2020/11/20
【中編】スナイパーライフルの魅力【RUGER PRECISION RIFLE “RPR”】
遠距離のターゲットを1発で仕留めることのできるスナイパーライフル。しかしそれなりの精度を持ったボルトアクションライフルと性能の高いスコープを揃えるとなると、最低でも5000ドル以上は覚悟する必要がある。そこで今回ご紹介するのは、ルガー ファイアアームズ社のライフル、RUGER PRECISION RIFLE “RPR”。
この高性能かつ画期的なスナイパーライフルを通じて、スナイパーライフルと長距離狙撃についてレポートしていこう。
※このレポートは月刊アームズマガジン2018年9月号に掲載されたものを再編集したものです
精密狙撃の秘訣①:バレル
バレルは、ルガー社自慢の5条右回り4140クロモリ鋼の冷間鍛造バレルを採用。口径によってツイストを微妙に調整している。バレルのレシーバーへの固定はARスタイルを踏襲しており、バレルナットを使用してアッパーレシーバーにフリーフローティングで装着されている。フリーフローティングバレルは外力の影響が少ないため、狙撃の精度を上げてくれるのだ。
さらに、今回のテストモデルには「RPR ハイブリッド マズルブレーキ」が装着されており、効率よくリコイルを抑えつつ、ノイズと発射炎をカットする効果があるとされる。
これが「RPR ハイブリッド マズルブレーキ」だ。リコイルを抑えるだけでなく、フラッシュハイダーの機能も持っている。口径が6.5クリードモアということもあるが、そのリコイルはマイルドだ
精密狙撃の秘訣②:レシーバー
従来のボルトアクションライフルのデザインは、チャンバーからマズルにかけて発生したリコイルのパワーを、バレル/レシーバー/リコイルラグ/固定システム/ストックというように、複雑に伝達してしまう。これは精度を下げる一因にもなっていた。
だが、RPRのアッパーレシーバーは熱処理済の4140クロームモリブデン鋼からのCNC削り出しであり、2ピース構造の7075-T6アルミ材からなるロアレシーバーが2本のボルトで固定されている。この構造により、発生したリコイルがアッパーレシーバーの後部からバットストックまでストレートに直接伝達されるため、バレルの性能やアッパーレシーバーの強度といった、精度に直接影響を及ぼすパーツのポテンシャルを充分に引き出しやすくしたのだ。
また、“マークスマン トリガー”と呼ばれるアジャスタブルトリガーシステムは、2.25ポンドから5ポンドまでのアジャストが可能。今回のテストライフルでは、2.6ポンド程にアジャストされており、そのクリスプな切れ味は好感の持てるものであった。
堅牢に作り込んであるフォールディングシステムと、ARパーツがそのまま使える45°セーフティ、ピストルグリップ。トリガープルは2.25-5ポンドの範囲でアジャストできる
誇らしげに入る“RUGER PRECISION”のロゴ。ロアレシーバーはこの2本のボルトでホールドされている2ピース構造(いわゆるモナカ合わせ)だ。そのシンプルな構造は新世代独特のものだ
精密狙撃の秘訣③:バットストック
RPRのデザインで一番の異彩を放っているのが、このアジャスタブルストックであろう。ただし、アジャストが可能なのは、バットプレートの前後と、頬あての前後と上下アジャストである。
しかし、このRPRデザインが秀逸なのは、リコイルの伝達が1直線になるよう、アッパーレシーバーの後部にARライフルのカービンレングスバッファーチューブを使ってバットストックを固定し、さらには堅牢なフォールディングシステムをビルトインしてしまった点にある。このバレルそのものの精度やそれを支えるレシーバーの性能を発揮できるデザインこそが、RPRの精度の高さをサポートしているのである。
重量感溢れるバットストック部。ARスタイルライフルのミルスペックバッファーチューブを採用している。右端のボタンを押すと左側にフォールドでき、このボタンを90度回転させると、フォールドしたストックをロックすることができる
ストックを折りたたむと、ここまでコンパクトになる
Text & Photos: Hiro Soga
この記事は月刊アームズマガジン2018年9月号 P.68~75より抜粋・再編集したものです。