2023/12/02
【実銃】オートマグの弟分たちが大集結!! AMTの名脇役「オートマグⅡ / ライトニング22」【中編】
44オートマグだけがAMTじゃない
GUNS OF AMT
今回のレポートではオートマグを設計したハリー・サンフォード氏が生みだしたサポーティングプレイヤー(脇役)たちを一挙公開する。地味かもしれないが……いや間違いなく地味だが、そんな脇役達は、噛めば噛むほど味わいがあるのだ。
オートマグⅡ
お次はオートマグⅡだ。このモデル、自分は正直言ってずっと嫌いだった。ロマン溢れるカリスマ44オートマグの勇姿に惚れまくりの自分にとっては、あまりにもギャップがひど過ぎたからだ。ようやく購入したのは旧Gun誌のリポーターになって8年もしてから。それまではひたすら敬遠していた。
細身と言うより、一種華奢なスタイル。あちこちが妙に尖っていて、カッコ良く見せようとする魂胆が見え見え。何よりも、44オートマグはボルト式だったのが、“普通の”スライド式になってしまったのが寂しかった。
「.22口径でもマグナム弾ならオートマグには違いないけど、そーゆー問題じゃないんだよ」と、許せなかったのだ。
しかし実物を手にしてからは、その考えが180°変わった。コイツはなかなかに立派な銃だった。
登場は1988年だ。その直後から、銃器雑誌の表紙を飾ったりと、相当騒がれた。騒がれた理由は、この銃より以前に.22マグナムを撃つオートは存在しなかったからだ。つまりコイツは、業界初の成功した.22マグナムオートなのである。
.22マグナム弾はケースが細くてやたらと長い(26.8mm)。そのため、チャンバーにケースがへばり付くなど、排莢に手間取るのがオート化の壁になっていた。その難題をサンフォードはバレルのチャンバーに秘密のガスチューブ加工を施すことで解決したのだ。
具体的には、チャンバー部の外周を削って細くし、弾頭の根元およびケースの1/3と2/3に当たる周囲に各6個、計18個の穴を均等な間隔で開け、その上にスリーブを被せてアルゴン溶接してある。スリーブとチャンバーの間には18個の穴が繋がるように内部にクリアランスを設けてあるから、発射の際、前の6個の穴からガスが入って後方の12個の穴からケースへ噴き出し、摩擦を軽減させて抜けやすくするという仕組みだ。
何となく44オートマグのアクセレーターに通じる思想を感じるが、加工には相当な技術力が必要だし、そんなめんどくさいことはコスト面からも普通はやりたがらない。しかし、サンフォードはそれをやり遂げた。銃は見事に作動し、.22マグナムの長いケースが綺麗に宙を舞う。弾かれたケースにはガスの噴射痕が12個も付き、初めてそれを見た自分は超ビックリしたものだ。
発売価格は300ドルほど。自分は2006年に350ドルで購入した。バリエーションとして、ご覧の6インチモデルの他、3-3/8インチのコンパクトモデル(装弾数8発)と4-1/2インチモデルが存在する。コンパクトモデルを撃ってみたいが、現在はレア化が進んで高騰し、とてもじゃないが買い切れない。
サンフォードはこのオートマグⅡの成功の後、オートマグⅢ(.30カービン、9mmウインマグ)、Ⅳ(10mm、.45ウインマグ)、Ⅴ(.50AE)と次々に口径の範囲を拡大。あのウイルディが撃った.45ウインチェスターマグナムやらデザートイーグルの.50AEまでも制覇するに至った。まさにマグナムオートメーカーの本領発揮という勢いだった。
ライトニング22
前章のオートマグⅡは長年敬遠していた自分だったが、逆に、欲しい欲しいと思いつつもなかなか縁が無かったAMTもあった。それが今ご覧のライトニング22オートだ。誰の目にもバレバレのように、コイツはRUGER MKⅡのパクリである。基本、一緒と言っていい。登場は1984年だ。当時の価格は230ドルほど。同時期、RUGERが225ドル。結構ニクイ価格設定である。
AMTとしては、国民的大人気銃であるRUGER 22オートのステンレス化を目論んだはずだった。1977年のハードボーラーで業界初のステンレスガバを実現した時のようにだ。しかし、残念なことにその1984年に、RUGERもMKⅡのステンレス版をリリース。
AMTの野望は砕かれたかに見えたが、特にめげることなくバレル長違いのバリエーションをどんどん増やし、最長で12.5インチのモデルまで出して気を吐くと同時に、調子に乗ってRUGERの.22口径セミオートライフルである10/22のステンレス製コピーまで作ってしまった。
さすがのRUGERもコレには怒って訴訟に発展。結果、ライフルのほうは生産が許されたが、ピストルは差し止めとなって1987年に絶版。製造数23,903挺であえなくおじゃんとなった。自分のご縁が薄かったのは、生産数の少なさによる部分もあるかもしれない。なお、聞くところによると、ライフルはAMTのほうが出来が良かったらしいけどね。
さて、そんな悲しい運命のライトニングなのだが、コイツは単なるRUGERのコピーには終わっていない。レシーバー上部にスコープマウント用のカットを入れたり、トリガーガードに指掛けを付けたり、トリガーにクラーク製のカスタム品を持ってきたり、リアサイトにミレットを投入したりしていた。
ミレットのリアサイトはAMTが好んで多用したものだ。
また、レシーバーのサイドのフラット加工などはAMTらしさに溢れていてグッとくる。自分は元々RUGER22オートの大ファンでもあるから、この銃はとても興味深く、面白いのだ。
しかしAMTも、ここまで堂々とやっちゃうなら、もうちょい工夫して分解法に改良を加えて出していれば、更なる独自性が出たのではと思う。ボルトストップピンを分割式にして、バックストラップのメインスプリングハウジングを取らなくてもレシーバーがフレームから分離できるようにするとかね。あーでもそんなことしたら、余計にRUGERを怒らせたかもしれんけどさ。
コレはいつも思うのだが、AMTの銃は、ステンレス素材を駆使した強力なオートに対する情熱とともに、やたらと長いバレルのモデルが多いよね。短いバレルで動かすよりは長いほうが比較的簡単ではあるけど、それとは別に、もしかしてサンフォードさんは、長いものに対する憧れとかコンプレックスみたいのがあったのかあなんて。要らん想像をしてしまう自分だ。
Photo&Text:Gun Professionals サウスカロライナ支局
この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2021年8月号に掲載されたものです
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