エアガン

2023/05/18

メカボックスを調整してギアのノイズを軽減しよう【Armsカスタムガレージ】

 

 昨年末に編集部スタッフが購入し、あまり調子のよくなかったCYMA製M16A4電動ガンのメンテナンス方法を解説する記事の後編。前回はシム調整とモーターの交換を行なうべく、メカボックスの分解まで行なった。今回はいよいよ調整に移る。

 

※トイガンを分解すると、メーカー保証や修理を受けられなくなります。分解する場合は自己責任の下に行なってください。

 

メカボックスの分解についてはこちら

 

メカボックスの洗浄

 

メカボックスのギアや軸受けにはグリスが塗られていた。青色で粘度が高く、潤滑能力はありそうなものだが抵抗がやや多い。綺麗に洗浄してより低粘度のグリスを塗りなおすことにした

 

メカボックスの洗浄にはパーツクリーナーか食器用中性洗剤を使う方法がある。筆者の場合はシリンダーやスプリングといった細かいパーツはノズルを付けたパーツクリーナーで洗浄し、メカボックスのボディやギア類といった大きなパーツは食器用中性洗剤を使う

 

メカボックスや軸受け、ギアなどはお湯に食器用中性洗剤を溶かして漬け込み、歯ブラシでグリスをこそげ落とす。メカボックスのバリなどで手を切らないように慎重に洗おう

 

洗浄後はタオルなどで水分を拭き取り、ドライヤーで細部の水気も飛ばしておく。軸受けを外して拭き取りをするほうがよいかもしれないが、今回はドライヤーの温風を当てておくだけに留める

 

洗浄後のメカボックスとギアだ。ベベルギアにはまだ薄っすらと青色のグリスが残っているが、意地になってそぎ落とすほどでもないので放置する

 

モーターの位置合わせ

 

 モーターのピニオンギアがベベルギアと適切に噛み合うことで作動音の低下と動力伝達の効率化が図れるだけでなく、各種パーツの耐久性も向上させることができる。今回はベベルギアの高さを基準に各種ギアのシム調整を行なっていく。

 

メカボックス右側にシムを入れていない状態のベベルギアを差し込み、軸受けとの干渉状態をチェックする

 

写真のように外側の軸受け穴を指で押さえるとギアが浮き上がり、軸受けとギアの間に隙間ができた。この隙間を埋めるのがシムの役割だ。CYMAの軸受けは高さがあるので、0.3mmのシム1枚でちょうどよい

 

シムはエアガン用として発売されている物を使うのがベターだが、今回はあえてタミヤ製のRCカー用の物を使ってみる。0.1mm/0.2mm/0.3mmと小袋分けされているので使いやすい

 

交換するモーターはSPARK製「INAZUMAモーター」のロングモデルだ。海外製電動ガンの硬いギアにも対応したピニオンギアを標準装備しており、トルク、スピードともにバランスが良く、扱いやすいモーターだ。CYMA製純正モーターからシャフトスプリングを付け替えて使用する。このモーターを使用したことで連射速度は秒間9.7発から12.8発に向上した

 

メカボックス右側にシム入りのベベルギアを差した状態でグリップとモーターだけ取り付ける

 

モーターのピニオンギアとベベルギアはこのように噛み合った状態となっている。赤枠で囲んだカムシャフトまで、ピニオンギアが2mmほどのクリアランスを残した位置に来るのが理想的だ。モーターのピニオンギアはグリップエンドプレートのマイナスネジを回すことで進退調整ができる。ベベルギアを確認しながら位置合わせを行なう

 

シム調整(右側)

 

モーターのピニオンギアとベベルギアの位置合わせが完了したらグリップとモーターを取り外し、シムなし状態のスパーギアを入れる

 

この写真はスパーギアとベベルギアの高さが不ぞろいな状態のものだ。スパーギアがベベルギアのカム上部と干渉しており、摩擦が発生しているのでスパーギアにシムを入れてクリアランスを作る

 

スパーギアの歯車がベベルギアの歯車の上部にくるように0.2mmのシムを入れて調整した。スパーギアの高さはベベルギアの歯車を越えないようにするのがポイントだ

 

スパーギアのシムが決まったら次はセクターギアを調整する。シムなし状態のセクターギアをメカボックス右側に差し込む

 

赤色の囲みを見てもらえると分かるように、スパーギアとの間に大きな隙間が空いている。このままだとギア同士の位置が悪いのでセクターギアにシムを入れて隙間をなくすように調整する

 

0.3mmのシムをセクターギアに入れると隙間は埋まった。スパーギアの軸棒を上から押しこんで隙間がまだないか最終チェックを行なう

 

これでメカボックス右側の各種ギアはシム調整が完了した。ギアに入れたシムの厚さはメモ帳に記録しておくと、後々のメンテナンスや管理に役立つのでオススメだ

 

次はメカボックス左側のシム調整をするのだが、その前にちょっとした準備を行なう。まずは右側のシムとギアが入ったままの状態でメカボックスを一度閉じる。写真のようにメカボックス下部(ギア周り)のネジだけを締めて固定する

 

右・左側どちらでもよいのでピンポンチなど細長い棒で各種ギアの軸受け穴をつついてみる

 

すると内部でギアが動く感触があり、軸棒が軸受け穴から少しだけ飛び出した

 

軸受け穴をよく観察する。ピンポンチで軸棒を押し込んだときに、反対側の軸受け穴から飛び出してくる分がメカボックス左側に入れるシムの厚さの目安となる。この段階では正確な数値などはわからないので、大雑把にこれくらいかなと様子見する程度でよい

 

メカボックス左側に入れるシムの様子見をしたら、ネジを外してメカボックスを開く。シムなしの状態でベベルギアとスパーギアをメカボックス左側に差し込み、赤枠で囲った部分のクリアランスを見てみる。ここに0.1mmほどの隙間があれば問題ないが、ない場合はベベルギア左側に0.1mm〜0.3mmのシムを入れて調整する。今回は0.3mmを入れた

 

シム調整(左側)

 

先に決めた右側のシムを各種ギアに取り付け、メカボックス右側に差し込む。この状態で先ほどメカボックスを仮組した状態で行なった様子見を参考に大まかな感覚でシムを入れていく。0.2mm〜0.4mmの間で試していくのがオススメだ

 

左側の各種ギアにシムを入れたら、メカボックスを閉じて先ほどと同じくギア周りのネジだけを締めて閉じる。この状態でセクターギアを回してギアがスムーズに回るか確認をする。セクターギアを回す際は写真の赤い棒で指した箇所から指を入れるのだが、バリなどが出ているので怪我には注意してほしい

 

 

試運転・動作チェック

 

手回しで各種ギアが滑らかに回転することを確認したら、次はモーターを使って実際に駆動させてみよう。まずはメカボックスにスイッチとトリガーを組み込んで配線を取り回しておく

 

筆を使って各種ギアにグリスを塗っていく。ギアの表面には塗り延ばすように薄く塗り、歯車の凹凸部には筆を縦に動かして奥まった部分にもグリスが付着するようにする

 

今回は東京マルイ純正の「メンテナンスグリスセット」を使用した

 

メカボックスにシム調整済みの各種ギアを入れて、ギア周りのネジだけを締めて固定する。メカボックスにモーターとグリップを取り付けたらバッテリーを繋いでトリガーを引く。モーターが駆動し、抵抗感なくギアが回転したらシム調整は成功だ。引き金を引いてもモーターが動かない場合はグリップエンドプレートを外してモーター端子に配線が差さっているか確認しよう

 

まとめ

 

 今回カスタムを行なったCYMA製M16A4ではモーター交換によるサイクルアップとシム調整による作動音の減少が体感できる仕上がりとなった。トリガーレスポンスも向上し、全体的に調子が良くなった。シムは少なすぎると音が出てしまい、多すぎると抵抗を生んでしまうというものだ。適正なシム厚を選んでギアを軽やかに回すというのは難しく、面倒に思えてしまうかもしれない。しかし、自分が調整したメカボックスが以前より快調に動作したときの喜びというのは実際にメンテナンスを行なったユーザーにしか味わえない格別のものだ。古い電動ガンや海外製電動ガンを持っているのなら、メンテナンスと合わせてシム調整にチャレンジしてみてはいかがだろうか。

 

 

TEXT:津軽太郎

 

この記事は月刊アームズマガジン2023年5月号に掲載されたものです。

 

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