2025/12/29
亜米利加ガンショー徒然日記 超番外編 イーストウッド映画ロケ地訪問記 アイオワ州

病気で約2ヵ月入院していたToshiさんは無事に退院された。現在リハビリ中で、順調に回復されておられるようだが、通常のレポートを制作できる状態までにはなっていない。本来はGun Pro WebにおけるToshiさんのラストレポートとして、いつものスタイルで銃を撮影、Toshiさんならではの視点でそれを紹介する記事を掲載したかった。しかし、残念ながらそれは叶わず、その代わりとして、Toshiさんの、“亜米利加ガンショー徒然日記”超番外編を掲載させて頂くことにした。これは以前Toshiさんが訪れていた、イーストウッド映画のロケ地(アイオワ州)についてのお話となっている。
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ラストの超番外編
読者の皆さん、ちょっとご無沙汰しました。
9月の終わりに体調を崩しまして、2ヵ月の長期に渡って入院生活を送っておりました。
その間、読者の皆さんには色々とご心配をお掛けしまして本当にすみませんでした。またWeb Editorには、代わりの記事を2本執筆して貰い、とても感謝しています。
体調のほうは、実はまだまだ本調子には程遠い状態です。けれど、せめてGun Pro Web最後の号にはご挨拶を兼ねた記事を載せたいと考えました。そこで、ガンショー日記の番外編、それも飛びっきりの超番外編というカタチはどうかと思い立ちました。
ネタはズバリ、“イーストウッド映画のロケ地訪問”です。秘蔵写真を大公開(?)です。超番外編ですから物凄く的を外しています。その点は予めご了承ください。
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2010年の夏、自分は長年住んだカリフォルニアの地を離れ、中西部のイリノイ州へ移りました。
カリフォルニアからイリノイまでは約2,100マイル。聞いただけで目が回りそうな長距離を、車で二日ほどかけて走破しました。
その旅の途中、自分はどうしても立ち寄りたい場所があったんです。
それはイリノイ州の一歩手前、アイオワ州のウインターセットという街です。その街外れにある屋根付きの橋を是非とも観に行きたかったのですね。なぜかと言えば、それが映画『マディソン郡の橋』(The Bridges of Madison County:1995:イーストウッド監督/主演 メリル・ストリープ共演)のロケに使われたあの真っ赤な橋だからです。
Web Editor補足:
木製屋根付橋(Covered Bridge)。トラス橋で1976年にアメリカ合衆国国家歴史登録財となり、1992年に改装。屋根がついている理由は、橋の構造素材を風雨や紫外線から保護し、その腐食や劣化の速度を遅くするため。
アイオワ州マディソン郡には6本の屋根付き橋が現存し。ローズマンブリッジはそのひとつ。
この映画、ご覧になりましたか?
もしかすると、硬派のイーストウッドファンの方々からは敬遠気味の作品かもしれません。何しろ“中年男女の不倫”を扱った映画ですからね。鉄砲なんか一挺も出てきません。
でも、自分は強く惹かれたのです。観るたびに涙が溢れ出ます。
ネタバレしない程度にテーマを書くと――人生は常に選択の連続で、誰しもがたまには過去を振り返り、「あの時に別の道を選んでいれば」なんてことは考えますよね。考えても仕方がないのだけど考えてしまう。
しかし、もしも若き日に夢見た選択肢が、中年をとっくに過ぎた頃になって突然目の前に現れたとしたら、果たして現在の平穏な日常を捨て去ってそれに飛び乗ることが出来るだろうか――ざっとこんなところです。ギリギリまで激しく揺れ動く心、そしてピュア過ぎる愛がもうたまらんのですよ。
加えて、この映画で自分が取り分け目を見張ったのは、イーストウッドの若々しくハツラツとした演技です。どこまでもフェミニンで優しさに溢れていて、包み込むような笑顔が本当に素晴らしい。
イーストウッドと言えば、その多くの作品、例えばマカロニウエスタンやらダーティーハリーシリーズに観られるような、無口で皮肉屋で時に粗野なデリカリーが少々足りないアウトロー的キャラクターが半ば定番化しています。それが、この作品では完全に真逆なんですよ。あまりにも心優しい。それと、繰り返しになりますが、本当にビックリするほど若々しい中年を楽しそうに演じているのです。
イーストウッドは1930年生まれなので、当時65歳。この作品の5年前に、彼を文字通りの巨匠にのし上げた『許されざる者』(Unforgiven:1992)を撮っています。その『許されざる者』のキャラよりも、そしてもっと言えば1983年の『ダーティハリー4』(Sudden Impact)のキャラハン警部よりも全然若く見えるんですよねえ。
無論、彼もアクターですから、役柄によって演技を変えるのは当然でしょう。それが出来なきゃ役者とは呼べない。ただ自分には、『マディソン郡の橋』のキャラこそがもしかするとイーストウッドの素に近いものなのではないか、そんなふうに見えたりするのです。
この映画は批評家の受けも良く、首尾よく世界中でヒットしたそうです。不倫映画がそこまで人々に受け入れられたのは、多分最後の最後まで、周りの誰も傷付けることなく、ひたすら美しいまま永遠の思い出の中だけで昇華している部分が大きいと思います。もちろん、イーストウッド監督の類まれなる技量があったればこそなのは言うまでも無い話ですが。
そんなワケで、イーストウッド絡みの銃を扱う際に、シャレでこの赤い橋を出しちゃおうと長年狙いつつ、とうとう最終号まで出しそびれちゃったんですよね。我ながら気の長い話で。
以上、超番外編のイーストウッド映画ロケ地訪問はコレにて終了です。
えっ? ホントにこれだけかって? 最後の原稿なのにこんなで済むのかって?
わかりました。もう一個、大サービスでオマケを付けましょう。
『マディソン郡の橋』の舞台となったアイオワ州ウインセットの街は、西部劇の或る超大物俳優の出身地でも知られ、生まれ育った生家が今も残されています。
その俳優とは、“デューク”(Duke)ことジョン・ウェイン(John Wayne)です。
彼は1907年にこの街で生まれ、1911年に一家でカリフォルニアへ移り住むまでの4年間をココで過ごしたんだそうです。今でも十分、内陸の田舎ですから、当時はきっと超が付くド田舎だったに違いありません。
個人的にジョン・ウェインの映画では、西部劇よりも『グリーンベレー』(The Green Berets:1968)、『マックQ』(McQ:1974)、そして『ブラニガン』(Brannigan:1975)のような現代アクション劇のほうが好みです。日曜洋画劇場で最初に『マックQ』を観た時の衝撃たるや凄かった。イングラムMAC10の肘乗せ撃ち。 ブーンの一振りで悪人たちを一網打尽。劇中、“32発を1.5秒で撃ち尽くす”なんてセリフも出てきます。マジで痺れましたねえ。一方、彼の西部劇に関しては、後期の有名処しか自分は真面目に観ていないので、そんな輩がジョン・ウェインを語るなんておこがましいにも程があるのですけどね。多分世代的に、昭和三十年代後半生まれの自分よりも、一回り或いは二回り年齢が上の映画ファンにとって、ジョン・ウェインはより親しみ深い存在だったのではないでしょうか。
彼は、熱烈な愛国主義者であり、強いアメリカを支持する典型的なタカ派で知られていたようです。『グリーンベレー』などは国策映画だったと聞きます。長身で巨漢で力強くて頼れる雰囲気のその姿に、観る側もまた強いアメリカの象徴を感じていたに違いありません。
そんな彼が、1979年の4月に行われた1978年度のアカデミー賞授賞式に、作品賞のプレゼンターとして登場した姿を自分は未だに忘れられません。アレはショックだった。ひたすら頼もしかった彼が、胃がんの闘病生活のために鶴のように痩せこけていた。映画好き少年だった自分は、深夜の中継をリアルタイムで観てました。彼はきっと、ファンとの最後のお別れをしに来たって事は、当時高校生の自分にも何となく知れました。その二か月後の1979年6月に、ジョン・ウェインは72歳でこの世を去りました。
今自分はアメリカの地に住み、ジョン・ウェインがこよなく愛したこの国を、アメリカ人として愛してやみません。どこの馬の骨とも分からない自分を受け入れてくれたこの国には感謝しかない。日本のテレビで『マックQ』をかぶりつきで観ていた頃には想像すらしなかった未来。人生の展開というのは本当に面白いと思います。と同時に、ひたすら混沌とした今の時代(まあ、いつの時代も混沌としてるのですが)にこそ、彼のような力強くてストレートなヒーローが必要なのではないか、心の拠り所となる存在をアメリカ人は求めているのではないか、そんなふうに思ったりしています。
ざっと、こんなところでしょうか。大外れの超番外編でお茶を濁して本当にごめんなさい。でも、最後の最後だからこそ、普段は出来なかった事をやり、書けなかった事を思う存分書きました。
それでは、これでお別れです。
長年のご愛顧、本当にありがとうございました。
またいつか、別の形で皆さんと再会できることを心から願っています。
ご機嫌よう、さようなら。
TOSHI
Toshiさん、14年間ありがとうございます。早く元気になっていくださいね。
Gun Pro Web Editor
Photo by Yasunari Akita
Test & Photos by Toshi
Gun Pro Web 2026年2月号
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