2025/04/07
KOKUSAI .44 AUTO MAG MODEL 180【Vintage Model-gun Collection No.1】
Vintage Model-gun Collection -No.1-
KOKUSAI
.44 AUTO MAG MODEL 180
(1977年)
Text & Photos by くろがね ゆう
Gun Professionals Vol.1 (2012年4月号)に掲載
まだ金属モデルガンの人気が高かった時代、プラスチックモデルガンを普及させるため強烈な反動のブローバックを売り物として発売されたMGCのオートマグに対抗するるべく、国際産業がほとんど同じ価格で金属製で発売したのがこのオートマグだ。ブローバック全盛期だったが、発火させない人や金属モデルガン派の人たちからは大歓迎された。
諸元
メーカー:国際産業
名称:.44オートマグ・モデル180
主材質:亜鉛合金
発火方式:前撃針
撃発機構:シングルアクション・ハンマー、ファイアリングプレート
作動方式:手動
使用火薬:平玉紙火薬
カートリッジ:オープンタイプ
全長:31cm
重量:1.5kg
口径:.44
装 弾 数:6発
発 売 年:1977年(昭和52年)
発売当時価格:¥9,900(カートリッジ6発付き)
*モデルガンショップ・アンクルでの中古販売価格¥48,000(2012年当時)


※smG規格合格品以外は売買禁止。違反すると1年以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます。(2012年現在)
※ 1971年の第一次モデルガン法規制(改正銃刀法)以降に販売されためっきモデルガンであっても、経年変化等によって金色が大幅に取れたものは銀色と判断されて規制の対象となることがあります。その場合はクリアー・イエローを吹きつけるなどの処置が必要です。
※全長や重量のデータはメーカー発表によるもので、実測値ではではありません。また価格は発売当時のものです。
オートマグの実銃は、.357マグナム、.41マグナム、.44マグナムの口径が知られているが、もっとも有名なのが.44マグナムだろう。
ステンレスで作られ、シルバーに輝く流線型を思わせるボディ・デザインが、未来銃のような印象を与えるハンドガンだった。
今ではステンレス製でもなんら問題なく作動するが、当時はステンレス製だと「かじり」が起きて作動不良の原因になることもあったようで、オートジャムなどというありがたくないニックネームまで付けられたこともあったらしい。
実際ボクは実銃のオートマグを撃ったことはないのだが、室内レンジの待合室で離れたところから見たことがある。立派なケースに入っており、撃つためではなく、見せるために持ってきたもののようだった。とにかく銀色に光って目立つしカッコいい。性能はさておいて、惚れ込んでしまう人が多いのも理解できる美しさだった。
MGCのプラスチック製オートマグは、マグナム人気の中、1976年2月頃に発売された。映画「ダーティハリー2」(1973)が日本でも1974年に公開され、1975年からは週刊少年ジャンプで「ドーベルマン刑事」(原作:武論尊、作画:平松伸二)の連載が始まったところ。S&WのM29とスターム・ルガーのニュー・スーパー・ブラックホークが大人気だった。世界最強(当時)の弾薬.44マグナムは子供から大人まで、名前だけならみんな知っているような状態。
まだリボルバーが主流で、オートマチック好きは.44マグナムはリボルバーでしか撃てないのかという「ひけめ」のような思いを持っていた。そこへ登場したのがMGCの.44オートマグだった。しかも、タークさんが日本の専門誌で初めて実銃をリポートする2カ月も前のこと。多くの人がその存在を知らなかった。発売だけで大きなインパクトがあった。こんな銃があったのか!
当時MGCはプラスチック・モデルガンに力を入れており、モデルガン生き残りのための切り札であるプラスチック・モデルガンを普及させるため、さらなるサプライズを用意していた。新型のCVカートリッジを使ったブローバックにより「反動で銃口が6cmはね上がる」という、マグナムの迫力までも再現したものだったのだ。



つまり、プラスチック・モデルガンによる大型モデルの再現と、迫力のファイアリング&ブローバックに主眼が置かれたものだった。
確かに紙火薬モデルとしては快調で、銃口からガスも抜けるし、当時最強レベルの反動はそれだけで面白く、みなを興奮させた。
その一方で、反動が強いだけにエジェクターなどの変形が早く、ちょっとでも手入れを怠るとサビたし、汚れがひどくなれば作動不良も起きた。また、作動性と価格を重視したため、専門誌で実銃が紹介された後は、実銃との違いが多い点も指摘され始めた。
加えて、プラスチックゆえ、でかい図体の割に軽いという不満も多かった。本体は800gほどあったので、決して軽くはないのだが、見た目の大きさと手に持った時感じる重さがつり合わないのだ。それに、まだ金属モデルにも人気があった。MGCは主力をプラスチックへ移してしまっていたけれど、国際やCMC、マルシン、ハドソンなどはまだ金属モデルガンがメインだった。
そこで浮上してくるのが、オートマグの金属化だ。そうすれば、でかくて重い世界一強力なオートマチックを実感できる。それがブローバックした日には、恐ろしいほどの反動を体感できるだろうと。またリアル派は、ブローバック・モデルで省略や変更された箇所をできるだけ実銃に忠実に再現して欲しいと思った。
その声に動いたのが国際産業だ。製造の桜邦産業と販売のインターナショナル・ガンショップが合併して誕生した国際産業は、1975年から怒濤の新製品ラッシュを掛ける。金属とプラスチックの両方でモデルガン化するというのも特徴のひとつだった。
当時、国際産業で設計・製造を担当されていた岡田節雄さんによると、オートマグは国際産業の社長と六研の六人部登さんが直接、話し合って製品化が決まったらしい。岡田さんは一切タッチされていないという。






あるとき完成した金属製オートマグが、パッケージに入れられた状態で会社に届き、そのまま出荷したという。通常、原型が届き量産用の手直しをしてテスト、そして製造組み立て・出荷という手順を踏むが、オートマグに関してはまったく違ったそうだ。設計・製造・組立・パッケージングまですべて六研に依託していたらしい。
これは想像するに、MGCへの対抗意識と、需要に応えたいという思いの現れだったのではないだろうか。MGCのオートマグが爆発的に売れていたから、一刻も早く、それが全国隅々まで行き渡ってしまう前にブレーキを掛けたかったのだろう。
その上、新製品ラッシュで、1975年には金属のニュー・チーフとニュー・ハンドエジェクター、真ちゅうのルガーMk I、プラスチックのS&Wハイウエイ・パトロールマン、S&W.357コンバット・マグナム、S&W.44マグナム、金属のS&W.357コンバット・マグナム、S&W.44マグナム、金属のワルサーP38などが発売されており(さらにそれぞれ銃身長などのバリエーションがあった)、社内ではとても手が回らなかったということもあるに違いない。
国際産業のオートマグはMGCがやらなかったこと、できなかったことをすべてやろうとしていた。オール金属、ブローバック、バレル・ラッチによる簡単分解、セフティ・レバーによるセフティ・オンとオープン・ストップしたボルトのリリースなどだ。






だが、できないこともあった。ブローバックはボルトが非常に重く通常のデトネーター方式ではパワーが足りなかった。MGCのようにガス溜めを作ったCVカートリッジでなければならなかったのだ。しかも特許の問題がある。結局、デトネーターに相当する太い前撃針があり、カートリッジもブローバックのようなオープン・タイプだったが、スタンダート(手動式)として発売された。当時の記事では、近いうちにブローバックも発売するとしていたものの、結局発売されることはなかった。それでも、銃口が閉塞されていたことも手伝ってか、紙火薬5〜6粒でボルトが半分くらい動いたと言われている。
セフティは、実銃同様、上にあげるとセフティ・オン、下げるとボルト・リリースになっていたが、セフティ・オンでシアーをロックするだけだったので、ボルトは引くことができた。







ただ、六人部さん本人が設計を手掛けたのかどうかは不明。どうにも六人部さんらしくない感じがする。ボルトの形やエキストラクター、ファイアリング・プレートなどがMGCのものと良く似ている。スピード優先で、MGCのものを横に置きながら設計していったような印象を受けてしまうのだ。
1994年に初版が出版された津野瀬光男さんという人の「小火器読本」(かや書房)に.44オート・マグ、コルト・ガバメント、ワルサーP38の3種のモデルガンを設計し、国際出版(国際産業との勘違いか)に納入したという内容の記述がある。
細かな部分には首をかしげざるを得ないところもあるものの、.44オート・マグに至っては図面まで掲載されているので、大まかにはこの通りなのだろう。岡田さんの記憶違いということもある。あるいは六研からの孫請けだったか。ただ、国際出版が津野瀬さんに月刊Gun誌への執筆を依頼していたこともあるので、国際出版の紹介で手掛けることになったとも考えられる。津野瀬さんがご健在なら、直接お伺いしてみたいが……。
この金属オートマグは何ロットか製造されたものの4〜5年で廃番となる。しかしその流れはマルシンの金属オートマグへとつながっていく。やはり名銃としてのエッセンスは持っていたのだろう。
●Vintage Model-gunとは
本コーナーにおけるヴィンテージ・モデルガンは、原則的に発売されてから20年以上経過した物を対象としています。つまり現時点で1992年以前に発売されたモデルガンということになります。
Text & Photos by くろがね ゆう
協力:コクサイ 岡田節雄
撮影協力:モデルガンショップ・アンクル
Gun Professionals Vol.1 (2012年4月号)に掲載
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