2021/07/23
【実銃】ワルサーの2021年最新ハンドガン「PDP」
ドイツの老舗銃器メーカー・ワルサーが最新ハンドガンとして、法執行機関向けにポリマーフレーム/ストライカーファイアハンドガン「PDP(Performance.Duty.Pistol.)」をリリースする。その進化したモデルは新たなワルサー伝説の始まりすら予感させるものだった。今回はそのレポートを公開しよう。
ワルサーによる期待の新製品「PDP」
某日、ドイツのカール・ワルサーに籍を置く友人、ピーターから「素晴らしいピストルができたからぜひ紹介したい」と連絡が入った。添付されていたのは、3月のIWA(Internationale Waffen Ausstellung OUTDOOR CLASSICS:ドイツで開催される銃器見本市)でヨーロッパ向けに発表されるはずだったワルサーの最新ピストル、PDP(Performance.Duty.Pistol.)の資料と写真。それを見るだけでもワルサーがこの銃にそそぐ情熱がひしひしと伝わってきた。
ワルサーの復活
ワルサーといえばかつてはPPKやP38といった伝説の名銃を世に送り出し、その名を轟かせてきた。だが、戦後はそういった伝説と呼ばれるような銃を作り出せずにいた。それどころか経営不振に陥り、一番の顧客であるドイツ警察の顔色をうかがうような「安パイ」な製品作りに終始していたのである。特に市場で不評であったのはトリガーフィーリングの部分だ。ドイツ警察は暴発防止のために重いトリガープルを設定しており、またトリガートラベルも極端に長い。そのドイツ警察の基準に合わせて、ワルサーはあえて“安全”を重視した扱いにくい銃を作り続けてきた。競技用の分野ではあれだけキレのある銃を作れるのに、である。
しかし、ワルサーは2年前のIWAで「Q5 Match SF」を発表。それまであったPPQをスポーツ射撃用に研ぎ澄ませ、競技用のライフルにあったトリガーのキレをはじめとした技術をハンドガンへフィードバック。さらに、ポリマーフレーム全盛の時代にあえてスチールフレームを採用したのである。この思い切った戦略は大成功し、「往年のワルサーが還ってきた」と感じさせてくれたのである。
そのQ5 MATCH SFで培った技術をさらに進化、LE向けのハンドガンとして開発されたのが今回紹介する「PDP」である。これを実射したかったが昨今の事情から射撃場は閉鎖中。それでもワルサーが提供してくれた豊富な資料があるため、今回はそれを元にこの銃を紹介しよう。
WALTHER PDP FS 4"
- 口径:9mm×19
- 全長:189mm
- 全幅:34mm
- 全高:143mm
- バレル長:102mm
- 重量:695g
- 装弾数:18発
WALTHER PDP FS 5"
- 口径:9mm×19
- 全長:215mm
- 全幅:34mm
- 全高:143mm
- バレル長:127mm
- 重量:745g
- 装弾数:18発
WALTHER PDP C 4"
- 口径:9mm×19
- 全長:189mm
- 全幅:34mm
- 全高:135mm
- バレル長:102mm
- 重量:690g
- 装弾数:15発
3種類のバレルサイズがラインアップされたPDP。従来のPPQとはスライドのフォルムがまったく異なるが、ポリマーフレームの形状はPPQと同様で、ベースにされていることがわかる。またPDPはモジュラーシステムになっており、フルサイズとコンパクトモデルで各サイズのスライド&バレルは互換性がある。
次のレポートではこのPDPの細部をじっくり解説、その銃に秘められた工夫と機能について解説していこう。
Text:櫻井朋成(Tomonari Sakurai)
Photos:Carl Walther GmbH/櫻井朋成
Special Thanks to
Carl Walther GmbH:https://carl-walther.com/defense
この記事は月刊アームズマガジン2021年7月号 P.202~209より抜粋・再編集したものです。