実銃

2023/07/30

【実銃】SAAレプリカを作る「シマロン」のエントリーモデル「ピストレロ.45」の詳細に迫る!【中編Ⅱ】

 

CIMARRON

PISTOLERO .45LCTos

 

 

 オールドウエストガンには何故か惹かれるものがある。とりわけシングルアクションリボルバーはその筆頭だ。安全性を最大限に高めた現代のシングルアクションも機能的で素晴らしいが、4ポジションのクラシックハンマーはもっと魅力的だ。

 テキサスのシマロンは、低価格ながら押さえるべき部分はしっかり押さえたSAAレプリカ。147年前はSAAが最先端のファイティングリボルバーだった。この銃を手に、あの当時、これを手に戦った男達に想いを馳せてみたい。

 

中編その1はこちら

 


 

~ ピストレロ45 ~


 さて、ベースがピエッタということでやや不意打ちを食らったこのシマロン。商品名はピストレロ45と、ラテンっぽさを強調している。外観はとても美しい。バレルが鮮やかなブルーをたたえ、フレームのケースハードン仕上げもゴージャスな色合い。実は手元にあるウベルティは、造りは最高なんだけどケースハードンが灰色っぽくて華のない発色なのだ。こっちのほうが全然良い。


 この時点で既に手間とヒマ、つまりコストが掛かっていそうだが、その割に価格は429ドルと安い。探せば400ドルを切る店もある。はっきし言って、感覚的にはモデルガンより安いくらいのものだ。なお、このピストレロ45は初心者向けのエントリーモデルだそうで、ゆえにお値段も安めに設定してあるとのこと。同社の上級バリエーションには、例えば“Man with No Name"モデルがある。

 

シリンダーの様子。ケースのリムとリムが干渉しそうなくらいピチピチなレイアウトだ。数字的には、.44マグナムのモデル29のシリンダーよりも1.5mmほど径が小さい

 

 グリップにスネークのインレイが浮く、といえばもうお分かりだろう。イーストウッドがマカロニで愛用したアレだ。お値段は780ドルに上がる。もしもピストレロ45と一緒に置いてあったら、自分はかなり迷ったかもしれない。あと、2007年のリメイク版の『3時10分、決断のとき』(3:10 to Yuma)でラッセル・クロウが使った、十字架のインレイ入りのグリップが付く“The Holy Smoker”モデルなどもある。こっちも相当にカッコよく、お値段は767ドル。これらの上級モデルは、ウエスタン音痴の自分にはちょっと贅沢過ぎるかも。今は目の前のピストレロ45で遊ぼう。


 古いピエッタのグリップは、トラディショナルなコルトよりも若干大き目だったと聞き及ぶ。しかし、このピストレロ45をウベルティと比べる限り、差はないように思う。手元にコルトがなく、比較できないのは残念だけどね。真鍮のグリップフレームはすぐに指紋が染み着いてしまうが、それがまた味。せっせと磨いて落とすのもまた楽しい。

 

リコイルシールド部も見る。ハンマーダウンでファイアリングピンがコレだけ突き出る。リコイルキャップはしっかり装備。シリンダーハンドがとても分厚く頑丈そうだ


 ハンマーには無論、ファイアリングピンが付く。オールドな4ポジションハンマーだ。コッキング時の4回クリック音はマニアにはこたえられないはず。


 ピエッタからは現在、ルガーに似たトランスファーバーを備えたモデルも出ている。ハンマーは3ストップだ。ルガー同様、現代風なアレンジを加えて安全面が向上するのは、それはそれで良い。けれど、完全に正統派のレプリカは、やっぱり浸れるもの。手元にあるウベルティもクリックは4回だ。自分も少しはウエスタンが分かってきたか。

 
 その4回クリックのハンマーは、すでに述べたがコッキングがマジで軽く滑らかだ。チューンなしでも早撃ちに使えそうなくらい。ただ、それはあくまでもコッキングだけで、大切なトリガーの切れのほうは、妙に硬くてギクギクな感触が頂けない。

 

 数字的には3.5パウンド(約1.6kg)ほど。逆に手元のウベルティは、ハンマーのコックはややギクシャクしつつも、トリガーの切れは天下一品なんだよね。どっちもどっちという感じ。ローディングゲートの開閉もポジティブなら、エジェクターロッドの動きも素直。よっしゃ、一通りのチェックは済んだので、ココらでちょっくら室内撮影を始めるかとシリンダーへ弾を装填して、早くも失敗。

 

 うっかり、弾頭が長いリロード弾(貰い物。たぶん不良品)を入れてしまったのだ。シリンダーを回していくと、はみ出た弾頭がフォーシングコーンに引っ掛かってそれ以上回らなくなってしまった。

 

木製のワンピース・グリップ。ツルツルのテカテカ仕上げ。ウォルナット材とのことだが、木目の具合がかなりエキゾチックだ。当たりを引いたか


 まずい。コレはシリンダーを抜くしか手はないと、少々当惑しつつベースピンラッチを押してみるのだが、なぜかガチガチでびくともしないのだ。パニくる気持ちを抑えつつ、無理しない範囲で押したり引っ張ったりしてようやくベースピンが抜け、難を逃れた。どうやら中途半端な位置にベースピンが留まっており、本来ピンのノッチに逃げるはずのベースピンラッチが干渉した状態で固まっていた模様。こーゆー不測の事態に、ウエスタン音痴の自分はイチイチ焦っていけない。


 気を取り直してクローズアップ写真を進め、大方撮り終えたところで今度はいきなり故障が来た。ハンマーの調子がおかしくなった。フルコックおよびダウンが出来ず、セミかハーフコックの位置で留まってしまうのである。


 おいおい、まだ一発も撃ってないのにコレはないだろう。とりあえず再びシリンダーを外し、ボルトやらハンドを指で押してみたり、ハンマーをガチャガチャ動かしつつトリガーを色々に引いてみたりして、最後にトリガーを思い切り深く引きつつハンマーを起こしてみたらやっと治った。

 

 その後は何事もなかったかのように動くようになった。恐らくコックしたハンマーを指で押さえつつ戻す際、トリガーの引き加減と言うか引き戻し位置が悪くて、両者の接点の微妙な谷間に落とし込んでしまったらしい。

 

フォーシングコーン回りもチェック。フレームのカーブの具合が何とも艶めかしい。イタリア語で拳銃(Pistola)は女性名詞なのが分かる気がする


 SAAのハンマーとトリガーの接点は、かなりセンシティブだ。設計が古く、トリガーの形状が極めて華奢で、ツメの部分がダメになることが多い。
 そこへ持ってきて、この銃のトリガーはどうやら鋳造パーツのようだ。左サイドに鋳造の丸いマークが小さく浮いている。今時の鋳造は削り出し並みの強度があるとは聞くが…う~ん、どうなんだろう。負荷が強く掛かるこのパーツ、果たしてマカロニの激しい早撃ちに耐えられるのだろうか。


 こうなってくると、にわかに見る目が藪ニラミに変わって、文句がゾロゾロ並びだす。バレルやシリンダーのブルーのノリも、最初は綺麗に見えたんだけど、撮影のために油をきっちり拭き取ったら妙にムラっぽく映ってきた。手元のウベルティでは結構遊んでいるが、そういったムラは発生していなし、元々のブルーがもっと厚くて深くて安定している。

 

簡易分解。シリンダー外しのみでご勘弁だ。グリップがツーピースなら、ネジ1本で簡単にグリップフレーム内部が覗けたのにと、筋違いの文句をたれる筆者。データは、全長260mm、全高133mm、シリンダー長41mm、シリンダー径42mm、グリップ幅35.3mm、バレル長120mm、バレル先端径18mm/バレル後端径19mm、装弾数6発、重量1,012gといったところ


 それと、フロントサイトにも少々不満。形は整っているのだが、バレルとの接合部がどうも心許なく、試しにつまんでみると僅かにぐら付くのだ。ウベルティにそれはなく、ガッツリ強固に装着してある。抜き撃ちの練習を繰り返したら、やがては取れてしまうのではなかろうか。


 自分としては、コイツは初めてのシマロンであり、かねてから良いウワサしか聞いていなかっただけに、チョットう~んが募ってきた。何となくウベルティベースのほうが良かったような…(シマロンのPistoleer(ピストリア)というモデルなどはウベルティがベース)。前述の通り、このモデルはエントリーレベルの低価格品だから、多少の不備には目をつぶれって話なのかもしれないけどさ。
 

Text&Photo:Gun Professionals サウスカロライナ支局

 

この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2021年2月号 P.156-160をもとに再編集したものです。

 

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