2025/06/30
KOKUSAI NEW SMITH & WESSON M29【Vintage Model-gun Collection No.12】
Vintage Model-gun Collection -No.12-
KOKUSAI
NEW SMITH & WESSON M29
(1982年)
Text & Photos by くろがね ゆう
Gun Professionals 2013年3月号に掲載
コクサイはもともとリボルバーを多く手掛ける会社だったが、1981年からそのリボルバーラインナップを一新し、大幅にレベルアップした製品群を投入、攻勢をかけた。それはモデルガンファンに衝撃を与えるもので、以後「リボルバーのコクサイ」と形容されるようになる。その大ヒットの1、2位を争う人気モデルがニューM29だった。

右:ニュー.44マグナム・カートリッジの箱。6発入りで、1,400円で別売もしていた。
諸元
メーカー:コクサイ(国際産業)
名称:ニューS&W M29(のちにシルバーのM629も発売)
主材質:耐衝撃性ABS樹脂
撃発機構:シングル/ダブルアクション
発火機構:シリンダー内前撃針
カートリッジ: スプリング式可動カートリッジ
使用火薬:平玉紙火薬または5mmキャップ火薬
全長:4in=244mm、6in=295mm、8 3/8in=355mm
重量:4in=550g、6in=600g、8 3/8in=650g
口径:.44
装弾数:6発
発売年:1982年(昭和57年)
発売当時価格:
ブラック 4in=¥8,600-、 6in=¥8,800-、8 3/8in=¥9,200-
メタル・フィニッシュ 4in=¥9,100-、6in=¥9,300-、8 3/8in=¥9,700-
ステンレス(M629) 4in=¥9,100-、6in=¥9,300-、8 3/8in=¥9,700-
(各カートリッジ6発付き)
オプション: ニュー.44マグナムカートリッジ1箱6発入り¥1,400-、パックマイヤー社オリジナル ラバーグリップ ¥7,000-、コクサイ オリジナル ラバーグリップ¥1,500-、木製グリップ ウォルナット ウレタン仕上げ ¥4,500-、ショルダーホルスター(6in、8 3/8in共用)¥5,800-
※smG規格(1977年)以前の模擬銃器(金属製モデルガン)は売買禁止。違反すると1年以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます。(2025年現在)
※1971年の第一次モデルガン法規制(改正銃刀法)以降に販売されためっきモデルガンであっても、経年変化等によって金色が大幅に取れたものは銀色と判断されて規制の対象となることがあります。その場合はクリアーイエロー等を吹きつけるなどの処置が必要です。
※全長や重量のデータはメーカー発表によるもので、実測値ではありません。また価格は発売当時のものです。
モデルガンは1977(昭和52)年12月1日に施行された第二次法規制(smG規格)によって、金属製が半減し、プラスチック主流の時代がやって来る。
プラスチックはMGCが先行し、第一次法規制の翌年の1972年にSIGSP47/8とハイパトで新しい市場を切り開いたが、他社はあまり積極的ではなかった。
しかし第二次法規制の結果、プラスチックも手掛けないと商売が成り立たないような状況になってしまった。
MGCと技術提携したウエスタンアームズ(WA)の対応は早く、1977年に六研/ CMCから国際産業/ WAに回ったSAAを完全に自社ブランドとしてリニューアルし、ヒットさせた。また1978年には一部のパーツをMGCから提供してもらうことで、ガバメントのコンバットカスタムを発売し、カスタムブームを巻き起こした。
かつてのN.G.K.(日本高級玩具組合)グループで、最初にプラスチックモデルガンに本格参入したのは、マルシンだ。1979年にPFC方式BLKシステムを完成させると、1980年には疑似ショートリコイル方式を発売。それが以後のプラスチックBLKの標準となるほどの大ヒットとなる。


やや遅れてプラスチックモデルガンに本格参入したのが国際産業だ。1979年9~10月頃にブランドをコクサイに改めると、リボルバーは金属モデルとプラスチックモデルの両タイプで発売するという、どちらのファンにもアピールするスタイルを開始。さらには1981年、ナガタ・イチローさんとアドバイザー契約を結び、MGCのPPCカスタムに対抗するようにプラスチックのM29をベースにしたオリジナルデザインのPPCカスタム、デビルとサタンを発売した。
そして1981年9~10月頃にプラスチックのハイパトを.357マグナムM28のニュー・ハイパトとして完全リニューアルする。さらには1982年2~3月頃に、これまた完全リニューアルのプラスチック製.44マグナム、ニューM29を、5~6月には新規となるプラスチック製.357マグナムM19&M66を発売し、いずれも大ヒット。コクサイのリボルバーを一気に知らしめたのだ。
それまでにも、CMCの金属製.44マグナムM29、.357マグナムM27、マルシンの金属製.357マグナムM19、MGCの金属製.357マグナムM19などがあることはあったのだが、撃っても楽しいプラスチックのリアルメカ、リアルサイズ リボルバーはなかった。
実は、今回コクサイの設計部長だった岡田節雄さんにお話を伺ったところ、正確には1979年コクサイに改めてから発売された金属製のM29からイチローさんのアドバイスを受けて、大幅リニューアルしているのだそうだ。プラスチックのM29とは基本設計が一緒。まず当時は人気のあった金属モデルで発売したということらしい。
プラスチックではM28のハイパトが先行したものの、それはイチローさんのところにあった実銃を採寸させてもらったというだけのことらしい。しかしM29とM19に関してはわざわざアメリカで実銃を購入し、採寸、型取りなどを行なったという。しかもイチローさんからいろいろとアドバイスをもらって、外観からメカニズムまでわずかの寸法にもこだわったそうだ。だから実銃グリップがほぼそのまま装着可能になっている。後に実物パックマイヤー製ラバー・グリップもM29&M629用にコクサイから発売されているほど。






何回も書いているように、シングル/ダブルアクションのモダンリボルバーは、高い精度(小さな製造公差)で製作しないとちゃんと作動しない。しかし、それでモデルガンを作ると、組立の際に大変手間取る。金型から出して、大ざっぱにバリを取って、ドロップインするだけというわけにはいかない。部品のバリや、場合によってはパーティング・ラインも正確に削り取って寸法を出し、すり合わせするように組み立てていかなければならない。時間がかかる。当然単価にはね返ってくる。
だから多くの場合は、小林太三さんがMGCでやったように、メカニズムをアレンジし、大きな公差でも作動するようにする。
コクサイはあえてリアルに挑んだ。過去にもCMCが1976年に金属モデルでM27とM29でやっているが、作動が完璧でスムースだったとは言いがたい部分もあった。発売も遅れに遅れた。そして値段も高かった。
岡田さんによると、設計はかなりシビアで、わずかゼロコンマ数mm変わっただけで動かなくなってしまう。バランスが崩れる。1つを変更すると全部やり直さなければならなかったという。もちろん製造公差もタイトだ。
発売すると大ヒットとなった。もちろんマグナム人気、「ダーティ・ハリー」人気があってのことだが、すでにM29のプラスチックは元祖MGCをはじめマルゴーと自社の前作が、金属もCMCと自社の前作があった。にもかかわらず大ヒットになった。リアル構造なのに発火性能も良く、撃って遊べる。簡単に実銃グリップも付けられ、撃って良し、飾って良し、分解して良しの3拍子そろったモデルガンになった。
大人気で、ピーク時には問屋が毎日製品を取りに来ていたという。なんと日産500挺ほどだったとか。25日計算で月産およそ12,500挺。年におよそ15万挺という計算になる。エアソフトガン時代がやって来るまで、5年くらい人気は続いたそうだ。
1つ気になったのはなぜ6インチにしたのかということだった。前作のプラスチックも金属も6.5インチだったし、MGCもCMCもマルゴーも6.5インチだった。なぜ?
調べてみると、S&W社が1955年に実銃のM29を発売したときは確かに6.5(6 1/2)インチだった。ところが、1961年に一部の仕様を改定し29-2となったあとの1979年に6 1/2インチ・バレルを止め、6インチをスタンダードにした。
つまり他社は1979年以前の発売で、コクサイのニューM29は設計が1981年だったため(フレームに1981の刻印がある)、最新仕様の29-2の1979年以降のモデルをモデルガン化していたのだ。






当時は情報が少なく、実銃リポートもそこまで突っ込んだものはなかったので、たぶん日本の多くのファンは知らなかったと思う。ボクなどコクサイの勝手なネーミングだろうと疑っていた。
最後発となるM29だけに、こだわって最新モデルにしていたのだ。知らなかった。
もう1つ話題になったのは、のちに発売されたメタルフィニッシュだ。従来のプラスチックの地肌のままのブラックモデルと、めっきによるシルバーモデル(M629)のほかに、まるでガンブルーのような色つやを再現した新仕上げが発売され、最初はメタルフィニッシュと呼ばれた。しかしシルバーもメタリックだろうということからか、あとでメタルブルーフィニッシュと変えられたものの、ボクらは長い名は煩わしいのでずっとメタルフィニッシュかメタルと呼んでいた。
メタルは火薬を使うと、キャップ火薬でも発火ガスの酸化力によって黒が飛んでしまうことから、ボクらは飾るにはメタル、撃つならブラック、派手好きはシルバーという基準で選んでいた。
コクサイのスプリング式可動カートリッジは、弾丸部分をすべて動かすのではなく、センターの軸部分だけを動かすため慣性が小さく素早く軽快に動き、ハンマーノーズの傷みも少ない上に、外観もリアルだったことから評判が良かった。
それで、飾りたいけど撃ちたいという人が多く、メタルとブラックの両方を買った人が多かった。それがまた大ヒットに輪を掛けたらしい。
このメタルは最初M28に採用されたようだ。そのあとM29、M19、M10、FN M1910、コルトポケットなどに採用されていく。というわけで、M28を取り上げるときに裏話など詳しく触れたいと思う。
M19とともに当時のコクサイの主力商品だったM29は、ガンファンのみならず、ちょっと興味のあった少年たちや大人までもが手にしたのではないかというくらい大ヒットした。「リボルバーのコクサイ」の礎はM19とM29によって作られたと言っても過言ではないだろう。モデルガン史を語る上では欠かせないモデルだ。






Text & Photos by くろがね ゆう
協力:コクサイ 岡田節雄
撮影協力:大出康博、柴田 孝
参考文献:Standard Catalog of SMITH & WESSON / Jim Supica and Richard Nahas / krause publications
Gun Professionals 2013年3月号に掲載
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