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2025/04/06

ガンエフェクトのパイオニアBIG SHOT×エランのモデルガン

 

ガンエフェクトのパイオニアBIG SHOT×エランのモデルガン

 

 実銃や空砲が使用できない日本の映画界において銃撃シーンの演出になくてはならないガンエフェクト。その第一人者であり40年以上に渡ってトップに君臨し続けるのがBIG SHOT主宰の納富貴久男である。そんな納富氏が近年プロップガンとして採用しているのがエランのモデルガンである。ここでは納富氏にBIG SHOTの誕生までの経緯とガンエフェクトに対する想い、ガンエフェクトに関わる立場から見たエランのモデルガンの特徴について語ってもらった。

 

納富貴久男
「BIG SHOT」代表。日本の映像作品に登場するプロップガンの製作およびガンエフェクトにおいて、第一人者として知られる

 

 

ガンエフェクトを始めたきかっけは?


 私の場合はガンが好きというより映画が好きでした。1960年代から1970年代にかけて製作されたアメリカン・ニューシネマの中でもサム・ペキンパーとかのガンアクション映画に影響されました。小学生低学年の頃にモデルガンを買ってもらっていてガンマニアとしての素養はありましたが映画の影響がほうが強いですね。


 アメリカン・ニューシネマの前、1960年前半までヘイズコードという規制があり、劇中で血のりをバッと出したりすることはできず、暴力的なシーンはカットされていました。1964年に公開されたドン・シーゲル監督の『殺人者たち( 原題:The Killers)』ではヘイズコードぎりぎりのところまで表現されていました。しかし、それ以降はバンバン撃たれて血しぶきを出すシーンが多くなり、そういう映画を観て感化されました。
 フランスでも1950年代に新しい映画の波(ヌーベルヴァーグ)が起きて、日本で1974年に公開されたフランス映画『アメリカの夜』という映画を作る映画という作品があったのですが、その中で小道具係が監督に銃を選ばせるシーンがあり、銃の選ばせ方、主役が手が小さいから小型の銃を選ばせるというシーンが気になりました。ガンエフェクトを始めるきっかけはこの映画かもしれませんね。


 こうして映画に影響されて映画の制作に携わろうかと思ったのですが、どういうふうにすれば映画界に入れるかということがわからなかったので、当時映画等に協力していたMGCに入ればできるのではないかと思ってMGCに入社しました。あくまでも映画ありきでした。銃が好きだったからMGCに入ったわけではありませんでした。
 入社後、MGC横浜店の店長をやることになり、そこから本格的にモデルガン業界に関わることになりました。しかし1980年代に入り横浜店がなくなり、モデルガンブームが下火になって、トイガンの主流がエアガンに切り替わろうとしていました。MGCも店舗を減らし始めたので、これはいい機会と思って映画の仕事を始めたいということで友達と始めました。


 実は大学の頃から自主映画を作り始めていて、その時の仲間が1980年代になると助監督などになり始めて、彼らから映画の仕事やってみないかと誘われ始めました。最初の作品が自主映画時代の友達からの紹介でかかわった1985年公開の『ビッグマグナム黒岩先生』でした。作品S&WはM629を使っていて、撮影中にハンマーを起こすシーンが追加されたのですが、当時の小道具さんはコクサイのM629をベースにしたハンマーが可動しない電気着火銃しか用意できなかったので、私がハンマーが可動するものを用意ましたした 劇中でM629を分解するシーンではモデルガンとばれないように本物っぽく加工したり、コルト25ポケットが出るスリーブガンを作ったりしました。


 その作品で信頼を得て、次にかかわったのが1986年公開の『キャバレー』でした。カメラテストに呼ばれて排莢するガバメントを用意したのですが、憧れた方たちを仕事できたのが嬉しかったです。カメラテストに合格して正式にこの作品にかかわることになりました。この映画については当時の月刊Gun誌で記事にしています。それから40年近く携わっていますね。

 

 

ガンエフェクトで重視していること


 「ガン」の「エフェクト」だから用意するのは銃だけではありません。日本は実銃や空砲が使えないから銃の発砲だけではなくて、受ける側の弾着も描きたかったというもの大きいですね。だから人体弾着とかずいぶん研究しました。
 当時は銃は小道具係、弾着は火薬や特殊効果を担当する会社がやったりして、特殊効果はどちらかといえば爆発がメインの仕事でした。彼らにとって人体弾着は面倒臭かったんです。当時の私は発砲と弾着を半々ぐらいの比重でやっていました。


 大きく飛躍するきっかけになったのは、1989年に製作された『クライムハンター 怒りの銃弾』でした。企画の段階から関わっていて、その時のプロデューサーさんに言われたのが、大川俊道監督とクライムハンターをやろうかと思っているけど、その前に刑事ドラマ『ベイシティ刑事』をやってほしいと言われました。『ベイシティ刑事』はそれなりに成功して、『クライムハンター』を製作することになりました。当時東映はビデオ化するには作品が少なく、Vシネマ第1弾として始まったのが『クライムハンター』でした。Vシネマがどういう方向に進むのかまったくわからない状況であんなガンアクションなのに60分で終わってしまうという、ちょっともったいないけれども、実験的なことをいろいろとやらせてもらいました。


 その次が1989年に製作された北野武初監督作品『その男、凶暴につき』でした。プロデューサーが北野武監督に『クライムハンター』を参考にみせていただいて、ドンパチがすごかったよと言ってくれていました。

 

 

2017年10月7日『アウトレイジ 最終章』で主人公・北野武が使用した金属感を残しつつ青みを強くして透徹感を持たせた「キタノブルー」仕上げの表面にしたゴールドカップナショナルマッチCODAモデル(¥214,500)

 

 

エランの銃を使い始めたきっかけ


 2012年に公開された北野武監督の『アウトレイジビヨンド』です。当時エランに元MGCの社員の方がいて、その人の紹介がきっかけでした。その時はエランの社長は全然乗り気ではなかったです。当時は協力していることを内緒にしてほしいと言っていました。

 

 

モデルガンとしてエランの魅力


 私はマニア的な視点というより小道具としてどうかという視点しかないのですが、現時点での法律の中では完成度が非常に高いと思います。個体差も少ないし箱出しで撃てるというのはスゴイと思います。あえて言えば値段が高いことですかね。でも手のかかりかたを考えれば高くないのではないでしょうか。 安いものを何挺も買うよりも満足感が得られると思います。分解して各パーツを見ると完成度の高さがわかります。当社(BIG SHOT)のスタッフが分解すると「エランさんのモデルガンは凄いね」と驚きます。

 

 

エランのプロップガンを使った役者さんからの声


 2016年に公開された『さらばあぶない刑事』の製作時にエランのプロップガンを持っていったら舘ひろしさんが「こんなにモデルガンって進歩しているんだ」とおっしゃっていました。「重さだけではなくて質感が本物っぽい、キレイですね」と。北野武監督も喜んでいらっしゃいます。エランは表面出しとかを一生懸命にやられているので、表面が平らだと反射した時にいい影響を与えます。ひけとかあるとオモチャっぽく見えちゃいますからね。「神は細部に宿る」ではないですが、細部がきちっとしているといいですね。本物が使えない分、そういうところで気を遣わないといけないというのがありますね。小道具としても映えます。精巧にできていることが表現される。当たり前ですけと作動もいいですね。ただ重量があるので撮影時に持ち運びするガンケースが重たくなりますね(笑)。

 

 

「タカカスタム」について


 1996年に公開された『あぶない刑事リターンズ』から2005年に公開された『まだまだあぶない刑事』まで旭工房の仲代さんにカスタムしてもらった5インチのガバメントカスタム(タカカスタム)を使っていました。舘ひろしさんはシンプルなものがいいということで、あまり目立たない部分でカスタムしてもらっていました。


 昨年公開された『帰ってきた あぶない刑事』の製作時にエランさんが9mm×19弾仕様を開発していて、設定でも9mmに統一してもいいんじゃないかということで、弾も多く入るし、舘ひろしさんに提案したところいいじゃんということで採用されました。舘ひろしさんには機嫌よく使っていただき、これすごいねっておっしゃってくれました。きれいにスライドストップもかかりますし、発砲ミスはなかったです。使用するにあたって調整はしますがベースがいいので動きますね。タカカスタムに求めるものとエランさんの製品の方向性がマッチしたということですかね。

 

2024年5月28日に公開された『帰ってきた あぶない刑事』の劇中で使われたものと同じタカカスタム(¥253,000)

 

2024年9月27日に公開された『Cloudクラウド』で主人公・吉井良介(菅田将暉)が手にしていたコルトM1911ミリタリー(¥217,140)

 

2025年2月28日よりDMM TVで独占配信された『幸せカナコの殺し屋生活』で主人公・のんが手にしていたコルトニューエージェント(¥242,000)

 

DMM TV独占配信中の「幸せカナコの殺し屋生活」。ガンエフェクトは、もちろんBIG SHOT。主演の、のんが愛用しているのがエランのコルトニューエージェント。個性的な銃が、主人公のキャラと見事にマッチしている ©DMM TV

 

「幸せカナコの殺し屋生活」はDMM TVで独占配信中!

 

 

聞き手:毛野ブースカ

記事協力:エラン


この記事は月刊アームズマガジン2025年5月号に掲載されたものです。

 

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