんなベルト給弾方式でも、誤作動や異物混入で弾が内部で詰まっしまう事はある。その際に開いて対処できる事は当然ながら便利だ。
HK21E ではレシーバーが僅かに延長され、ボルトはより多くの距離を後退し、リコイルを吸収してくれる。そしてサイクルも僅かにスローになるのでフルオートの体感リコイルもHK21よりも幾分穏やかになっている。
そして5.56mmのユニットに交換、これでHK23Eタイプだ。反動は小さくなるので撃つ前は当然7.62mmよりもソフトなリコイルを想像したが、実際は違った。フルオートの発射サイクルが毎分950発くらいまで高速化されており、7.62mmよりもむしろ鋭いリコイルがやってくる。
圧倒的に撃ちやすいというほどソフトなものではなく、銃全体もかなり揺さぶられるので予想以上に制御に慣れを要した。
3種類の比較射撃でフルオート射撃での制御がしやすく最もバランスが良いのHK21Eクローンだと感じた。H&Kが最初に完成させたG3は完成度の高いバトルライフルであり、それを中心としてシステム構想により誕生したベルト給弾方式のHK21シリーズは色々な意味で、とてもH&Kらしいマシンガンだと感じた。
またアメリカ製の再現度の高さには感服するばかりだ。本来なら入手しづらいオリジナルに代わり、優れたクローンによりこうして実射ができるわけで、全米のH&Kファンのマシンガンオーナー達の期待に存分に応えてくれる存在となっている。
TEXT&PHOTO:Gun Professionals LA支局
この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2022年3月号に掲載されたものです
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