2020/06/22
稀代の天才ガンスミス、クラレンス・レイの世界
クラレンス・レイ(Clarence Lai)――彼は“世界でもっとも美しい”エアガンのカスタムを創造するアーティストにして、IPSC競技を世界に広める人物だ。彼が手がけている圧倒的なアートワークの数々をご紹介しよう。
自分の銃をカスタムしたくなる、という点において、実銃とトイガンに違いはない。実銃と同じようにさまざまなカスタムが行なえるトイガンだが、カスタムパーツで自分の望むアイテムがないこともある。ましてや、自分の好きな銃をモデル化されていない場合もある。
その壁にぶち当たったとき、30年前、ある一人の男は思った――ならば、自分でつくってしまおう。その人物の名は、クラレンス・ライ。後に、エアソフトIPSCを世界に広めることにもなる人物だ。
その昔、クラレンスは日本の雑誌を読んで(正確には、日本語は読めないので写真を見ていた)、レースガンを知った。この頃、まだレースガンのトイガンはなかった。そこでMGCのフィクスドスライドのトイガンをベースに自分でカスタムモデルを作り上げたのは始まりだ。
このとき、彼は競技のルールすら知らずに、製作してしまった。そのため、彼はアメリカから雑誌を取り寄せてルールを学び、さらにフィリピンで実銃の修行に赴いた。さまざまな努力が実を結び、彼のシューティングマッチ(IPSC)は徐々に知られるようになったのである。
そんな彼が、もっとも得意とするカスタムLIMCATのオープンガンだ。東京マルイのハイキャパを心臓部として、フレームやグリップ、スコープマウントはインフィニティのモノを使用。硬派な銃が好まれる男の世界にスワロフスキーのクリスタルをあしらったこの銃は、多くの人に受け入れられクラレンスの一つのスタイルとして確立された。ただ美しく派手なだけでなく、グリップした時に手に馴染むように埋め込まれており、ほかにはないフィーリングを生んでいる。
こちらは、クラレンスの大好きなTVシリーズ『マイアミ・バイス』に登場するTiKi。グリップはセラコートを施したサンドペーパー。東京マルイのハイキャパのメカを使用し、サイトがスライドやバレルに刻まれているインフィニティの独特のスタイルを見事に再現。ゴールドとシルバーのツートンがなんとも美しい。
クラレンスの夫婦のペアガン。左が奥さんのカトリーヌのもの。カトリーヌは細くて大きな手。特に親指の付け根の骨が人よりも大きく、通常の銃だとそれが当たって長時間射撃ができない。その部分を削り、カトリーヌの手に合わせて作られている愛情たっぷりの銃である。カトリーヌのアイデアからシルバーベースに少しだけ赤を配置したデザインで、クラレンスのガンはそれに対して黒をアクセントにしている。ふたりともIPSCのオープンディビジョンに参加している。
もちろん、彼の作品はハンドガンに収まらない。次回は、クラレンスが作り出したカスタムガンシリーズについても触れていこう。
Text & Photos: 櫻井朋成
この記事は月刊アームズマガジン2020年7月号 P.142~149よりウェブ用に再編集したものです。
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