2019/06/15
平成の時代をトイガンとアームズマガジンで振り返る
トイガン平成史
2019年5月1日をもって平成から令和へと元号が変わった。昭和の末期に盛り上がりを見せたトイガンとサバゲの文化は、31年に及んだ平成の時代に大きく発展。日本だけではなく世界中に広がり、趣味やレジャーのいちジャンルとして確立した。ここでは「トイガン平成史」と題して平成に発売されたアームズマガジンとトイガン、業界事情、さらにサバゲシーンの中から話題になったものをピックアップ。平成とともに歩んできたアームズマガジンとトイガンを振り返ってみたい。
平成元年(1989)~平成7年(1995)
電動ガンの誕生とガスブローバックガンの進化
月刊アームズマガジンは昭和から平成へと時代が変わろうとしていた1988年(昭和63年)に創刊され、1988年2月号から隔月刊で「アームズマガジン」が年間6冊、発行され始めた。1989年にはついに月刊化。この年には、アームズマガジン主催の大規模サバゲ大会「ASCS」の第1回が開催された。
1988年2月号(創刊号)
平成に変わる1年前に月刊ホビージャパン誌の別冊「GUN SMITH」シリーズから発展するかたちで創刊されたアームズマガジン。表紙にガンスミス作品が掲載されているように、ガンスミスコーナーが充実していた。
1990年11月号
1990年もASCSが開催された。参加者は200名にのぼり、最盛期(2000年初頭)には600人近くの参加者を集めた。ASCS記事の名物と言えば、参加者全員の個人写真。現在では考えられない誌面作りだ。
1990年になると“トイガンとサバイバルゲーム”のアームズマガジンカラーを強く押し出しつつも、ミリタリー関係、時事的なネタを掲載するようになる。アームズマガジンの歴史で忘れてはならない「検証シリーズ」を誌面展開したのが、1991年。業界団体を揺るがすほどのインパクトを与えた内容であった。前年の東京マルイの電動ガンFA-MASの登場とともに、1992年には記事内容もモデルガンから電動ガン、ガスブローバックハンドガンを中心にしたものにシフトしていった。1990年半ばにかけて電動ガンやガスブローバックガンの登場でトイガンブームが最高潮になった。
1991年8月号
実銃記事が充実してきた一方で、トイガンコーナーでは当時発売された「グリーンガス」への検証記事が始まった。この記事を機に業界が揺れ動き、やがてASGKとJASGが誕生することになる。
東京マルイ FA-MAS F1
BV式ガスガンによるハイパワーゲームが隆盛を極めていた1991年、モーターによってピストンをコッキングする画期的なメカを搭載した東京マルイのFAMASF1がデビューした。安定した作動と高い命中精度、扱いやすさから一気に広まり、BVガスガンは廃れた。
平成8年(1995)~平成12年(2000)
今なお作り続けられる名銃たちの誕生
1996年10月号で通巻100号を迎えたアームズマガジン。1997年には創刊10周年を迎え、ガンスミス企画や実験企画など、アームズマガジンらしい企画が展開された。
1996年10月号
通巻100号を迎えたアームズマガジン。この号の特集はアームズのテッパン企画であるM16。すでにこの号でパート5だった。
創刊10周年を迎えた1997年。この年は新製品のリリースの減少に伴い、海外レポートや「ガンスミス道場」など、独自な記事が連載される。オーストリア特殊部隊COBRA、フランス特殊部隊GIGNの本邦初公開のレポートが話題を呼んだ1998年。ASCSの開催地が菅平から本栖湖に変更された。2000年6月号からは創刊当時からの編集長であった岡崎弘之から前編集長の岩田友太へバトンタッチ。スタッフの若返りとともに、誌面構成が徐々に変化していった。
1999年1月号
1990年代後半に入り、現在も発売されているエアガンが続々発売される。中でもこの号では東京マルイの電動ガンコルトM4A1カービンがレポートされている。
2000年10月号
岡崎元編集長から岩田前編集長に交代した2000年は、表紙のイメージや特集内容が毎月変わり、試行錯誤の繰り返しだった。それを象徴するのがイラストを使用した2000年10月号。一見するとマンガ雑誌のようだが、ベトナム戦を特集した記事は非常に濃かった。
この時代は東京マルイの電動ガンM4A1カービンやガスブローバックガンM92Fミリタリー、タナカのガスブローバックガンルガーP08やペガサス式ガスガンコルトSAAなど、現在もなお人気を誇るテッパンモデルが続々と誕生した。
東京マルイ コルトM4A1カービン
ゲームフィールドでは電動ガンがメインウェポンとして定着した1998年年末にデビューした東京マルイのコルトM4A1カービン。2001年に起きた9.11事件以降のM4カービンの爆発的な人気により大ベストセラー商品となり、多くの海外製コピー商品を生み出した。数度のバージョンアップを経て現在でも電動ガン人気ナンバー1である。
タナカ コルトSAAペガサス式ガスガン
タナカのペガサス式ガスガンコルトSAAは、シリンダー内にガスタンクとガス放出バルブ、マガジンを設けるという独創的なアイディアから、ガスリボルバーの新たな常識を生み出した。コルトSAAはペガサスを搭載したガスリボルバー第1弾としてデビューした。
平成13年(2001)~平成17年(2005)
平成2回目の新製品ラッシュが到来
2001年8月号に初めてボスゲリラ&ゲリラリラ軍団が登場し、サバイバルゲームの記事が多様化していく。2001年9月11日に発生した同時多発テロ以降、時事ネタに合わせた銃器だけではなくスタイリングテキストを含めた「総バナ」的な特集記事が構成されることになる。
2001年8月号
この号のサバイバルゲーム特集でゲリラリラが初めて登場する。ボスゲリラをよく見ると、マスクに「ゲ」の文字がなく、いまよりもっとゲリラっぽかった。
2001年12月号
アフガニスタン、イラクなど、その時勢にあった内容の海外レポートを掲載。現地で活動している兵士の姿を追った。
2003年には創刊以来のB5判から、現在まで続くA4ワイドに判型が変更された。当初は男性モデルを起用した表紙だったが、12月号にて女性モデルを表紙に起用し、その路線は現在まで引き継がれている。10年以上開催されていたアームズマガジン主催のサバゲ大会「ASCS」は2004年をもっていったん休止された。この時代も東京マルイのガスブローバックガンハイキャパ5.1やエアコッキングガンVSR-10といった名銃が誕生した一方、特に2004年から2005年にかけて各社から今までエアガンでモデル化されなかったようなユニークな商品が続々リリースされ、およそ10年周期で訪れる新製品ラッシュを迎えていた。
東京マルイ VSR-10
「東京マルイ=電動ガン」というイメージが強いが、東京マルイのエアガンの原点はエアコッキングガンだ。そんな東京マルイから発売されたエアコッキングガンVSR-10は、意外にも同社初のボルトアクションライフルだった。高性能でリーズナブルなことから現在でも人気がある。
CAW リボルバーランチャー
モスカートを6発装填できるシリンダーを備え、バレルを中折れさせて装填する。トリガーを引けばシリンダーが自動的に回転して連射できる。当時発売されていたモスカートBBシャワーを装填すれば合計990発のBB弾が発射できた。
平成18年(2006)~平成22年(2010)
ラインアップの多様化と改正銃刀法の施行
この時代の一大事件は、なんといっても高速道路上で起きた違法エアガンによる銃撃事件に端を発したエアガン規制強化の流れだろう。トイガン業界が一致団結し、「トイガン文化を守る会」を発足し、安全なトイガン文化の認知に努めた。改正銃刀法が施行された2007年。業界の働きかけもあって、トイガン文化が根絶やしになってしまうような規制にはならなかった。
2006年6月号
2005年に高速道路上で起きた違法エアガンによる銃撃事件に端を発したエアガン規制強化の流れを受けて、2007年2月に改正銃刀法が施行されることになった。改正銃刀法施行前この号では、「0.989ジュール」という現行のパワー規制についての実験検証記事が掲載されている。
6月号の特集では「アジアトイガン紀行」と題して、香港、台湾のトイガンメーカーへの直撃取材を敢行。2008年には創刊20周年を迎えた。特集「ハンドガンドレスアップ大作戦」「ガスブローバック大作戦」など、製品の紹介だけには留まらず、カスタムやサバゲなどその遊び方まで紹介する全方位的な内容を追求していく。
東京マルイからエポックメイキングな新製品、次世代電動ガンSOPMOD M4が発売された2009年。「Vickers Tactical」「Magpul Dynamics」のレポートなど、現在まで続きタクティカルトレーニングブームの礎となるレポートを掲載した。
2009年10月号
2009年10月号では、クリス・コスタがインストラクターを務めていたマグプルダイナミクスのトレーニングシーンをいち早くレポート。この後、日本で空前のタクトレブームが起こった。
東京マルイ 次世代電動ガンSOPMOD M4
電動ガンはエアガンとして理想的なメカニズムだったが、ガスブローバックガンのように実銃のようなリコイルフィーリングが味わえないのが最大のデメリットだった。そんなデメリットを打ち破るべく、東京マルイは撃つたびにリコイルショックを味わえる次世代電動ガンを開発。電動ガンの新たな世界を切り開いた。
平成23年(2011)~平成27年(2015)
海外メーカーの台頭とモデルガン人気の再来
各地にサバイバルゲーム専用フィールドができ始め、サバイバルゲームが世間的に認知されるようになってきたのは、アームズマガジンが通巻300号を迎えた2012年前後。サバイバルゲーム人気とともに、女性サバイバルゲーマーが誌面を賑わせるようになる。
2011年1月号
続々とリリースされる海外メーカー製のトイガンだけに絞って紹介していく「IMPORT TOYGUN PICKUP」コーナーが始まった
2015年頃から急速に海外メーカー製エアガンやレプリカ装備が浸透し始め、サバイバルゲーム人気に拍車をかけた。東京マルイの次世代電動ガンを筆頭にした外観だけではなく撃ち応えもリアルさを追求した高級路線の電動ガンが登場する一方、割り切った作りと比較的入手しやすい価格帯を目指した「スポーツライン」と呼ばれる電動ガンが海外メーカーを中心に登場し始めた。
国内ではモデルガン人気が再来。一時は新製品がほとんどない状態だったが、今までにない機種がモデル化されたり、発火性能にこだわったものが登場するなど、オールドユーザーだけではなく新規ユーザーの獲得にも貢献した。
タニオ・コバ GM-7.5シリーズ70
タニオ・コバ初のシリーズ70モデルガン。ポリマーのケースに真鍮のヘッドを組み合わせたポリマーイージーCPを使用する。外観のリアリティはもちろん、モデルガンとは思えないほど高い発火性能を誇っている。
ハートフォード スタールアーミーリボルバー
連発拳銃の黎明期に生まれたリボルバーをモデルガンで再現。ダブルアクションのほかに、トリガーを引いてハンマーをコックするという独特な操作のシングルアクションモードも再現している。
平成28年(2016)~平成31年(2019)
電子制御化とオリジナリティの追求
2017年、前編集長である岩田友太から現編集長である渡辺干年へとバトンタッチ。そして2018年、アームズマガジンは創刊30周年を迎えた。数多くの伝説を生んできたアームズマガジン主催のサバイバルゲーム大会ASCSは「サバゲ祭」へと名称を変えて日本のサバイバルゲームシーンをリードしていくことになる。
2018年2月号
創刊から30周年、通巻356号を迎えた2018年2月号。2018年度は創刊30周年記念イヤーとして30周年を記念したロゴが表紙に加えられた。
海外メーカーを中心に新製品が続々とリリースされる中、一部のカスタムショップが行なっていたFETを使った電動ガンの電子制御化はメーカーの市販品でも導入されるようになったことでより高性能化していく。外観にリアルさを求めるユーザーがいる一方で、実銃にはないオリジナルデザインのエアガンが支持されるようになってきた。モデルガンも各社からコンスタントに製品化され、若い世代にも受け入れられている。2017年6月に公布された「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」に伴い2019年5月1日をもって元号が平成から令和へと代わり、新たに時代へと突入した。
G&Gアーマメント ARP9
G&Gアーマメントのエアガンの中でもっとも売れた銃と言われているARP9。実銃のトレンドであるピストルキャリバーカービンスタイルの外観にMOSFETを標準装備するなど、まさにトレンドを汲み入れた1挺。
KRYTAC KRISS VECTOR
実銃メーカーのエアガンブランドが作った電動ガンとして日本でも人気があるクリスベクター。実銃メーカーがエアガンマーケットに目を向けるようになったことで、メジャーメーカーのオフィシャルライセンスドモデルが各社から発売されるようになった。
TEXT:アームズマガジン編集部
この記事は月刊アームズマガジン2019年7月号 P.94~101より抜粋・再編集したものです。