2024/05/23
【実銃】STACCATOの誇る究極のコンシールドキャリーガンと注目のDuty Gun「STACCATO C2 & P」【前編】
STACCATO
C2 & P
Ultimate CCW & Duty Gun
2019年、9mmルガー口径に特化した2011は、かつてのマッチガンからLE向けモデルとして大変身を果たした。スタカートはU.S.マーシャルのSOGチームやLAPDのメトロディビジョンといったエリートチームに採用されただけでなく、全米280以上のLEエージェンシーで認定を受けるに至っている。
今回は“究極のコンシールドキャリーガン”とも呼ばれる3.9インチバレルのC2モデルと、デューティガンとして注目されるPモデルを掘り下げてみたい。
高品質/高精度2011
想えば28年も前となる1993年のこと、Virgil Tripp(ヴァージル・トリップ)とSandy Strayer(サンディ・ストレイヤー)という2人の優れたエンジニアによって、1911プラットフォームを踏襲しながらもダブルカラアムマガジンを使用して、.45ACPなら12発、.40S&Wなら18発、9mmルガーなら20発もの装弾数を誇る、画期的なピストルがリリースされた。
“モジュラーフレーム2011”の誕生だ。
当時、すでにPara Ordnance(パラオーディナンス)社からハイキャパシティ1911がリリースされていたが、2011は削り出しのサブフレームに樹脂製のグリップを組み合わせるなど、最先端のデザインを採用して、他社に大きく差をつけることに成功する。
この“STI(Strayer Tripp Inc.)社”からリリースされた2011は、当時ブームとなりつつあった競技射撃の世界で受け入れられ、.38Superや.40S&W口径のハイエンドレースガンのベースとして深く浸透していった。競技シューターが魅力を感じる数々のフューチャー、理想的なグリップアングルや短くクリスプなトリガープル、精度の高さ、そして何よりもハイキャパシティマガジンが使えて口径の変更に対応しやすいという圧倒的な長所を持っていたからだ。
レースガンとしては一世を風靡した感のある2011だが、ミリタリー関連組織やLE機関に採用されることはほとんどなかった。その最大の理由は、リライアビリティ(信頼性)が脆弱という、致命的な弱点があったからだ。
元々1911スタイルのガンは、グロックのようなストライカーファイア方式のガンに比べ、より頻繁なメンテナンスが必要とされている。定期的なクリーニングや注油などを怠ると、装弾不良のようなジャムが起きてしまう可能性が高くなる。
また、2011デザインのキモともいえる、ハイキャパシティマガジンのデザインと製造上のクオリティコントロールにもかなりの問題があり、マガジン起因のトラブルが頻発したのだ。以下は、実際に私が所有していた2011に起きたマガジン関連の問題点だ。
●10本のマガジンを購入すると(1本100ドルもする)、約6本はほぼ問題なく作動するが、残りの4本は装填不良などのジャムを起こす。返品交換しても、このハズレ率は変わらない。
●マガジンの万全を期すためには、専門のガンスミスにマガジンを送り、マガジンフォロアーの交換をはじめ、リップ部分の細かなチューニングなど(チューニング料は1本100ドルほど)をしてもらう必要がある。
●マガジン内に実弾を残したままマガジンを地面に落とすと、ベースパッドが取れてスプリング、フォロアー、実弾が飛散する。
●170mmなど、長いマガジンをマガジンチェンジでグリップに叩き込むと、“オーバーインサーテッド(差し込み過ぎ)”現象が起こり、ジャムするとともに、マガジンが抜けなくなる。復活させるには、スライドを何とかオープンして、エジェクションポートからツールを入れてマガジンを叩き出す必要がある。
●マガジンフォロアーが上がらなくなり、マガジンを抜くと実包がボロボロと落ちてくる。
といった、かなり悲しい現実に直面することになる。これではシリアスな場面に直面するミリタリー/LE機関が採用するのは無理があるだろう。
サンディ・ストレイヤー氏が創立した“SVI”社製の2011用マガジンは問題が少なかったが、当時、手に入れにくく価格も高いというジレンマがあった。
その後もSTI社からは、コンプと一体でワンピースの素材から削り出される精度の高いバレルや極軽量レースガンなど、意欲的かつ魅力的なモデルがリリースされたが、大体が2千ドル以上で、なかなか手が出ないという状況が続いていた。
STI社では、オーナーが幾度も変わるなど複雑な社内の変革が進んでいたが、2019年になって衝撃的なニュースが業界を駆け巡った。U.S.マーシャルのSOG(Special Operation Group:スペシャルオペレーショングループ)チームに、2011の改良モデルである“STACCATO”が正式に採用されたというのだ。
それ以前からSTI社では、経験豊かなミリタリー/LE出身者を相当数雇い入れ、2011をデューティガンとして刷新すべく変革が始まっていたのだ。まずマガジンがリデザインされ、SOGチームからのインプットもあり、口径は9mmに特化して短めの4.15インチ銃身“P(Professionalの頭文字)”モデルが開発されていく。
同時にシングルスタック8連発の“C(Compactの頭文字)”モデルも2019年早々にリリースされた。
2019年モデルの特徴は、3.9インチ銃身のC2、4.15インチ銃身のPともにフレームのダストカバーがスライドの先端まで伸びてフルカバーになっている点で、これが2020年モデルになるとPの銃身長が4.4インチになると共に、両モデル共にダストカバーがスライドより短くなり、スライドにはリリーフカットが入るというデザインチェンジを受けている。
2020年のSHOT SHOWでは、C(3.9インチ シングルスタック8連)、C2(3.9インチ 16連)、P(4.4インチ17連)、XC(5インチ コンプ付き 17連)、XL(5.4インチ 17連)という5モデルだけに限定した構成で、新生STI社の意気込みが感じられるラインナップとなる。
これら新モデルを手にすると、まずそれぞれのパーツにおける工作精度の高さと、高い次元で集約したフィット&フィニッシュのクオリティに驚かされる。スライド/フレームの遊びはほとんどゼロだ。ガンをグリップして強く振ってみても、どこからも音はしない。
それでもスライドを引いてみると、バレルのロッキングがリリースされる「カツン」という音とともに、あくまでも滑らかにスライドが後退していく。C2はフレームがアルミ製なので、少々粘りがあるが、スライドの動きは極滑らかだ。
カスタムガンほどではないが、プロダクションガンとしてはトップレベルに入る感触なのだ。テストガンであるC2のトリガープルは、10回の平均が3.35ポンド(1.52kg)、Pが3.66ポンド(1.66kg)とキャリーガンとしては好ましい範囲に収まっている。サイズ的にいうと、重量は別として、C2はグロックG19と、PはG17と絶妙に似ているといえるだろう。
価格を考えると真っ向勝負とはいかないが、フルカスタムグロックの対抗馬として考えると、やはりここはスタカートに軍配が上がりそうだ。
TEXT&PHOTO:Hiro Soga
この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2021年6月号に掲載されたものです
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