2018/08/21
FN Herstal Shooting Party Vol.1 リアルガン製品レビュー 【2016年11月号掲載】
FN Herstal 現行ラインアップ一気撃ち第1弾!
127年もの歴史を持つベルギーのFNハースタル。この地を訪れ、口径5mmから.50口径までの現行ラインアップを一気撃ち(動画はこちら)!第1弾は機関銃を中心に紹介していく!
FNハースタルの射撃場は、本社工場のあるハースタルの街から45分ほど車で走った所にある。FNHの弾を製造する工場と、軍の施設とが隣接しているエリアの一角を撮影のために貸しきりにしてくれた。そこで迎えてくれたFNHの銃と弾薬たち。「今日は思う存分射撃を味わってもらいたい」最高のおもてなしではないか!?
ベルギーのメーカーFNハースタル(FNH)。もともと国営企業であり、ヨーロッパでも屈指の規模を持つ。何より信頼の高さは抜群で、第一次大戦から使用されている銃が現在もラインアップに(もちろん改良は加えられてはいるが)あるほどだ。FNHの製品を使用しているのはヨーロッパ各国軍をはじめ、アメリカ軍。さらには自衛隊でも採用している。FNHに関して、これ以上語らなくても読者のみなさんはよく知っていることだろう。信頼の銃を作るなかモダンなモデルも製作し、新製品は毎度話題になる。未来的で、SF映画のバトルシップのようなブルパップライフルF2000、ボディーアーマーを貫くために開発されたカートリッジを使用するP90、そして特殊部隊向けに開発されたSCARなど。
そのSCARが発表された後、いち早く試射をしようとFNHにコンタクトをとり、本拠地であるリエージュに乗り込む構えでいた。しかし当時は一切の撮影、取材がシャットアウト。FNアメリカ(FNA)とは方針がまるで違う。理由の1つには、FNHがヨーロッパ国内では民間向けに一切銃を提供しない姿勢を保っていることがある。時は過ぎ、あれから3年ほど経ってようやく撮影OKの連絡をもらった。ところが、撮影日が近づくとなんとFNHが大規模ストライキに入ってしまった。取材の機会を得られないままさらに時が過ぎた。
イベント会場でFNHブースを見つける度、あいさつ代わりに撮影を申し込んでいた。正直あきらめというか、忘れかけていたころになんと撮影の許可が下りた! せっかくの機会だがかつてのSCARのような最新モデル、目玉になるモデルは現在ないため、時機を逸してしまった感はある。しかし、ようやくかなったFNH訪問だ。たっぷり堪能することにした。
ベルギーのリエージュといえば、かつてはあちこちに銃の工房があった都市だ。リエージュで作られるバレルは世界一の品質と称えられてもいた。現在ではFNH以外ではLebeau-Courally(ルボー・クォーラリー)が残るくらいになってしまった。ただ、西ヨーロッパの銃の中心地だったこともあって、現在でも高い技術を教えるガンスミス・スクールがある。フランスにもサンテチエンヌにスクールがあるが、レベルはリエージュの方が断然高く、多くのフランス人はリエージュを選んでいる。最終学年では自分で設計した銃を金属の塊からネジ1本まで自らの手で作り上げて卒業する。そんな土壌の中にFNHがある。1889年ベルギーはマウザーライフルを自国で生産するためにこのリエージュの銃工房のいくつかを集めて軍のために生産を開始した。これがFNHの始まりだ。127年の歴史がある。今回射撃を行なったのはFNHの拠点から45分ほど車で移動した所にある、FNHの弾薬工場に併設された射撃場だ。FNHは銃だけでなく自ら弾薬の開発、製造も行なっている。そういった環境にいたからこそ、5.7×28mmなど特殊弾薬を使用するP90が生まれたといえよう。この射撃場を挟んで軍の基地もあり、施設の一部は軍にも開放している。そのためレンジの最大長は1,200mもある。また製品テストのための射撃では、人の手を使わず、機械によって射撃を続けるシステムまで用意されている。今回その敷地内にある50mのタクティカルシューティングレンジを使用した。オフィスで撮影準備を整えてレンジに移動する。そこにはずらりと並べられたFNHの現行ラインアップが、小さい口径は5mmから最大は.50口径まで並んでいる。今日はこれを全部撃ってもらおうというのだ。8年かけてここに来た。いつも展示されている銃を眺めるだけだったが、いままで眺めていた銃のほとんどを射撃できるということで、自然とアドレナリンが放出された。この日は8月の中旬ながら最低気温が14℃、最高気温も16℃までしか上がらないという寒空で、しかも午後からは豪雨という予報のなかで射撃が始まった。
第1弾はなかなか射撃の機会の得られないマシンガン.50口径のM2、そしてMAGといった暴動鎮圧で世界も注目するLess Lethal Weapons(レス・リーサル・ウエポン・低致死性武器)を紹介する。
FN M2HB-QCB Machine Gun
DATA
- 口径:.50Cal(12.7×99mmNATO)
- 全長:1,656mm
- バレル長:1,143mm
- 重量:38.150kg
- バレル重量:13kg
- 有効射程距離:2,000m
- 発射サイクル:485~635発/分
ジョン・ブローニングが第一次大戦末期に設計し、第二次大戦から現在まで80余年も世界中で使用されている機関銃、それがM2だ。戦車などの車輌、ヘリなどの航空機、艦船にも搭載されている。まさに陸海空で使用されているもっともポピュラーな重機関銃といえよう。このブローニングM2を改良して、容易にバレル交換を可能にしたシステムQCBを持つ、もっとも信頼できるM2がこのFN M2HB-QCBというわけだ。
従来のM2はバレル交換の際に、バレル後端と本体側の間に一定のスペースをとらなければいけない。これを間違えると正確に作動しないのだ。以前まで、バレルを交換する度にこのギャップをきちんと合わせなければいけなかったためにバレル交換に時間がかかった。バレルの交換は、アサルトライフルと違い基地内のガンスミスが行なうわけではない。最前線で、マガジンを交換するかのように頻繁に行なわれる作業だ。そのため交戦中のバレル交換も十分にあり得る。
想像してみよう。自分がバレル交換係だとして、敵の銃弾が頭をかすめるなかでバレルを交換しなければいけない。自分の身をさらすのが数十秒か数分か…このQCBシステムは最新モデルだけでなく、従来のモデルにもキットを交換することで迅速なバレル交換が可能になる。
今回実際に射撃したのだが、恥ずかしながら知識不足でセミオートマチックができるのを知らなかった。正確にはセミオートではなくシングルショットになる。シングルショットモードを設定すると射撃の後ボルトが後退したところでブロックされる。次の射撃をするときにそのロックを開放してやると、ボルトが前進し射撃可能となる。フルオートはこのロック機能を解除してやるというやり方だ。M2シリーズには用途に合わせてグリップなどにバリエーションがある。航空機搭載型などは、銃本体を操作するのではなく、操縦席のような離れたところから操作するものも多い。今回射撃したのはそのもっとも基本となるベーシックなスタイルだ。専用のトライポッドに乗せられ、あらかじめ照準を合わせてある状態での射撃なので、あぐらをかいてトリガーボタンを押すだけ。もう1つ大事なのは弾薬もFNHで製造している点だ。.50口径の弾薬を見ても一般的なFMJ、トレーサー(曳光弾)、徹甲弾、徹甲弾トレーサー、徹甲焼夷弾、徹甲焼夷弾トレーサー、徹甲焼夷炸裂弾そして訓練用のブランクと8種類に及ぶ。今回射撃したのは、徹甲焼夷炸裂弾と5発ごとに徹甲焼夷弾トレーサーという組み合わせで1ケース(100発)を撃ち込んだ。.50口径にもなると1発が高価だ。それも徹甲焼夷炸裂弾となると1発1,000円どころではない…。
しっかりとトライポッドに固定されているので、撃つ側はリコイルをコントロールすることもなくトリガーを押すだけの作業だ。しかし、その衝撃は腹の底に響く。さらに銃をコントロールする必要がないから着弾点を注視していられる。土を盛り
上げただけなので派手なアクションはないものの、それでもそのインパクトは破壊力を物語る大きな土煙から見ることができた。
バレルは300発ごとに交換することを推奨している。これは冷却するためでバレルの寿命ではない。バレルが熱した状態では、作動にトラブルが起こるわけでなく着弾点が変わってしまう。最良の状態を保つには300発ごとに交換、冷却をすることが推奨されるというわけだ。バレル自体の寿命は通常のクロームメッキバレルが10,000発、CHRA(腐食と熱に対する特殊加工したアロイ)バレルで18,000発とされている。
M2のコックピット射撃の操作系が集まっている。シングルショットはトリガーを押して射撃したら、ボルトリリースラッチを押すことでボルトが前進、再度射撃できる。射撃の度にラッチを押す作業が必要なのでセミオートではなくシングルショットと呼ぶ
フルオートにするにはボルトリリースラッチを押しながらバッファ・スレーブを回転させ、ラッチを押し込んだ状態で固定する。これでトリガーを押している間射撃ができるフルオートとなる。簡単に切り替えるセレクターがあるわけではない
①
②
③
QCB(クィック・チェンジ・バレル)とは、FNHのM2だけが持つシステムだ。従来のバレル交換では、バレルによるショートリコイルの関係上、正確なギャップを確保しなければならなかった。交換には熟練を要する上に時間がかかる。FNHではコンバージョンキットも用意しているので、従来のM2シリーズならば基本的に交換することも可能だ。自衛隊もこのシステムを導入している。①カバーを開け、ロックを起こす。②バレルを射手から見て時計回りにわずかに回すだけで外れる。たったこれだけ。取り付けはその逆だ。③接合部分のラグ
弾の装填はカバーを開けて定位置に置きカバーを閉めるだけ
今回使用した弾。弾頭先端のカラーが黄色と銀色のものは徹甲焼夷炸裂弾。インパクトと同時に高熱を噴射してターゲットの装甲に穴を開けた上で爆発する。赤と銀色の徹甲焼夷炸裂弾のトレーサーが5発ごとに配置されている
すでにターゲットに合わせて固定されているため、あぐらをかいてトリガーを押せば射撃できる。ターゲットといっても土を盛り上げた丘なのだが、そこから面白いように土煙が上がる。ふと撃たれる側を想像し、この銃の威力の恐ろしさを感じた
FN MAG Machine Gun
DATA
- 口径:7.62×51mm NATO
- 全長:1,260mm
- バレル長:630mm
- 重量:11.8kg
- バレル重量:3.050kg
- 発射サイクル:650~1,000発/分
アメリカ軍のM240、英国軍のL7A2 GPMGなど、これまた世界各国で採用されている汎用機関銃。1950年代に大戦中のドイツMG42やMG34などを参考に開発された。口径は7.62×51mm。
ヘビーバレルを持ち、MINIMI 7.62とは違った運用方法で用いられる。おもしろいことに、同じ口径でありながら射撃音がまったく違う。MAGの方が太く、映画で見られる機関銃の音に近い。このMAGという名称はフランス語の汎用機関銃を意味する“Mitrailleused'Appui General”の頭文字からとられている。
バイポッドで射撃すると非常に安定しており、正確にターゲットを捉えられる。特筆すべきはバレル交換が容易なことだ。前述したM2のバレル交換システムは、おそらくこのMAGと同様のコンセプトで開発されているのだろう。ほんの数秒で交換できる。
装填方法
コッキングレバーを引く
カバーを開ける
所定の位置に弾を置く
カバーを閉じる。これだけだ。当然ながら戦闘中に複雑な工程で弾の装填などしていられない
コッキングレバーのある右側。カバーにはピカティニーレールがあり、光学機器を搭載することも可能
ガスアジャスター。ここで発射サイクルを調整できる
フラッシュハイダーは英国のFAL、L1A1と同様のロングタイプ
標準のリアサイトは立ち上げた状態で800~1,800mを狙うことができる
倒した状態だとタンジェント式で200~800mをカバーする
樹脂製のピストルグリップ
バレルの交換。バレルロッキングラッチを押す
バレルロッキングラッチを押しながらバレルを45°回転させる
バレルが外れる。M2 QCBのシステムと同様になれていなくとも10秒とかからない
バレルのロッキングラグとハンド
バレルとガスアジャスターが一緒に外れる。そのためガスポートにも気をつける必要がある
弾薬ケースには400発の7.62mmが入っている。4発ごとにトレーサーが出る組み合わせだった
筆者の射撃風景。トレーサーを捉えた! 今回の射撃でもっとも楽しかった。射撃音、身体に伝わる衝撃、リコイルにコントロール性。扱いやすくフルオート専用のマシンガンだけあって、ターゲットの舞い上がる土煙が爽快な気分にしてくれた。8月で14℃という曇り空が一気に晴れわったったような感覚になった
FN40GL & FN FCU
DATA
FN40GL-S
- 口径:40mmLV
- 全長:685mm
FN FCU
- 重量:528g
- 有効レンジ:対人1,000m / NATOターゲット1,500m
FN SCARにあわせて開発されたグレネードランチャーがFN40GL-Sだ。グリップ付きストックに装着するとスタンドアローンで使用することもできる。グレネードランチャーは40mm口径がスタンダードで、発射速度も遅く正確な射撃がなかなか難しい。そこでFNではFCU(ファイア・コントロール・ユニット)をリリースした。
ターゲットまでの距離をまず測定する。ディスプレイを覗いてレティクルをターゲットにあわせる。グリップ脇に取り付けたボタンを押してターゲットを確定させる。そうするとレンジファインダーが距離を測定し、それと同時に標高、気圧、気温などから計算された結果がスクリーンに表示される。小型なスクリーンだが、覗いてみるとみるべきレティクルはまだ下にある(銃口が下を向いている)のがわかるように矢印が下を向いている。それを追いかけてGL40を上向きにしていくと十字のレティクルが現れる。そこに狙いをつけてトリガーを引く。グレネードは発射され狙った位置に着弾する。
展示会で散々見てきたシステムだが実際に撃ってみると操作は簡単で正確に操作できる。FCUが優れていると頭でわかっていても、やはり実際に射撃するのが理解へのいちばんの近道だと痛感した瞬間でもあった。
グレネードランチャーは銃をかなり傾けるため、これが射撃姿勢になる
SCAR Lに取り付けた状態。グリップのあるHK416用グレネードランチャーに比べて、トリガーの操作を通常のグリップから行なえるため操作性が高い。また通常の射撃の際も撃ちやすい
展示会で何度も手にしているFCUだが、実際に操作してようやく理解できた。サイト(左上)を覗いてターゲットにあわせグリップ脇のボタンを押すと距離が測定される。ほぼ同時に照準を計算した結果がディスプレイに表示される。ディスプレイにあるべき十字のレティクルが下向きの矢印に変わっていた。レティクルが下にあるという意味だ。レティクルを探すためグレネードランチャーを上に向けていく。すると十字のレティクルが見えた。これにターゲットをあわせてトリガーを引くと狙ったところに着弾する。写真はレンジファインダーで距離を測定した所。ディスプレイに距離が表示されている
射撃が終わったらランチャーロック解除ボタンを押して前に押し出す。左右どちらにでも向けることが可能
次のグレネードを装填する
ランチャーをカチッというところまで手元に引き戻して射撃体勢に
FN303 Less Lethal System
FN 303 Less Lethal System DATA
- 口径:18mm
- 全長:745mm
- 装弾数:15発
- 重量:2.9kg
- 使用ガス:圧縮空気
- 有効射程距離:0-50m
FN 303 P Less Lethal System DATA
- 口径:18mm
- 全長:290mm
- 装弾数:7発
- 重量:1.23kg
- 使用ガス:CO2
- 有効射程距離:0-25m
レス・リーサル。『リーサル・ウェポン』のタイトルにあるリーサルとは、凶暴、危険なという意味だ。レス・リーサルとはリーサルではないシステムのことを指す。暴動鎮圧など、相手を刺激せず、殺傷せずに無力化するための“道具” であり、FNHが出した答えがこの303システムだ。
18mm口径で、ポリマーボディにインパクトを与える蒼鉛(ビスマス)パウダーと用途に合わせてチョイスできるインクなどが入った弾を使用する。蒼鉛パウダーは相手に強烈なインパクトを与え、痛みによって動きを封じ込める。貫通はしない。インクは簡単に洗い落とせるものから専用の溶剤を使わないと簡単には落とせないもの、催涙剤が入っているものなど5種類がある。どれも鉛と違って毒性のない素材でできている。この弾をガス圧によって飛ばす。FN303では専用のボンベを本体に取り付けることができる。ピストルサイズのFN303PはマガジンにCO2のカートリッジを装填して装弾数と同じ7発の弾を撃つことができる。セミオートで、どちらもトリガーを引くことで発射でき、有効射程は50m。FN303ならば15発を撃てるうえにガスがエネルギー源なのでコストも低く有効的に思える。実際に撃ってみて実感したがよくあたる。弾の速度が遅いので目で追える。リコイルももちろんほとんどなく、扱いやすい。最近の暴動鎮圧用では40mmのグレネードランチャータイプが増えてきているが、撃つ側も、特に警察官のようにピストルの扱いさえ知っていれば簡単に操作できるのがいい。ドットサイトなどないシンプルなスタイルも実際の現場では大事なように感じた。
実弾を発射する銃器の陰で目立たない存在のレス・リーサル。しかし実際には、暴動鎮圧の現場などでの需要は高い。40mmグレネードランチャーをベースにしたものに比べ、拳銃と同様な扱いができ、それでいて効果が十分にある。弾もFNH製なので安心だ
さらにコンパクトにしたピストルタイプ。射撃時にイヤープロテクターをしないのは、それほど大きな発射音がないためだ。煙は出るがCO2なので無臭。日本の一般警察官なら拳銃よりもこちらを有効的に使えるのではと思う
ラバー製のターゲットに試射した。ゆらゆら動くターゲットに当てるのもたやすく、インパクトの度に揺れる様子から、その衝撃が想像できる。ラバーにはダメージがほとんどないのがわかるだろう
専用弾はこのように供給される。弾頭背の先端には重り代わりになる蒼鉛のパウダーがあり、その後ろにペイントやPAVA(催涙)がある
回転式マガジンには15発装填可能だ
Photo&Report Tomonari SAKURAI /櫻井朋成
Special Thanks FN HERSTAL S.A. / Anne DEVROYE / Lucien MANFREDI