2024/06/13
【実銃】H&Kの汎用マシンガンHK21のベースとなったH&K G3の開発経緯「RDTS HK21EUG & MM21E/MM23E」【前編】
RDTS HK21EUG
&
MM21E/MM23E
H&KがG3をベースに展開したシステムウエポン構想で、その汎用マシンガンの部分を担ったのがHK21とそのバリエーションだ。1986年のFOPAにより、オリジナルのHK21をフルオート仕様で民間が所持することは極めて難しいが、アメリカで作られたクローンモデルであるならば、レジスタード オートシアーを組み込むことでそれが合法的に可能となっている。
マシンガンシュート
アリゾナ州で10月後半に開催されたビッグサンディマシンガンシュートの様子は、今年1月号でお届けした。パンデミック以降、市場での弾薬の供給が滞り、その価格が数倍に高騰した事から、参加者は例年の半分程度と控えめではあったが、それでも全米中から自慢のコレクションを持ち寄って盛大に撃ちまくる様子は、アメリカであっても普段見ることができない強烈なものであった。
それはあたかも、“古今東西マシンガン博覧会+実射大会”のようなものだったといえる。
古くは水冷式のマキシムやブラウニングM1919のような古いベルト給弾方式のマシンガンから、MG42やMP40などWWII(第二次世界大戦)中のドイツで活躍した名銃達、そしてM249ミニミ、FN MAG、M134ミニガンのような、比較的近年のモデルまでもが勢ぞろいしていたからだ。
取材中、個人的に一番気になったのがドイツのH&K(Hecker & Koch GmnH)を代表するHK21であった。但し、それらはおそらくクローン製品だったと思われる(全てを確認したわけではない)。
会場で見たのは3挺程度だったが、傑作バトルライフルであるG3の設計を基にベルト給弾方式へと派生させたデザインであるため、H&K らしい洗練された外観、そして独特な給弾機構によって、一般的なマシンガンとは少し違うデザインが特に印象的に感じられた。
そこで今回はラスベガス支局の協力を得て、HK21、そしてその発展型のHK21/23Eのクローンモデルのフルオート射撃を体験させて頂いた。その開発の背景にはH&Kが目指したシステムウェポン構想が存在する。
G3系やMP5系が好きなガンファンにとってHK21は興味を覚えずにはいられない魅力的なマシンガンだろう。
G3
HK21の開発史を語る上で重要な存在が、その土台になったG3だ。WWII 後に決定したNATO軍統一カートリッジ、7.62mm×51NATO弾を撃つバトルライフルが加盟諸国で研究開発され、アメリカのM14、ベルギーFN社のFALと並んでG3は歴史に名を残す名バトルライフルの1つに数えられ、世界中で採用やライセンス製造が行なわれてきた。
戦後1949年、西ドイツで創業したHeckler & Koch(H&K)社は元マウザー(モーゼル)の技術者が多く集まっていたものの、敗戦国のドイツでは当時銃器生産が許されなかった。そのためミシンの部品など銃器とは異なる分野の製造製品を行なう、現在とは大きく異なる会社組織であった。そこに訪れた転機が、1954年に始まった西ドイツの再軍備計画である。
これに参加したH&Kはスペインで開発されたセトメ(CETME)モデル58の設計を基に、改良を加えた新型ライフルを完成させ、選定試験の結果、1959年にG3(Gewehr 3)として西ドイツ軍の軍用ライフルに採用された。ここからH&Kは銃器
メーカーとして大きく発展していく事になる。実際のところは、セトメライフルの開発にもH&K社が秘密裏に関わっていたことが、G3を生んだ背景にある。
構造上の大きな特徴が2つの円柱型ローラーを用いたローラーディレイドブローバック作動方式だ。これは原型となったセトメで採用されたもので、アサルトライフルの始祖と呼ばれるSTG44の後継機として終戦間近までマウザーで開発が進められていたSTG45に使われていた作動方式だった。ガス作動方式より構造を簡素化でき、生産性とコストを低減させられる事が利点だったが、完成を前に戦争は終結した。
戦後の混乱期にフランスを経てスペインに渡った元マウザーの技術者ルートヴィヒ・フォルグリムラー(Ludwig Vorgrimler)がセトメで研究を継続し、この方式を新型ライフルに組み込んで完成させた。
バレル内のガスポートから発射ガスを取り入れ、ピストンを作動させる一般的なガス作動方式とは全く異なり、撃発時にブリーチフェイスにかかる圧力を利用するブローバック方式で、組み込まれたローラーがボルトの動きを遅らせるというものだ。一般的なロッキング構造と違う点は、弾頭が銃口を離れるまでボルトの閉鎖状態を維持する完全なロック機構ではなく、ボルトの開放を遅らせているに過ぎない。
そのためかつてはローラーロッキングと呼称していたが、今ではローラーディレイドブローバックという場合が多い。これとは別に完全にローラーでロッキングしているMG42などもあるため、そちらはローラーロッキングという。ローラーディレイドブローバックのボルトの後退はガス作動方式より僅かに早く始まり、これによって比較的反動が軽減される。実際に撃ち比べればリコイルの違いをある程度感じ取れるほどだ。
そして発射ガスに依存しない作動により、比較的ボルト周辺が汚れにくいのも良い点だ。またバレルにガスチューブやシリンダー等が接続されないため、銃身の基部以外、ほとんど何にも触れないフリーフローティング構造が可能になる。これは命中精度向上という観点からも長所につながる。
ドイツは戦時中から大量生産に向くプレス加工が得意で、銃器開発・製造にもこれを積極的に取り入れ、H&Kの技術者達も当然この技術を引き継いでいた。製造コストが大きい主要パーツの1つがレシーバー(機関部)だ。G3ではレシーバーは厚手のシートメタルをプレスで折り曲げて成型、溶接で結合する方式を採った。
その他のパーツもアナログの工作機械で製造しやすく、これが後に世界各地でG3のライセンス生産を容易にした要因だ。
但し、切削加工されたM14やFALなどのレシーバーと比較すると、どうしても剛
性が高くないのも事実だ。それでも長期間にわたって、世界各国の軍や警察での使用されてきたことから、必要じゅうぶんな耐久性があることが立証されている。
特に同作動方式の利点が大きく認められたのが、SMG(サブマシンガン)の分野で、1964年にG3を小型化した9㎜×19口径のHK54が完成、その改良型が西ドイツ警察及び連邦国境警備隊(Bundesgrenzschutz:BGS)にMP5として採用された。これが1977年に起きたルフトハンザ航空181便ハイジャック事件の解決でGSG-9によって使用され、一躍有名になる。
またH&Kは60年代初頭から5.56mm×45口径のライフルの研究も進め、1968年にG3の小口径版としてHK33シリーズを完成させたが、こちらはG3ほどの成功は得られていない。
さらには命中精度向上に有利な同作動方式を活かしたスナイパーライフルであるPSG-1や、その廉価版のMSG90等も開発するなど、これらG3の派生モデルがH&Kのウェポンファミリーを構築していった。
TEXT&PHOTO:Gun Professionals LA支局
この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2022年3月号に掲載されたものです
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