2019/12/11
SIG SAUERの進化を辿る 〜MCX vs SG551A1〜
世界でも有数な銃器メーカーであるSIG SAUER。実はアサルトライフルとハンドガンを製造するメーカーはSIG SAUERを含めて数社しかなく、その製品群は各メーカーの銃器開発に多大な影響を与えている。ここでは「SIG SAUERの進化を辿る」と題して最新モデルとクラシックモデルとの比較を通してSIG SAUERの銃器の特徴を探ってみた。
MCXには米陸軍特殊部隊デルタフォースからの助言が多く採用されている。デルタフォースは以前から折りたたみストック、10インチ銃身、サプレッサー使用のコンパクトカービンを求めていた。そこでSIGのSIG552が一時使用されたが、サプレッサー装着時にチャージングハンドルが外れる(ボルトキャリアーの後退スピードが上昇したために起こる弊害である)問題が起こり使用が停止された。この時、SIGはデルタフォースからのリクエストによりSIG552をよりM4に近い操作性としたSIG556を開発しているが、完成前にH&KがHK416を開発した。
SIG550シリーズとMCXシリーズはまったく異なる材質、作動方式を持つ。MCXのハンドガード部分はアッパーレシーバーと結合されており、バレルに余計なストレスを与えないフリーフローティングデザインとなっている。
M4カービンからの影響を大きく受けているMCXに対し、SIG550シリーズはAKからの影響を受けている。SIG551A1におけるチャージングハンドルの位置、プレス製レシーバー等その特徴が見てわかるだろう。
SIG550シリーズにはないフィーチャーとして、高いモジュラリティを持つMCXシリーズではストック基部がピカティニーレールになっており、形状の異なるストックを付け替えることができる。
MCXはM4カービンの利点、扱いやすさや豊富なアクセサリーをそのままに、M4カービンが苦手とする短銃身とサプレッサーの組み合わせでのフルオート発射を解決している。さらにストックの選択が自由にでき、サイズや形状など様々なスタイルを選べる。MCXは他社が提供してきたM16 / M4のアップデートモデルではなく、M16 / M4にはない可能性を持った完全新規デザインのカービンである。
【アームズマガジンウェブ編集部レビュー】
時代と共に移り変わる用兵思想や、軍隊に求められる役割に対応すべく進化していく銃器の歴史。SIG SAUERだけで比べてみても、新旧間にはとても大きな隔たりがあるのがわかる。また、開発環境の豊かさや特殊部隊などのユーザーからのフィードバックが、更にその魅力を高めているに違いない。
Text&Photo:Shin
編集部レビュー:アームズマガジンウェブ編集部
この記事は月刊アームズマガジン2020年1月号 P.38-41より抜粋・再編集したものです。