2021/05/25
第二次世界大戦のドイツ軍兵に施された教育~マウザーKar98k編~
第二次世界大戦のドイツ軍を通して紐解く
近代的軍隊における兵士の素顔
今回解説するのは、第二次世界大戦のドイツ軍の兵にとって欠かせなかった存在、マウザーKar98k小銃だ。この銃についてどのような教育を施されていたのか、当時の歴史的資料を交えてご紹介しよう。
Mauser Kar98k
- 口径:7.92mm×57マウザー弾
- 全長:1,100mm
- 銃身長:600mm
- 装弾数:5発
- 重量:単材銃床で3.9kg、積層材銃床で4.2kg
- 有効射程:500m
マウザーKar98k(Mauser Kar98k)の基礎知識
主力小銃 マウザーKar98kは、帝政時代の1898年に制式採用されたGewehr 98(98年式歩兵銃、Gew98)を元に開発され、国防軍誕生※1直後の1935年6月に制式採用された。Kar98kは「Karabiner 98 Kurz」、つまり98年式“短騎兵銃”の略であり、ボルトハンドルが下向きに湾曲し、負革(スリング)が側面に配置された騎兵銃の特徴を持つ。また、小銃の短銃身化は当時の世界的潮流であり、これは機動的な軍を指向していた国防軍の方針にも合致するものであった。
※1:第1次世界大戦後、ドイツはヴェルサイユ条約による軍備制限下に置かれていたが、1935年にヒトラー政権は条約による制限の破棄を宣言した(再軍備宣言)。
小銃に対する姿勢:Einstellung zu Gewehren
軍隊では1挺の小銃と1人の兵士が紐づけられ、自分の小銃のクセを知り、習熟することで射撃精度を高めることが期待された。また、いかに優れた小銃であっても、適切な操作と手入れ無しにはその性能は発揮できない。そこで、新兵に対しては「自分の小銃を恋人と思って扱え!」との教育がなされていた。下の画像は当時の有名な漫画家バルロークの絵葉書で、小銃を抱えて兵営のベッドで寝ている新兵が描かれている。絵の下には「練兵場からご挨拶、私は新たに最愛の人を得ました」とある。最愛の人とはもちろん小銃のことを指している。
座学の概要:Überblick die Vorlesung
上記写真はドイツ陸軍で教範の副読本として使われていたライベート(REIBERT)の表紙だ。この本に掲載されている武器は小銃に始まりP-08拳銃、信号ピストル、MG34軽機関銃と重機関銃、手榴弾およびMP-38・40機関短銃などである。
小銃はKar98b騎兵銃、Gew98歩兵銃、Kar98k騎兵銃について各部の名称や取り扱いについて記載されている※2。
※2:Kar98kの採用後も、旧式のKar98bやGew98は引き続き訓練などで使用されていた。
Soldatenfibel
兵士の入門書
今回解説したMauser Kar98kの教育は月刊アームズマガジン2021年6月号により詳しく掲載されている。また6月号から始まった連載「Soldatenfibel 兵士の入門書」では第2次世界大戦時のドイツ軍を中心に、当時の個々の兵士がどのように教育・訓練されていたのか、日常生活はどのようなもので、戦場ではいかに戦ったかをでき得る限り立体的に、ディテールにもこだわって紹介していっているので、そちらの連載記事もチェックしていただければ幸いだ。
PHOTO &TEXT:STEINER
この記事は月刊アームズマガジン2021年6月号 P.150~151より抜粋・再編集したものです。