2025/10/16
世界最強のリボルバー マグナムリサーチ BFR 450マーリン


Text and Photos by Yasunari Akita
Gun Professionals 2019年10月号に掲載
世界最強の市販量産型リボルバーはスミス&ウェッソンのモデルS&W500といわれている。しかし、実際はちょっと違う。現在最強の市販量産型リボルバーはマグナムリサーチのBFR .450 マーリンなのだ。これこそが世界最強リボルバー、その真打だ。

市販最強のリボルバー
Desert Eagle(DE:デザートイーグル)の最新モデルをご紹介すべく、ミネソタ州ピラジャーのMagnum Research, Inc(マグナムリサーチ)を訪問したことは、2019年9月号でお伝えした通りだ。
同社は10年前にDEの国産化を始めるも、100%アメリカ製への道のりは長く、イスラエルのIWI社製と併売しつつ徐々に国産化を進めてきた。今年ようやく全パーツを国内で製造し、目標を達成した事を公表した。これにてIWIでのDE製造は終了し、大きな転換期を迎えた。
輸入代理店として数多くの製品をカタログに並べてきたマグナムリサーチでは、これまで大黒柱であるDE以外にも多くの製品を販売してきた実績がある。売れず消えた製品も沢山あったが、DEにあやかった製品名のモデルもあって、けっこう印象に残っている。
その中でも現在も生産が続き、マグナムリサーチのハイパワーハンドガンの一翼を担うのがBFRだ。BFRはBig Frame RevolverまたはBig Finest Revolverの頭文字とも言われるが、現在公式にはBiggest Finest Revolverとなっている。ちなみにハンパないパワーの弾を撃てる事から、人々の間ではBig Fucking Revolverと冗談で呼ばれる事もあるのだとか(笑)。
BFRは元々はマグナムリサーチのオリジナル製品ではなく、90年代にルガーブラックホークの設計を基にシリンダーとフレームを延長してライフル弾や.410ショットシェルを発射するコンセプトガンとしてD-Max社が開発したものが下地になっている。
2000年に製造権利をマグナムリサーチが買い取り、同社の製造管理マネージャーとなったマスターガンスミスのジム・ターティン(Jim Tertin)氏が、設計の問題点を改良して量産ベースに乗せた。
出荷が始まったのは2001年に入ってからで、ショートとロングの2種類のフレームサイズがあるが、前者は設計上の問題があり出荷が遅れ、最初に市場に登場したのはロングフレームモデルだった。口径は.45コルトと.410ショットシェル(着脱式チョークを用意).45-70、.454カスールなどからスタートし、その後すぐに現在の口径の大半を加えた。
その名が示す通りBFRのコンセプトは、大口径カートリッジを発射する高品質リボルバーというシンプルなSA(シングルアクション)リボルバーだ。SAリボルバーといえばSAAのようなカウボーイアクションが人気の中心ではあるが、高威力カートリッジの発射プラットフォームとしても高い人気を維持している。
弾をグリップ内に収めるオートでは.50AEくらいが限界だが、リボルバーならシリンダーをより長く設定してもグリップサイズに変化はなく、前のめりに重くなるのも跳ね上がりを抑える面では有効だ。
BFRはSAリボルバーの設計を昇華させ、高精度なプレシジョングレードバレルを備え、ガンスミスによりハンドフィッティングで組み上げられるシリンダーとの組み合わせで高い命中精度を引き出しており、国際メタリックシルエット競技での優勝選手がBFRで何年も続けて勝利を手にしているという。
BFR Short Cylinder Model
口径: .454Casull, .44Mag, .50AE, .500JRH, .500Linebaugh, .475Linebaugh
全長:286mm, 324mm, 349mm
銃身長:127mm(5”), 165mm(6.5”), 190.5mm(7.5”)
全高:152mm
重量:1,678g, 1,724g, 2,204g
装弾数:5発
BFR Long Cylinder Model(写真は.450マーリン 10インチバレルモデル)
口径: .30/30Win, .444Marlin, .450Marlin, .45LC/.410, .45/70Gov't., .460S&W, .500S&W
全長:381mm, 444.5mm
銃身長:190.5mm(7.5 “), 254mm(10 ”)
全高:152mm
重量:2,041g, 2,132g, 2,268g, 2,404g
.450マーリン
前述の通りBFRにはショートシリンダーとロングシリンダー、それに準じたフレームの2種類がある。全て5連発でブラッシュドステンレス仕上げのステンレス製だ。
現在ショートモデルには.44マグナム、.454カスール、.50AE、.500JRH、.475ラインバー、.500ラインバーがある。バレル長は5、6.5、7.5インチの3種類。
ロングモデルでは.30/30Win、.444マーリン、.450マーリン、.45ロングコルト/.410(ベントリブバレル)、.460S&Wマグナム、.500S&Wマグナムがあり、そしてそれらを上回る.450マーリンが頂点にある。バレル長は7.5と10インチの2種類だ。
2003年に新型Xフレームにより大型化されたModel S&W500がS&Wから鮮烈にデビューした。8-3/8インチバレルから放つ.440gr弾頭は1,635fpsに達し.44マグナムのおよそ3倍のパワーに達する2,600ft-lbsのエネルギーを生み出すという強烈なもので、市販ハンドガンの王者に君臨した。
ところがジムさんによれば.500S&Wマグナムを撃つ市販ハンドガン第1号は、モデルS&W500ではなくマグナムリサーチであったのだとか。カートリッジのスペックが公開されてすぐにBFR用シリンダーを完成させたのでS&Wよりも4ヵ月も早くハンドガンの製品化に成功していたのだ。ちょっとの差だが、マグナムリサーチの方が早かったというのは歴史的事実で、中小規模メーカーなだけに小回りが利いたという話である。
この.500S&Wマグナムの王者記録は数年維持されたのだが、ハイパワーハンドガンが大好きなジムさんは黙ってはいられなかった(笑)。.500S&Wマグナムをも上回る高威力を引き出せる可能性を持つ.450Marlin(マーリン)の存在に白羽の矢を立てたのは2005年頃だった。本来はライフル用として設計されたカートリッジだ。
.450マーリンは90年代後半にマーリンとホーナディにより開発された。ブラックパウダー時代に生まれた.45-70(または.45-70ガバメント)を近代強化したカートリッジで、全体的によく似ている。
1873年に米陸軍に採用された.45-70は後にスモークレスパウダーで改良され、性能は引き上げられた。その長いケース内容量からハンドロードすればより高威力の弾を作り出せるのだが、そのような強装弾はブラックパウダー時代の古い銃にも装填が可能であり、撃てば破損事故が危惧される。そこで現代の市販カートリッジでは内圧は最大28,000psiまでに抑えられている。
.450マーリンのケース内容量は.45-70より若干少ないが、ケース内圧は最大43,500psiまで引き上げられており、60%以上もアップしている。ケース(薬莢)は下部が太くなったベルテッドカートリッジで、高圧に耐え得る設計だ。
マーリンは1972年に発売された口径.45-70のモデル1985を下地にして、2000年にこの新型弾を使用するモデル1985Mガイドガン(レバーアクションライフル)を発表した。他社での採用例は多くないが、ブラウニングBLRレバーアクションや単発式のルガーNo.1でも使用されている。
ホーナディ製.350grフラットトップインターロック弾頭を24インチバレルから撃ち出せば初速は2,100fpsに達して3,427ft-lbsのエネルギーを生み出す。これはデンジャラスゲームと対峙するビックゲームハンター達の興味を引き付けるには十分だった。
確かに.450マーリンなら.500S&Wマグナムを上回る高エネルギーを引き出せる。S&Wもまさかこの長い弾を発射するリボルバーを送り出してくるメーカーがいるとは思っていなかっただろう。それを本当にやってしまうジムさんは流石という他ない(笑)。


