装備

2025/03/22

史実を元にシナリオを描いた特殊部隊装備系撮影会「OPERATION #EDGE」

 

史実を元にシナリオを描いた特殊部隊装備系撮影会「OPERATION #EDGE」

 

 

 「リエナクト」とは歴史を再現することを意味しており、装備系のリエナクトイベントでは過去から現代に至るまで史実上の戦争や武力衝突が幅広く再現されている。そのイベントの中でも大規模なイベントとして知られている現用装備系リエナクトイベント「HEARTROCK」(以下ハートロック)が2025年9月に開催される。

 

 日本はもちろん海外からも参加者が集まるイベントが久々に開催されるとあって現用装備系プレイヤーの間では大いに盛り上がっている。そんな中、ハートロックにおいて部隊長を務めるメンバーと運営関係者による交流会を兼ねた撮影会が行なわれた。ここではハートロックに向けての前哨戦といえる撮影会の模様を紹介する。

 

 

部隊構成

 

 今回のシナリオは、2004年12月21日にイラク国内で実施された人質救出作戦を基に描かれている。作戦に参加した部隊は、対テロ及び人質救出部隊であるアメリカ陸軍特殊部隊CAG(Combat Application Group)を中心に、陸軍レンジャー、海軍特殊部隊DG(Development Group)が火力支援に回り、空軍特殊部隊PJ(Pararescue Jumpers)が医療支援、空軍特殊部隊CCT(Combat Control Teams)が情報・監視・偵察を担った。これら混成部隊(タスクフォース)によるチームをまとめて「チョーク1」とした。
 今回の作戦に参加したアメリカ各軍の混成部隊TF(タスクフォース)は、重要人物の確保や人質救出などにおいて編成される「特定の任務を遂行するために編成されたチーム」である。撮影会の前に渡されたシナリオには、2004年当時のイラクの様子やアメリカ軍の作戦や展開状況が詳細に記載されており、それを事前に読むことで参加する作戦に対して意識を集中することができた。参加者たちは、撮影前から本作戦に向けて装備だけでなく意識レベルでの準備も進めた。

 

Photo by DOD

 

時代背景

 

 2003年3月20日早朝、大量破壊兵器保持における武装解除進展義務違反を理由に、アメリカとイギリスはバアス党政権下のイラクへ軍事介入を開始。早朝、当時のイラク大統領、サダム・フセイン一党がいるとされる民家に対し、数十発の巡航ミサイルが発射されたが殺害を確認できず失敗となる。同日、フセインはイラク国営放送にて徹底抗戦する意志を表明するも、アメリカを主体に展開された『イラクの自由作戦』は、開始から2 ヶ月以内に首都バグダットを制圧し、フセイン政権を崩壊させた。同年、12月13日にティクリート地方に潜伏していたフセインは発見され逮捕・収監された。

 

 独裁者を逮捕したことで、イラクに平和が訪れると安堵したのも束の間、2004年に入ると、フセイン政権の残存勢力や国内の混乱に乗じてアルカーイダが流入しテロ・人質事件が多発。イラク国内の治安は悪化の一途を辿った。特に、国内に展開している米英部隊の撤退や、収監されているバアス党幹部の釈放を要求する人質事件が多発し、当局は対応に追われていた。人質となったのは、諸外国から入国してきたジャーナリスト、輸送車両の警護などを行なう民間軍事会社の社員すらも標的になった。

 

Photo by DOD

 

Photo by DOD

 

混沌とした戦後

 

 イラク戦争は、アメリカ軍を主体としたイギリスなどの有志同盟によって2003年3月20日から実行され、2011年12月15日をもって終結。大きな戦闘は初期の圧倒的なアメリカの軍事力で短期間となったが、その後のテロ活動や治安の不安定化による混乱は戦闘部隊の出撃によって対応された。元アメリカ軍特殊部隊隊員たちの手記にもあるように、当時はイラク軍や政府関係者などの重要人物捕縛任務のために昼夜を問わず強襲作戦を行なっており、アメリカ軍特殊部隊史の中でも指折りの強襲作戦の出撃回数を数えた時期と言える。今回のシナリオにもあるホステージレスキュー(人質救出作戦)もこの時代は特に多かった。イラク全土に派遣されたアメリカ軍の憲兵や輸送部隊、民間の復興支援活動を行なう企業の輸送部隊やそれらを警護する民間軍事会社職員などがその標的とされた。イラク内部にいるイラク軍残党やテロリストなどは、彼らを捕捉して支配地域への空爆を阻止するための「人間の盾」や身代金や停戦条件を引き出すための捕虜や人質とするのだ。彼らを救出するためにアメリカ軍特殊部隊は軍上層部からの命令で出動をしていた。


 2003年3月に捕虜となったジェシカ・ドーン・リンチ陸軍上等兵の救出作戦のように世界に大きく発信をされた救出作戦もあるが、特殊部隊の作戦は基本的に秘匿されることが多く、その成功が大きく戦局に影響をしていることは言うまでもない。
 2003年頃の陸軍などの一般部隊のスタイリングとしては、3色の砂漠迷彩が特徴となるDCU(Desert Camouflage Uniform)とデザートブーツにナイトビジョン用アタッチメントを装着したPASGTヘルメットとウッドランドパターンのインターセプターボディアーマーを着用する姿が見られた。

 

Photo by DOD

 


 

Story

 

 数ヶ月前から行方不明になっているアメリカ人ジャーナリスト「ジェシカ」が、シリアとの国境が近い部族地域の民家に監禁されているという情報を受け、ISA(統合情報支援部隊)が解析。その結果、「ジェシカ」の可能性が高いとして、JSOCはTFを編成した。CAGチームをメインに、火力支援としてDGやRangerの隊員をアタッチし、地上からのアプローチのみの危険な任務のため、高度な医療支援としてPJ。そして、当時最新の無人偵察機RQ?4の展開と万が一に備え、ヘリで帰投できるようにCCTがCAGチームに加わった。「ジェシカ」が捕えられているとされる民家は、シリア国境付近。ヘリやガンシップを飛ばしての派手な作戦はできない。さらに夜間はシリア軍の強力なサーチライトが照射されていることから、止むなく昼間に救出作戦を実行することとなった。

 

 

 「スピード・サプライズ・バイオレンスアクション」を強襲の基本とするアメリカ軍特殊部隊の素早い部隊展開と攻撃により、敵部隊との交戦時に部隊から負傷者1名(軽傷)を出しながらも、民家を制圧。デルタとレンジャー、DGとPJとCCTそれぞれの部隊がグループとなり、くまなく家宅捜索を行なったが「ジェシカ」の姿を確認することができなかった。

 

 

 

12月21日(作戦決行日)

 

 基地から目的地前まで車両移動を行ない、途中で降車し、目的の民家まで徒歩で移動することとなった。徒歩で移動中、目標地の数百m手前で敵からの発砲を受けた。対応こそするものの、人質の現在地が不明の今、消極的な反撃しかとれない。反撃のために散開した部隊が鉄門前に集合し、ブリーチャーが鉄門を爆破。上の階を牽制しつつ、DGが玄関ドアを蹴破る。2階へはレンジャーとデルタが窓にハシゴを掛けて侵入、上階の迅速な制圧を行なった。

 

 

 

 日中における強襲作戦は、当然だがリスクが高い。銃声は周囲に響き渡っており近所の住人達も遠巻きながらこちらの様子を伺っているようだ。時間の限られた中で家宅捜索はIED(即席爆破装置)を警戒しつつ慎重に行なわれた。そんな捜索を続ける中、CAG隊員が不自然な位置に置かれた絨毯を発見した。慎重に警戒をしつつ絨毯を捲ると、そこには穴があり、蓋を閉められた状態で中に「ジェシカ」と思しき女性が監禁されていることが発見された。

 

 

 

 

 隊員たちによって狭い監禁場所から引き上げられた女性に対して名前と出身地から「ジェシカ」本人であると確認がとれた。古参のPJ隊員が手慣れた様子で憔悴したジェシカの対応をする。PJ隊員からの質疑応答にも落ち着いて回答をする彼女の様子を見つつ、チョークリーダーがHQ(司令部)に作戦成功を報告。人質発見の知らせはHQだけでなく強襲部隊の隊員たちにも達成感を感じさせていた。

 

 

 

 

 上空を展開していた無人航空機RQ-4からシリア軍が騒ぎを聞きつけて、国境沿いに集まっていることを確認しHQに報告。人質を発見した以上は長居をする理由はない。隊員たちは時間の許す限り、民家の屋内外を捜索して敵の機密文章や重火器などを押収して、帰りは車両を呼び帰投することとなった。強襲部隊と「ジェシカ」を載せた車両が出発し近隣のアメリカ軍基地まで帰還するまでの時間は、作戦開始から数時間後のことであった。

 


 

作戦に参加したチーム

 

CAG&PJ&CCT

 

 

 このチームはCAGとアタッチするPJとCCTで構成された本作戦のメインアサルトチームである。CAG隊員は、PARACLETEのボディアーマーであるRAVやHPCに鼠径部を保護するグローインアーマーとマガジンポーチや強襲のための装具を装着。アーマーカバーとマガジンポーチはパラクレイト独自のセージグリーンカラーであるが、これも製造年代や支給品とその他で色が微妙に違う。RAVはソフトアーマーとハードプレートの両方が挿入でき、クイックリリース機能をもつ高性能なボディアーマーである。PJとCCT隊員は、タンカラーのスリックタイプアーマーにチェストリグを重ねたスタイルに医療器具や通信機器を収納したバックパックを背負っている。当時の空軍特殊部隊に多かったのが、タクティカルテイラーが製造した各種ポーチの装着可能なモールパネルタイプのチェストリグや空軍特殊部隊向けに開発されたチェストリグなどを使用していた。

 

 

DG&PJ&CCT

 

 

 DGとアタッチするPJとCCTで構成された本作戦のアサルトチーム。DG隊員はウッドランドパターンのカスタムBDUジャケットとカーキカラーのBDUパンツにMBSS( Maritime Ballistic Survival System)を着用している隊員と、PACAのタンカラーのスリックアーマーにタンカラーのLBTのLBT-1961チェストリグを着用する隊員で構成されている。海軍特殊部隊向け装備キットであるMLCS(Maritime Load Carrying System)に収納されているMBSSは、前後にプレートを収納可能なプレートキャリアである。MOLLEで各種ポーチを装着できるため、強襲時の機動性を追求したコンパクトなセットアップが可能である。PJ隊員は、M203グレネードランチャー付きM4カービンに合せて40mmグレネードポーチを装着したEAGLE IndustriesのAir Rescue Vestを着用。Air Rescue Vestはマガジン、ハンドグレネード、メディカルキットなどを収納可能な専用ポーチを装備した空軍特殊部隊向けに開発されたベストだ。CCT隊員が着用するBHI LPCP(Blackhawk Industries Low Profile Chest Pouch)は、マガジン、ラジオ、ユーティリティポーチを装備した完成度の高いオールインワンモデルとしてLBT-1961などと同様に特殊部隊隊員に愛用された。

 

 

RANGER

 

 

 本作戦で強襲部隊を支援したレンジャーチーム。強襲部隊の建物への強襲時の支援と作戦中の建物の周囲の警戒を実施、人質の搬送を含め作戦の要を担っていた部隊である。レンジャー隊員たちは、3カラーデザートパターンのカスタムBDU上下にレンジャーグリーンカラーが特徴とも言えるRLCS(Ranger Load Carrying System)のMBAVを着用。MBAVには、それぞれが携行する銃器に合せたマガジンポーチなどを装着している。支給されるRLCSキットには、アサルトライフルからLMG、ショットシェルホルダー、各種ユーティリティポーチも含まれているため役割に応じたセットアップが可能。支給品をメインにセットアップされたスタイリングは部隊に統一感を持たせ、レンジャー隊員であることが一目でわかることも特徴である。

 


 

各チームの装備

 

 作戦に参加したCAGアサルターの装備一式 

CAG Assaulter

 

 

 PARACLETEのRAVの背面にはフラッシュバンポーチ、ユーティリティポーチ、メディカルポーチが縫製されているRAVアサルトパックを装着。前面にカスタムガバメントを収納したホルスターを装着。車両やヘリでの移動が多いため、レッグホルスターではなく胸部や腹部、腰部にホルスターを装備。右側面にはブリーチング用ショットガンをカスタムショットガンスキャバードに収納。このようなカスタムポーチなどを積極的に使用するのがCAG隊員の特徴である。

 

 

 作戦に参加したCCTオペレーターの装備一式 

CCT Operator

 

今回の強襲作戦では実際に昇降可能な伸縮式ハシゴを使用。その重さは相当なものだが、これを背負える仕様にして持ち運んで使用可能だ。普段のサバイバルゲームでは使用することがないが撮影では重要なアイテムである

 

イラク大統領を含めた最重要手配犯の写真を印刷したトランプ、GPSやノートパソコンなども当時の雰囲気を作るために重要なアイテムである。こういった小物をさりげなく取り入れることで、スタイリングをさらにリアルなものにできる

 

 建物への強襲作戦のため、防弾性能の高いサファリランドのスリックスタイルのボディアーマーにBHI LPCPとBHIパット付きショルダーハーネスを装着したベルトを着用。ベルトに装着した各種ポーチの内容物を重量分散するためにパット付きショルダーハーネスをサスペンダーとして使用。BHI LPCPのカスタムポーチにはBA-5590バッテリーチャージキット、BHI 3dayバックパックには作戦に必要な各種アイテムを収納している。全体をOld BHIのデザートタンカラーで統一し、吊り下げて携行しているガーミンGPSなどの年代にこだわった小物を使用している。

 

イラク大統領を含めた最重要手配犯の写真を印刷したトランプ、GPSやノートパソコンなども当時の雰囲気を作るために重要なアイテムである。こういった小物をさりげなく取り入れることで、スタイリングをさらにリアルなものにできる

 

 今回の撮影会は、2025年9月20日から22日まで開催される「HEARTROCK 2025 [REUNION]」に向けての準備を兼ねたものであった。HEARTROCKとは2010年〜2017年までのスタイリングを想定した、パレードや車輌の壮行会、フリーマーケットが開催される現用装備系リエナクトイベントである。今まで10回開催されており、本番まで前哨戦となるイベントが多数開催されるとのことなので、気になった方は是非、公式サイトの情報にアクセスしてみてほしい。

 

Heart Rock-Official 公式X:@delco_1108

 

TEXT:Ghost(Ghost in the Dark)
PHOTO:geartles: @geartles
SPECIAL THANKS:KJ / Task Force Members

 

 

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