実銃

2019/02/12

【海外実銃レポート】SIG SAUER P320-M17

 

アメリカ軍制式採用拳銃の座を勝ち取ったシグザウエルのポリマーフレームオート

 

【海外実銃レポート】SIG SAUER P320-M17

 

 2017年1月19日、米軍はかねてより進めていたMHS(モジュラー・ハンドガン・システム)調達の結果として、シグザウエルのP320MHSバージョンを次期制式採用拳銃として選択したことを発表した。これによりP320MHSは、M17(フルサイズ)、M18(キャリー)の米軍採用番号とともに配備されることになった。米陸軍による採用に続き、同年5月には米空軍、米海軍、そして米海兵隊での採用も決まり、現在のところトータルで421,000挺の調達が決まっている。今回のレポートで紹介するのは、M17の民間販売版であり、米軍に採用されたモデルに限りなく近いモデルである。M17はポリマー製グリップを持つ、ストライカーファイア・セミオートマチックピストルである。口径は9mm×19、シグザウエルではM17の採用に合わせてより威力の高い147gr弾頭を使用する鉛公害の低いXM1152フルメタルジャケット弾と、124grのジャケッテドホローポイント弾を使用するXM1153スペシャルパーパス弾の2種類を同時に提出しており、これらも同時にM1152及びM1153として採用されている。

 

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米軍がこれまでに採用してきたオートマチックピストル。写真上からM1911(1911~1985年)、M9 (1985~2017年)、M17(2017年~)

 

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M17は最新のスペックを誇るミリタリーサービスピストルだ

 

 M17が採用された米軍によるMHS調達は、これまで使用されてきたM9ピストルの老朽化により新型ピストルの調達が必要となったために行なわれた。米軍は次期採用ハンドガンに様々な用途に合わせてサイズ、装弾数、サイティングシステムやサプレッサー等のアクセサリーの取り付けといった仕様変更を、モジュールの交換によって簡単に行えることを要求していた。2014年にスタートしたXM17選定には、ベレッタAPX、CZ P-09、FN Five-Seven Mk2、スミス&ウェッソンM&P、グロック17&19、そしてシグザウエルP320を含む12種類が各社から提出され、2年間に渡り1,700万ドル(約20億円)の予算を掛け、12種類のハンドガンの中から選定を行なってきた。そして2017年1月、米陸軍はこれまでの32年間に渡り採用されてきたM9(ベレッタM92FS)に代わる制式採用拳銃としてシグザウエルP320をM17として採用を決定したのである。

 

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米軍に採用されたM17を正確に再現した民間モデルP320F-9-M17-MS。重量は819gとポリマーピストルらしく900gを切る軽量さだ

 

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装弾数17発のマガジン。表面は自己潤滑性を持つ仕上げが施されており、砂が多い環境でも確実に作動する

 

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シンプルなケースに入って届いた。マガジンは2本付属している

 

 ポリマーフレームを持つストライカーファイアピストルは各社が多く発売しており、筆者としてはP320に対してそれほど興味を持つことができなかったのが正直なところだ。特に2014年の発売当初、サンプルとして送られてきたフルサイズのP320が作動不良を繰り返し、さらにサイトの高さがまったく合っておらず狙ったところに当らない品質の低さを経験していた。さらにその後、スライド後部からある一定の角度で地面に落とすと暴発する構造的な欠陥が露見し、シグザウエルではその対応のためのリコールを行なっていた。これらのことからP320のM17としての米軍採用は正直なところ銃器業界関係者にとって大きな驚きであった。大半がグロックが採用されると考えていたからである。

 

 M17のベースとなっているP320シリーズはFCU(ファイア・コントロール・ユニット)を中心としたモジュラーハンドガンとなっている。FCUはフレーム内部に位置する撃発機構とバレルのロックアップ機構を束ねたピストルの心臓部であり、FCUをバリエーションとして用意されたグリップとスライドに組み合わせることで、様々なコンフィグレーション(外観、形状)に変化させることができるユニークなキャラクターを持っている。

 

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マニュアルセーフティ、スライドストップともにアンビとなっており、これもMHSに盛り込まれていた要項の1つだ。スライドストップ下には内部のFCUに刻まれたシリアルナンバーが見えるようにグリップフレームにウィンドウが空いている

 

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通常分解したところ。紛失する可能性のある細かなパーツや、スプリングの力で飛び出すような部品はない

 

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テイクダウンレバーを引き抜くとFCUが取り出せる

 

 今回、米軍採用となったピストルを銃器の専門家としては持っていなければならないという理由でM17の民間版を購入した。購入してからすでに3,000発程度をタクティカルトレーニング、シューティングマッチなどで撃っているが、作動不良は皆無。さらに狙ったところにバッチリと当たり、トリガーやセーフティ、スライドストップ等の操作性も優れている。現在ではサイズもサービスピストルらしく大柄で扱いやすく、自然に狙って撃てる精度の高いピストルであると筆者は判断している。FCUを使ったモジュラリティーは便利であり、折りたたみ式ストックを持つB&TのUSWグリップモジュールも入手し、現在BATFE省への登録待ちである。米軍採用による宣伝効果は高く、すでに地元ラスベガスの警察官がデューティーウェポンとして、またタクティカルトレーニングやシューティングマッチでも必ず複数のP320のバリエーションを見かけるようになってきている。今回紹介しているP320のバリエーションとM17は今後、米国だけではなく世界中で普及していくミリタリーサービスピストルのスタンダードとして受け入れられていくだろう。

 

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シューティングインプレッションは本誌にてご確認いただきたい

 

TEXT&PHOTO:SHIN

 


この記事は2019年3月号 P.104~111より抜粋・再編集したものです。

 

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