2025/05/24
Saga of Patents パテント探究 2 FN Browning Hi-Power Pistol Patents Part 1
Text by 床井雅美 Masami Tokoi
2012年 Gun Professionals Vol.2(2012年5月号)掲載

FN Browning Hi-Power Pistol
パテント研究の掲載第二回目の今回は、前回に続いてアメリカの天才銃砲発明者ジョン・M・ブラウニングがFN社と共同で開発したFNブラウニングピストルについてだ。
前回、ジョン M・ブラウニングが開発したFNモデル1910セミオートマチックピストルのパテントが、アメリカで申請されなかったらしいことを書いた。
ジョン M・ブラウニングの考案した数多くのセミオートマチックピストルについて記述した書籍の中などに、しばしばFNハイパワーピストル(FN GP:グランピザンツピストル)の原理パテントとも言うべき1927年2月22日付のアメリカ・パテント第1,618,510が掲載されていることが多い。
しかし、リポーターの見るところ、この1927年2月22日付のUSパテント1,618,510に描かれているピストルと、我々がよく知る量産型のFNハイパワーピストルの姿は、余りにもかけ離れた形をしている。
しかも、このパテントに描かれたピストルは、ストライカー方式の撃発メカニズムを備えているものだった。
ベルギーがドイツに占領されていた第二次世界大戦中の一時期、緊急避難的な処置として、FNハイパワーピストルのコピーがカナダで生産されたことがあった。
しかし、リポーターは、原理パテントの1927年2月22日付のUSパテント1,618,510以外に、量産型にごく近い形をしたピストルのパテントが必ず存在していると考えていた。
パテントリサーチの結果、やはり量産型にごく近い形と構造をもつFNハイパワーのパテントが、複数存在していることがわかった。
その中で最も重要なパテントが、1930年8月30日発効のベルギーパテント372,097だ。このパテントの申請者は、前回のFNモデル1910と同様に、ファブリック・ナショナール・デ・ゲール(FN社)で、1930年7月18日に申請された。
このパテントには、現在我々がよく知っている量産型のFNハイパワーとほとんど変わらない姿が、全体図として掲載され描かれている。
このパテントに描かれたピストルが、量産型のFN FNハイパワーとわずかに異なっているところもある。それは、描かれたピストルのスライド先端部分で、ここに装備されたバレルブッシングは、量産型と異なっている。装備されたバレルブッシングは、コルトガバメント(M1911)に装備されたものによく似た形式で、着脱式バレルブッシングになっている。
それ以外は、ハンマーの形状、スライドのブリーチ内に収納されたトリガーバーなど、ほとんど量産型そのものに近い。
この形式のFNハイパワーは、1927年から1929年にかけて、ごく限られた数量がベルギーやフランスなどの新世代軍制式ピストルトライアル向けとして生産された。パテントは、ほぼそれに符合した時期の1930年7月17日に、ベルギーのパテントオフィスに申請されている。
ベルギーで受理されたパテントとほとんど同じ内容で、同じ図面を添付したパテントが、デンマーク、オーストリアにも申請され、それぞれ、1933年5月24日付けデンマークパテント47,408、1933年12月27日付けオーストリアパテント136,089として発効している。
一方、フランスとドイツに対し、やや異なる図版が添付されて、パテントが申請され、それぞれ、1932年1月4日付けフランスパテント722,555、1934年10月3日付でドイツパテントが発効している。
我々がよく知っているFNハイパワーは、1935年から本格的な量産が始められ、その後、長く製造され続けた。
アルゼンチンのファブリカミリタル社は、ベルギーFN社からライセンスを得て、FNハイパワーを製造している。
また、ハンガリーのFEG社やトルコでは、現在もFNモデルFN HPピストルのコピー製品が製造され続けている。



Text by 床井雅美 Masami Tokoi
2012年 Gun Professionals Vol.2(2012年5月号)掲載
※当サイトで掲示している情報、文章、及び画像等の著作権は、当社及び権利を持つ情報提供者に帰属します。無断転載・複製などは著作権法違反(複製権、公衆送信権の侵害)に当たり、法令により罰せられることがございます。