2023/05/05
【実銃】大衆向けARピストル「PSA PA-15」を実射する
Palmetto State Armory
PA-15 AR PISTOL
コスパ抜群!大衆向けARピストル
ショートバレルにストックなしというARピストルは以前からあったが、その存在価値には疑問符が付いていた。使い道がない…といったら言い過ぎか。しかし、スタビライジングブレイスという世紀の大発明がその状況を一変させた。これを装着すれば、見た目は禁断?のショートバレルドライフルに変身! 使い勝手も大幅に向上する。これはパルメットステイト アーモリーの廉価版ARピストルだが、コストパフォーマンスは抜群、撃ちまくって遊ぶにはピッタリだ。
PA-15 MULTI
それでは一通り見ていこう。
バレルは極短の7.5インチ。その先端に付く極太のフラッシュハイダーは、GuntecのCone FlashCanだ。ライフル弾を撃つARピストルはマズルフラッシュと発射音が物凄い。それらを抑え、ガスを前方へ飛ばしてサイトヴューをクリアーに保つフラッシュハイダーは重要なパーツの一つ。
カービンサイズのハンドガードは、AIM Sportsのfree floatquad railと思われる。バレルナットと一体のスタイルが特徴的で、ピカティニーレイルが上下左右に付く。
そのハンドガードの下部には、自然かつ心地良いハンドリングで銃のコントロールを容易にするMagpulのAFG(Angled Fore-Grip)を装着。
サイト系はフロント、リアともにNcSTARのFlip Up Front Sightをチョイス。どちらも使わない時はコンパクトに折りたたんでおける。光学機器のバックアップの位置づけだ。
フレーム側に目を移し、グリップはBlackhawkのErgonomic Grip。フィンガーグルーブとラバーのテクスチャーで感触が良く、グローブをはめた手でもコントロールがバッチリ決まる。
そしてバッファーチューブには、SIG/Sauerのラバー製SB15 Pistol Stabilizing Braceが差し込んである。コレは正式には肘に被せてワンハンド・シュートを可能にする肘当てだが、そのまま肩当てにも流用できてしまう凄い発明品である…。
ざっとこんな具合だ。レシーバーとフレームおよび内部のパーツ類は、自分が見る限りMil-specのノーマルの模様。よって、コッキングハンドルの引きやらトリガーの感触は至って普通だ。全体を新品で造ったら、ざっと500ドルくらいか。
一個ケチをつけるとしたら、アッパーとレシーバーの接合にややぐらつきを感じる。何しろボディはアルミ合金なわけだから、脱着を頻繁に繰り返せばやがて緩んでもくるわけなのだが…。
既に述べた通り、PSAのAR製品は主に大衆向けであり、例えば他のライターが紹介する超高級高精度のコテコテ高額カスタムとは一種対極に位置する代物だ。お値段も1,000ドル、いや2,000ドル超えの差がある。ただ、人それぞれ用途や目的は違うから、自分に見合った製品を選べば良い。ちなみにPSAの耐久テストの模様をYouTubeで見たが、しっかり当たってるし至極丈夫。コスパがズバ抜けて良いのは絶対確かと思う。
それでは実射のその前に、今更ではあるが、ARピストルの歴史でつくづく凄いと感心するのはスタビライジングブレイスの登場だ。ARピストルは、バッファーチューブという構造上不可避な突起が後方へ伸びており、コレをそのまま肩に当てて撃つと物凄く具合が悪い。しかしご存じのように、16インチ以下のバレルを持つライフルは、1934年のNational Firearms Act.によってピストル扱いとなり、ショルダーストックの装着は許されない。その限界を破ったのがブレイスだった。
手元の資料によれば、ブレイスは2012年に、退役軍人のAlexBoscoという人物が発案したものらしい。
彼が、身体に障害を持つ退役軍人の友人とともに射撃に出掛けた際、障害があっても安定して撃てる方法はないかと考え、閃いたのがこのディバイスのアイデアだったという。
彼はそのアイデアを実用的にデザインし、ATFから認証を得た後、SB Tacticalという会社を創設して生産に乗り出した。
ただ、ATFから認証は受けたものの、その合法性にはやや疑問が残っていた。何しろまんま肩当てにもなるし、見た目もいわゆる抜け道的な印象が強かったからだ。それが2017年の春、ATFが公式に「ピストル・ブレイスはARピストルをショートバレルのライフルに変えるものではない」という声明をリリースし、ようやく疑問符に終止符が打たれたという流れがあったのだそうだ。
まったくもって、コロンブスの卵的な発想と思う。凄いの一言だ。元々ARピストルは、シビリアン向けには用途不明というか怪しげな雰囲気が拭い切れなかったのが、コイツのおかげで明瞭なプラクティカル感が一気にアップした。加えて、.308やら6.8 SPCのようなハードヒッティングの口径を撃つピストル版での効果には絶大なものがあり、さらに、例えば軍用の14.5インチCOLT6906M4などをライフル同様のルックスで楽しみたい趣味人間の一般市民をも大いに喜ばす結果になった。もしもペイトリオットのチューブ剥き出しスタイルが続いていたら、昨今のような華やかな展開は絶対無理だったに違いない。
しかし、よくもまあATFが許したもんだと、そっちも感心する。恐らくは身体障害者の射撃を助けるためという名目が強くアピールしたのだろう。何れにしても粋な計らいだ。願わくばこの先、バンプストックのような悲劇が起きないことを望むばかりだ。鉄砲がらみは楽しい話題ばかりじゃないのが現実。コレは常に、肝に銘じるべきだろう。
PSA実射編
では実射だ。
ショートな銃だが、構えた時の窮屈感は特にない。むしろ、体に密着する感じがとてもイイ。SIG製のブレイスはショルダーストックそのものの肩当て感。個人的にグリップだけは、ゴムの肌触りより樹脂の固い感触が好みかもしれない。
フリップアップの前後サイトをパツッと起こし狙いを定める。自前のHBARと景色が似るから目が馴染み易い。そしてトリガーを絞った。
一発目の感想は、「うへ~音がデカッ」コレである。イヤーマフの下にイヤープラグも付けたほうが無難な大爆音。加えて、銃口からの炎も大きい。たぶん室内射場とかで撃ったら、隣近所のブースにえらい迷惑だろうってくらいのもの。
ただし、実射の手応えとかリコイルなどは発射音ほどの強烈さはなく、逆に大人しいくらいだ。ボルトがレシーバー内部を行き来する感触は、自分にとっては郷愁。30年ほど前、初めて撃ったAR-15の感動がいちいち蘇る。日本へ帰国する知人から譲り受けたXM177スタイルの一本(メーカー不詳。MGCの金属製コマンドM15にそっくり)を一時期所持していたのだ。金に困って手放したのが未だに悔やまれる。
友人のロバートさんは、いつも一本スリングで吊って撃つ。ついでに、M9を腰のホルスターへ突っ込んでね。きっと海兵隊時代の名残りなんだろう。自分はスリングは慣れてないので直のホールドで撃った。マガジンは金属製のMil Spec30連を使用。MAGPULも無論優秀だが、こっちのほうが気持ちが落ち着くってもんで(物撮りに使ったMSARのマガジンはまだ試してない)。皆で計100発ほどを回し撃ちし、ジャムは皆無。ロバートさんはこれまでに数百発を撃ったが、調子はいつも抜群とのこと。マガジンともども、優秀である。
なお、プリンキングに興じて時間切れとなり、アキュラシーテストはスキップした。20ヤード先の5cm黒点をスパスパ撃ち抜いていたから、基本的には問題ないと思う。
不慣れなARピストルを冷や汗もんでご紹介した。日本でサバゲを戦ってる皆さんには釈迦に説法程度の内容になってしまったかも。勉強不足は平に反省。近々自前のARピストルをゲットし、必ずリベンジを果たす所存ですので。
Photo&Text:Gun Professionals ノースカロライナ支局
この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2019年12月号に掲載されたものです。
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