2020/11/20
【後編】スナイパーライフルの魅力【RUGER PRECISION RIFLE “RPR”】
遠距離のターゲットを1発で仕留めることのできるスナイパーライフル。しかしそれなりの精度を持ったボルトアクションライフルと性能の高いスコープを揃えるとなると、最低でも5000ドル以上は覚悟する必要がある。そこで今回ご紹介するのは、ルガー ファイアアームズ社のライフル、RUGER PRECISION RIFLE “RPR”。
この高性能かつ画期的なスナイパーライフルを通じて、スナイパーライフルと長距離狙撃についてレポートしていこう。
※このレポートは月刊アームズマガジン2018年9月号に掲載されたものを再編集したものです
狙撃で最適なカートリッジとは?
RPRの完成度が窺い知れたところで、ひとつ疑問が浮かぶ。
ロングレンジスナイピングに最適な口径とは?
それが分かれば、RPRの実力をさらに引き出すことができるだろう。だが、この深遠なる質問に答えるには、それこそ1冊の本を著す覚悟が必要になってくる。.338 ラプアマグナム、.300 Win Mag、.50 BMG、.408CheyTacといった強力なカートリッジが思い浮かぶが、価格などの面に阻まれてしまい、我々一般シューターにとっては夢の口径/ライフルたちとなっている。
そこでクローズアップされるのが、今回のRPRでもチョイスが可能な、6.5mmクリードモアと.308ウィンチェスター(7.62mm×51)というショートストロークボルトアクション口径のカートリッジたちである。
では、ここでSWATチームのスナイパー、ジェイソン・デイヴィス氏に語っていただこう。彼はさまざまな銃器に対して造詣が深く、以前のレポートで「1911 VS Glock」の比較でも詳しい解説をしてくれた。
今回も、彼に分かりやすく説明していただこう。
6.5mm Creedmoor vs. .308 Win
「6.5クリードモア口径は、2007年にホーナディ社からリリースされたロングレンジターゲット競技用のカートリッジなんだ。.308Winのケースをネックダウンして、130-140グレインの.264インチ(6.72mm)弾頭を、約2,800-3,000fps(フィート/秒)で飛ばすというのが基本だね。この口径の長所は、ショートアクションのライフルから撃ち出せるにもかかわらず、その弾道はフラットで横風にも強く、リコイルがマイルド、となんだか悪いところがない。.308Winのデータと比べてみると一目瞭然だ」
- 各距離における弾頭の落差(インチ)
※100 ヤードでゼロインした際のデータ
「これは100ヤードでゼロインした6.5クリードモアの130グレイン弾頭は、200ヤードでは3.98インチ(10.1cm)下に着弾するというのを表している。.308Winだと4.93インチ(12.5cm)下だ。距離が遠くなれば遠くなるほど、その差は増していく。この落
差をスコープのエレベーションでアジャストするのだが、.308Winのほうは、よりたくさん修正しなければならないことになる。フラットな弾道を持っていたほうが、ロングレンジでのアジャストもより楽というのがわかるね」
- 各距離における弾速(fps)
- 各距離における弾頭の残存エネルギー(ft・lbf)
「弾頭の持つスピードやエネルギーにも興味深いものがある。ここから分かるのは、6.5mm弾頭は常に.308より200fps以上速いスピードで飛び、弾頭エネルギーでは500ヤードを過ぎたあたりから、6.5mmのほうがエネルギー量で逆転してその幅を広げていくということだ。
つまり、弾道学上では600ヤード以上の距離なら6.5クリードモアのほうが.308Winより優れた性能を持っている、ということなんだ。これは実際に2つの口径のライフルを並べて撃ってみてもわかる。.308のほうは弾頭が重い分リコイルもキツイ。6.5は弾頭が軽いだけでなく、銃口初速が高い分マズルブレーキの効きもいいので、そのリコイルはマイルドなんだ。それでも800ヤード先の18インチプレートを撃つと、明らかに到達速度が速く感じるし、プレートの揺れも大きいのがわかる。
昨年のUSミリタリーのテストでも、6.5クリードモアの優秀性が取り上げられたというし、今後どんどんポピュラーになっていくのは間違いないと思う」
カートリッジは数多くあるので、最強は何か、と言われれば何とも言えなくなるが、今この瞬間、RPRに最適なカートリッジは6.5クリードモアであるようだ。
このRPRのオーナーは競技目的ではなく、タクティカルスナイパーとしてこのスコープを選んでいる。6.5クリードモア口径の大ファンだ
まとめ
ルガー社のRPRを通じて、スナイパーライフルの魅力をレポートさせていただいたが、いかがだったであろうか。少なくとも、RPRの魅力は充分伝わったと思う。
箱出しの状態で1,000ヤード以上を狙えるファクトリーボルトアクションというのはかなりすごい。それも本体は1,000ドルちょっとで買えてしまうのだ。とにかく手に入れて、ロングレンジシューティングの醍醐味を味わうには最適の1挺かもしれない。
ジェイソンいわく、「ピストルグリップにストレートのストック、ARを撃っているようでまったく違和感がないな」とのこと
100ヤード、PRIME社製130グレインHPBTでのベストグルーピング。0.75MOAだ。驚きの精度が充分に伝わってくる
Text & Photos: Hiro Soga
この記事は月刊アームズマガジン2018年9月号 P.68~75より抜粋・再編集したものです。