2024/06/14
【実銃】G3の設計を活かしたH&Kの汎用マシンガンHK21の開発経緯!「RDTS HK21EUG & MM21E/MM23E」【中編】
RDTS HK21EUG
&
MM21E/MM23E
H&KがG3をベースに展開したシステムウエポン構想で、その汎用マシンガンの部分を担ったのがHK21とそのバリエーションだ。1986年のFOPAにより、オリジナルのHK21をフルオート仕様で民間が所持することは極めて難しいが、アメリカで作られたクローンモデルであるならば、レジスタード オートシアーを組み込むことでそれが合法的に可能となっている。
HK21の開発
H&Kはバリエーションを拡張・発展させていく上において、当初よりG3の基本構造を中核とするシステムウェポンを構築した。可能な限り統一された構造を軸にする事で、製造を合理化できるうえ、パーツの互換性を維持すればメンテナンスや予備パーツの供給面でも有利となる。そして同一の操作性や使用感を維持する事で、これを使用する兵士の訓練期間を短縮できる事に繋がる。
これは軍隊のような大規模な組織での運用では、特に大きなメリットだ。その中でも重要なモデルが、汎用性の高いサポートウェポンとなるマシンガンの開発であった。
WWI(第一次世界大戦)から本格的に世界の戦場に投入されて以来、歩兵戦闘の流れを変えたといわれるのがベルト給弾方式マシンガンだ。フルパワーのライフル弾を高速連射し、継続的に発射可能なマシンガンの戦場への本格投入は、ボルトアクションライフルを持つ歩兵には脅威であったが、その多くがラフェッティなどマウント等に搭載して運用される安定射撃を行なっていたため、機動性は低く、拠点防衛兵器とはなり得ても、地上戦における攻撃用兵器にはなりにくかった。
WWIIに入り軽量化や運用面での合理的な改良が進み、歩兵一人で携行・運用できる機動性を高めたライトマシンガン(軽機関銃)へと発展した。その中でもライトマシンガン開発史に多大な影響を与えたのがGPMG(General Purpose Machine Gun /汎用機関銃)としてドイツが開発したMG34、そしてより生産性を向上させた改良型のMG42である。
一般的なライフルのような持ち運びが可能で、肩づけ、またバイポッドにより伏せた姿勢での射撃を容易とし、車両マウント、フィールド三脚等に固定する事で多目的に使用できるという、拡張性の高い設計がなされている。
特にフルオート発射サイクルが毎分1,500発以上に高速化されたMG42は高い防御・制圧能力を発揮して、当時は“ヒトラーのチェーンソー”とも呼ばれた。その高速発射で連なる独特な銃声は、キャンバス生地を引き裂く音に似ていた。
MG42は戦後も小改良を重ね、7.62mm×51NATO口径に改修されたMG3がドイツ軍により長年運用された。現在多くのGPMGに共通する特徴は、ストックとバイポッドを有し、一人でも運用できる軽量さ、過熱したバレルを即座に交換できる容易な銃身交換機構(クイックチェンジバレル)でまとめられている事などから見ても、それを早くに実現したMG42がいかに優秀であったかがわかる。
しかしH&KがG3から派生したGPMGの開発に着手する際に、あくまでG3をプラットフォームとしたモジュラリティとインターチェンジビリティを重視した結果、そのデザインは他社製品とは大きく異なるものへと発展していった。
G3の機構を活かしつつGPMGの必要条件を兼ね備え、ベルト給弾方式を取り入れるというアプローチで研究が進められている。その結果、プレス加工レシーバーの側面強度を高めるため補強を行なうと同時に、G3用のボックスマガジンにも切り替えできる2系統のフィードメカニズムを組み込んだユニバーサルモジュラーレシーバーシステムを持つHK21が完成した。1961年のことだ。
全長1,021mm、銃身長450mm、そして重量は7.92㎏で、G3(4.4㎏)から比べると、かなり重くなっている。しかし、一般的なこの種のマシンガンと比べると、大幅な軽量化が実現できた。フルオートの発射サイクルは毎分750発から900発程度で、サイトは最大1,200mまでの距離設定が可能だ。
G3から派生した事から、HK21は銃本体上部にフィードカバーを設置できず、通常のマシンガンとは逆に下方に給弾機構が設けられた。口径は7.62m×51mを標準として、バレルやボルト等のパーツを交換する事で5.56mm×45にも対応した。AKシリーズの7.62mm×39への対応も想定して設計されている(実際のところ7.62mm×39は企画倒れに近かった)。
一方でG3のパーツとの互換性を重視した結果、G3と半分近いパーツが流用可能となり、既にG3を採用している組織なら、メンテナンス性、予備パーツの管理、そして操作性も近いため、訓練期間の短縮もできる。この合理的なシステム構想こそ、H&K が目指したシステムウェポンであった。
ちなみにH&Kのマシンガンは、モデル番号からその銃の内容が大まかに判る仕組みとなっている。10の位の数字が、最初が1の場合はボックスマガジン、2の場合はベルト給弾方式のマシンガンで、続く1の位の番号が1なら、.308Win/7.62mmNATO、2なら7.62mm×39、3が.223Rem/5.56mmNATOとなる。従って21は“7.62mm口径のベルト給弾方式のマシンガン”という具合だ。
そしてG3にはなかったバレル交換機能が加えられた。バレルを右側面方向から工具を使わず、容易に取り外して交換できる。射手1人でも過熱したバレルを即座に交換し、射撃を継続する事が可能だ。同時に可倒式バイポットの他、バレルジャケットにはバーチカルグリップを装着でき、突撃時に射手が一人で運用しやすい汎用性も持ち合わせている。またレシーバーの下部には7.62mmで100連発、5.56mmで200発連結したベルトを収納できるベルトボックスが装着可能だ。
H&Kは同時にボックスマガジン方式のみのHK11も開発した。こちらも同様にバレル交換機構を付加しており、装弾数はマガジン容量に依存するが、ダブルドラムの80連マガジン(5.56mm版のHK13では100連発)等も用意されている。リロード作業はこちらの方がシンプルにできるし、作動メカ自体もG3と同一なので単純で運用しやすい。
しかし結果的にブンデスヴェーア(Bundeswehr=ドイツ連邦軍)は、MG3を選択したためHK21がドイツ軍で採用されることにはならなかった。しかしより運用しやすいHK11の方は、ドイツ陸海軍、ドイツ連邦警察により、G8/G8A1として採用された。しかしG3採用国にとっては、同系統のベルト給弾方式サポートウェポンHK21は魅力的で、輸出やライセンス生産では成功した。ポルトガルでも1968年に採用、ライセンス生産が行なわれている。
1977年頃までに2万挺前後が製造され、世界20か国以上に使用されたという。5.56mm×45口径にしたHK23も1972年に登場した。
HK21E
H&KのG3は大成功をおさめ世界の各地で採用が進み、数ヵ国でライセンス製造も進められた。それに後押しされたHK21/HK23であったが、細かなパーツの耐久力不足やショックバッファーにも問題が見つかるなどの問題が指摘された。
そこでH&Kは70年代中頃に改良型のHK21A1を登場させた。大きな改良点はヒンジ付きボトムカバーに変更したボルトフィードユニットの採用だ。これにより給弾機構を簡単にオープン可能になって、ロード/アンロードが圧倒的に容易になり、射撃中のトラブルにも対処しやすくなった。またバットストックの形状を変更し、レシーバーにはスコープマウンティングブラケットが標準装備となっている。
HK23A1は、米陸軍のSAW(Squad Automatic Weapon /部隊支援火器)トライアルに提出されたが、試験では作動が思わしくなく、後半にHK21A1を5.56mmに転換したモデルをXM262として送り込んだ。ここでも7.62mmに容易に切り替えが可能である点を強みとして、さらにクローズドボルトから発射により、命中精度ではライバルのオープンボルトより有利という点も推した。
しかし結果としてFN MINIMIがM249SAWとして採用されている。H&Kの最終評価は次点で、けっして悪いものではなかったと言われている。改良は続き、HK21A1をさらに完成度を高めた発展型が80年代初頭に登場した。レシーバーを約1インチ(約2.5cm)ほど長くして、ボルトの後退ストロークを延長、同時にストック内部のバッファー機構も改良され、これにより体感リコイルも軽減された。射撃制御がより容易になりフルオート発射時の集弾性能も向上している。
バレルを560mmまで延長させると同時に、バレルシュラウドを94mm延長してサイトレディアス(照準線長)を延ばし、より正確に射撃が可能になった。バイポッドは3段階の収縮式で約30°傾ける事もできる改良型になり、弾を収納するベルトボックス取り付け機構も増設した。
ボルトヘッド、エキストラクター、ロッキングローラーホルダー、バレル、ボルトキャリア、ベルトフィードユニット、バッファー、リコイルスプリングアセンブリ、トリガーグループの設計も信頼性を高めるべく、再度見直された。
解放可能なベルトフィード機構をさらに改修し、ベルトリンクに対するストレスを軽減、作動の信頼性を向上させている。新しいモデルでもフィードメカニズムモジュールを交換する事でボックスマガジンを使用しての射撃が可能な点を引き継いでいるが、従来よりも切り替えが容易になった。
そしてトリガーユニットの発射機構に3点バーストを追加、レシーバー右側面上部にボルトフォワードアシストノブを増設している。またレシーバーがさらに強化されて剛性が増し、6万発以上のサービスライフが保証された。しかし、総重量は9.35㎏まで増加している。この新型のモデル名は輸出向けを意味するE(Export)の文字を追加したHK21Eと呼称された。
同時に同じ改良を加えたHK11Eも開発されるが、こちらでは450mmのショートバレルが採用されている。
1995年より以前に米国に輸入されたHK21E は、DM6やM13のベルトリンク、発射後も結合した状態を維持するドイツのDM1ベルトが使用できたが、それ以降のモデルではM13リンクに最適化させる事でより作動の信頼性を増した(ただ特注すれば従来仕様でも製造してくれたようだ)。
1997年にドイツ軍に採用されたG36以降、H&Kはローラーディレードブローバックやその機構を軸としてシステムウェポン構想に以前ほどの強いこだわりを見せておらず、現在その流れを残すのはMP5シリーズのみとなっている。今では米国を中心とする世界市場により売り込みやすいAR15系にガスピストンを組み込んだHK416シリーズに力を注いでいる。
実際にH&Kはミニミに対抗する5.56mm口径のライトマシンガンとして回転式ボルトとガス作動方式を採用したMG43を90年代後半に開発、ドイツ軍にMG4として採用された。そしてMG3の後継として7.62mm口径のHK121を設計し、2013年にMG5として採用され現在に至っている。
TEXT&PHOTO:Gun Professionals LA支局
この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2022年3月号に掲載されたものです
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