エアガン

2019/08/20

模型的アプローチによるトイガンリアル仕上げ術 TR-870編

 

 トイガンに模型の塗装術を応用し、使い込まれた実銃の持つリアルさや凄みを表現する……そんなテクニックをご紹介していく本コーナー。今回は本誌連載「エアガンカスタムエンスージアスト」とのコラボ企画として、本誌ライター・IRON SIGHTが製作したカスタムレミントン870ショットガン「ウィルソンコンバット/スキャッターガンテクノロジー TR-870」を、グリーンのコーティングが特徴的な「アーマータフ(Armor-Tuff)」フィニッシュ風に塗装してみよう。

 ベースガンは東京マルイのガスショットガンM870タクティカルでガスポートの開口、サイドサドルキャリアの装着、サイトの交換などのカスタマイズを実施している。本稿では実銃ライター・SHINによる実銃考察、プロモデラー・國谷忠伸による塗装過程解説をお贈りする。

 

 

模型的アプローチによるトイガンリアル仕上げ術 TR-870編

 

ウィルソンコンバット/スキャッターガンテクノロジー TR-870

 

■ 実銃解説

 

 1950年に登場したレミントン870ショットガンは、現在に至るまで1,000万挺以上が製造されたベストセラーだ。頑丈でシンプルな構造、リーズナブルな価格という特徴を持っていたことでスポーツや狩猟、そして法執行機関・軍においてもっともスタンダードなポンプアクションショットガンとしての地位を確立したのである。

 

模型的アプローチによるトイガンリアル仕上げ術 TR-870編

 

 ショットガンは散弾銃とも呼ばれ、広範囲に散弾を撃ち出すことによる面制圧力は古くから対人用として活用され、とりわけ警察や軍の警備任務で活躍してきた。近年特殊作戦の分野では、鍵の掛かったドアの破壊をはじめ、スタングレネードや催涙ガス弾等特殊弾頭のランチャーとしての役割も果たすなど、タクティカルツールとしても運用されている。

 

模型的アプローチによるトイガンリアル仕上げ術 TR-870編

 

 特殊作戦用途でレミントン870を使うには、複数のカスタムが必要となってくる。このタクティカルショットガンのカテゴリーにおいて大きな成功を収めているのが、スキャッターガンテクノロジー(Scattergun Technologies)だ。Scatterとは英語で「まき散らす」の意味で、社名からしてタクティカルショットガンを専門としていることが分かる。同社はカスタムパーツの製造およびカスタム加工を手がけており、現在はハイエンドカスタム1911で知られるウィルソンコンバット(Wilson Combat)の傘下企業として活動の幅を広げている。ここでご紹介するTR-870は、名銃レミントン870ショットガンをベースに、タクティカルショットガンに必要なフィーチャーを追加して完成された、実戦的なカスタムショットガンなのである。

 

模型的アプローチによるトイガンリアル仕上げ術 TR-870編

 

 TR-870はバレルやレシーバー、マガジンチューブ、アクションバー等の金属部品にウィルソンコンバットによる焼付け塗装「アーマータフ」フィニッシュが施され、防錆性が向上。トリガーガードはポリマー製で、リアサイト&フロントサイト、ボルト等はツヤ消し黒のブルーイング仕上げとなっている。タクティカルフォアエンドはオプションで、600ルーメンの出力を持つシュアファイアのウェポンライトを内蔵。ブラックとグリーンのツートンカラーで、タクティカルツールらしい精悍な雰囲気が出ている。

 

 

模型的アプローチによるトイガンリアル仕上げ術 TR-870編

レシーバー左側には6発の予備弾を装着できるAridusIndustries製のサイドサドルキャリアを装備している。向きを変えて挿しているのは、異なる弾種を識別しやすくするためだ

 

模型的アプローチによるトイガンリアル仕上げ術 TR-870編

取り回しがしやすい18インチ銃身を持ち、エクステンションマガジンチューブにより装弾数は6発に増加(レミントン870の装弾数は通常4発)

 

模型的アプローチによるトイガンリアル仕上げ術 TR-870編

アーマータフで仕上げられたレシーバー部と、ツヤ消し黒のブルーイング仕上げによるボルト部のコントラスト。自己潤滑性も備えているアーマータフは、フォアグリップのスムーズな作動にも役立っている

 

 


アーマータフ・フィニッシュをスプレー塗料で表現

 

 ひととおり実銃を観察したところで、今度はTR-870のアーマータフ・フィニッシュを塗装で再現してみよう。
 塗装を手掛けるのはプロモデラー・國谷忠伸。今回はハンドガンに比べ塗装範囲が広く、アーマータフの色味が微妙なグリーンであるため、塗装には比較的色数が豊富な模型用スプレー塗料を使用した。また、実銃を知っているSHINに色のチョイスをお願いできたので、写真ではなく実際に目で見た印象に近づけることができた。

 

 

■塗装の準備

 

模型的アプローチによるトイガンリアル仕上げ術 TR-870編

今回使用した塗料各種。左から染めQのミッチャクロンマルチプライマー、GSIクレオスのMr.カラースプレー濃緑色(中島系)、Mr.スーパークリアーつや消し。マルチプライマーは塗料の食い付きをよくする下地を作るため、カラースプレーのみで塗装するより塗膜が剥がれにくくなる

 

模型的アプローチによるトイガンリアル仕上げ術 TR-870編

今回塗装するのはレシーバー、バレル、マガジンチューブ周りだ。実銃ではフォアエンドに付くアクションバーもアーマータフ仕上げとなっていたが、作動時に塗装が剥がれそうなためここは省略した。これら金属パーツは中性洗剤等で洗浄して脱脂しておく

 

模型的アプローチによるトイガンリアル仕上げ術 TR-870編

バレルにパテ盛り修正箇所があったので、表面を均すことに。削ったところが平面にならないよう、ヤスリはバレルのRに沿わせるように動かす

 

模型的アプローチによるトイガンリアル仕上げ術 TR-870編

ヤスリの仕上げをメラミンスポンジで行なってみた。バレル左右に開口されたガスポートにはカエリが出ていたので、一緒に軽くヤスリを当てている。ちなみに後で気付いたことだが、きちんと削りカスを除去しておけば塗膜で孔を塞がずに済んだのだった…

 

 

■使用塗料のチョイス

 

模型的アプローチによるトイガンリアル仕上げ術 TR-870編

実銃写真から色味の近い塗料をチョイスしてテストピースを塗装しサンプルを作った(発色が変わるので下地にブラックを吹いてある)

 

模型的アプローチによるトイガンリアル仕上げ術 TR-870編

ちょうど実銃の色味を知っているSHIN氏が編集部に来ていたので、サンプルから選んでもらったのが前記の「濃緑色」だ。その際表面の質感やオイルによる感じの変化など、実銃についていろいろ教えていただくことができた

 

 

■パーティングラインの処理

 

模型的アプローチによるトイガンリアル仕上げ術 TR-870編

全体にプライマーを吹く。透明なのでどこまで吹いたかわかるように、自分で基準位置を決めておくとよい

 

 

■スプレー塗料による塗装

 

模型的アプローチによるトイガンリアル仕上げ術 TR-870編

プライマーが乾燥したら、メインの濃緑色を塗装する。最初から厚吹きしないで、ムラを気にせず全体をサッと塗る。何度か重ね塗りをして塗膜ができてきたら、最後に垂れる寸前まで吹いて仕上げる。垂れた場合はヤスリで削って修正し、再度塗装しよう

 

模型的アプローチによるトイガンリアル仕上げ術 TR-870編

数回重ね塗りしたことで若干厚めの塗膜となり、アーマータフ・フィニッシュの雰囲気に似てきた

 

 

■ツヤの調整と仕上げ

 

模型的アプローチによるトイガンリアル仕上げ術 TR-870編

実銃は微妙な光沢感があるようなので、ラッカー系の「Mr.スーパークリアーつや消し」でツヤを整えた。当コーナーでもよく使っている同社のプレミアムトップコートに比べると、こちらの塗料は微妙にツヤが残る感じになる

 

模型的アプローチによるトイガンリアル仕上げ術 TR-870編

ガスポート周りをヤスリがけした際、削りカスが入り込んでいたようで孔が塗膜で塞がってしまった。ここは竹串でつついて開口しておいた

 

模型的アプローチによるトイガンリアル仕上げ術 TR-870編

タブレットで実銃写真を見ながら表面の光り具合を確認。色味は画面とまったく違って見えるが、今回はSHIN氏にアドバイスをいただいているので悩まないで済んだ

 

模型的アプローチによるトイガンリアル仕上げ術 TR-870編

塗装が仕上がり、ツヤと色味もいい具合に落ち着いた。このあと組み上げて完成したTR-870は先に公開したこちらの記事でくわしく解説している

 

 

WARNING!!

  • トイガンの分解や塗装など、カスタム行為はすべて自己責任の上で行なってください。
  • 本コーナーでご紹介する仕上げ術は、ある程度のトイガン分解および模型製作の経験・知識があることを前提としています。
  • トイガンの分解を行なうとメーカーやショップの保証は受けられなくなりますのでご注意ください。

 

 

実銃写真・解説/SHIN
作例製作/IRON SIGHT
塗装・解説/國谷忠伸
作例監修/毛野ブースカ、SHIN

 

 


この記事は月刊アームズマガジン2019年9月号 P.100~105より抜粋・再編集したものです。

 

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