2024/06/19
陸上自衛隊で使用されているコンバットシャツとは!?
Japan Ground Self-Defense Force Combat Shirt
自衛隊内でも着用へ向かいつつあるコンバットシャツ
ここに掲載した写真は、2024年2月26日に沖縄県のキャンプ・ハンセンで行なわれたアイアン・フィスト24の戦術的戦傷救護訓練で、周囲を観察する陸上自衛隊第2水陸機動連隊の隊員である。陸上自衛隊のコンバットシャツは、陸上自衛隊 補給統制本部から「コンバットシャツ、国際活動用(改善検討器材B)」という名称で入札の実績もある公式モデルが存在する。国際活動用ということでオーストラリアで開催される世界18カ国の国別対抗射撃競技会「AASAM (Australian Army Skill at Arms Meeting) 」においてコンバットシャツを着用した隊員を見ることができる。現在、限られた隊員のみ支給されるコンバットシャツだが、米軍はじめ各国の軍隊がコンバットシャツを着用しているのに倣い、自衛隊内でもコンバットシャツ着用へ向かいつつある。官品を支給されない隊員は自費で購入しているのだが、所属する隊により仕様に指定があったり、そもそもコンバットシャツが着用不可であったりするようだ。各メーカーも、そんな隊員たちの声を反映したコンバットシャツを製作・販売しており、数年前と比べてその選択肢はかなり広がっている。その中の一社であるirodori militaryの製品を取り上げつつ陸上自衛隊におけるコンバットシャツについてご紹介しよう。
COMBAT SHIRTS
特殊部隊隊員に愛用されたTシャツボディにBDUのアームを縫い付けたテイラーカスタムだったコンバットシャツは、Crye Precision(以下クライ)によって高度な戦闘服として進化し、今では戦闘服の一般的なデザインとして認知されている。コンバットシャツのデザインは、過酷な環境下で行なう激しい動きに対応する被服のニーズに対してのクライの回答であった。ボディアーマーの着用を前提とする現代戦においてアーマーの内部に接する生地には、耐久性よりも快適な着用が求められた。
そのため従来のコットンナイロン混合のリップストップ素材ではなく、吸湿発散性に優れ、アーマーとの摩擦による摩耗を軽減するハイテク素材が採用された。胸部のポケットはオミットされた代わりに上腕にはポケットを装備。収納力を落すことなく配置された上腕部の位置から、ポケットのフラップには国旗など身分表示のためのパッチを貼るベルクロを装備。肘部分には肘を保護するパッドを装着することが可能だ。BDUジャケットの欠点を改良し進化させたのがコンバットシャツなのだ。
Flame Resistant Organizational Gear Combat Shirt
Flame Resistant Organizational Gear(FROG)は、アフガニスタンとイラクでの戦争でIED(爆発装置)による火災や爆発時の火花に起因する火傷の負傷者を減らすためにアメリカ海兵隊が2007年から配備した衣類である。FROGシステムは、長袖シャツ、Tシャツ、コンバットシャツ、コンバットパンツ、グローブ、バラクラバで構成されている。
FROGコンバットシャツは、抗菌、吸湿発散性に優れた軽量FR(Fire-Resistant:難燃性)素材の胴体、ジッパー襟、ラグランカットのFR素材の袖が特徴で、動きやすさ、快適性、耐久性がある。袖には、フラップにループパネルを配した角度のついた両腕ポケット、ダーツを入れた肘パネルの補強、3つの位置でボタンを留める袖口がある。
G3 Combat Shirts
クライのコンバットシャツは、第1世代(G1)からアーマーの着用を想定したBDU袖が付いたハーフジップ式シャツという基本的なデザインは変わらないが、隊員たちからのフィードバックにより進化を続け、現在は第4世代(G4)が開発された。
そんなクライのコンバットシャツで広く目にするのが第3世代となるG3コンバットシャツだ。吸汗速乾性、軽量、高性能、難燃性のDRIFIRE胴体生地と補強されたミルスペックの50/50NYCOリップストップ袖のG3コンバットシャツは、世界の軍や法執行機関で使用されている。写真のカモフラージュであるマルチカムブラックは、クライが開発したマルチカムブラックの市街地及び夜間戦闘用迷彩だ。
irodori military
JSDF STYLE COMBAT SUITS
irodori militaryは、サバイバルゲーマーや自衛官向けに布製装備品を小ロットで製造、販売している装備メーカーだ。最近は現職自衛官からの要望を受けてSniper Wrist Pouchやマップケースなども製造販売している。そんなirodori militaryが製造販売するコンバットスーツ(コンバットシャツとコンバットパンツ)は、2024年3月27日に陸上自衛隊公式X(Twitter)でポストされた特殊作戦群とアメリカ陸軍特殊部隊との共同演習の動画の中で特殊作戦群隊員が使用していたことで話題となった。
迷彩生地
綿/ビニロンのリップストップ生地を使用。ビニロンは耐久性が高いのが特徴だが、ごわごわする素材なので、綿と合わせることでしなやかで着心地がいいものになっている。また、しわになりにくい特徴もある。迷彩柄は官給品に非常に近い色味で、IR対応なので夜間の迷彩効果も期待できる。
胴体生地
胴体生地は帝健「ガーディア」を使用。アメリカ海軍で採用されているものと同じ難燃ニット素材で、日本国内では消防関係のインナーにつかわれている。SEECATで自衛隊関係者の目に留まり、ぜひ陸上自衛隊でも使いたいという要望に応えてオリーブ色が開発された、という経緯がある。訓練では汗をかくのでドライ素材を求められるが、よくあるドライのポリエステルTシャツは汗をかいても乾きやすいものの、乾くまでは肌にはりついてしまうという不快感を伴う。この生地は薄手ではあるものの、強撚糸(きょうねんし)のようなシャリ感のあるサラッとした質感で、肌にはりつきにくい。そのため使用する隊員たちに快適だと好評である。
irodori military
COMBAT PANTS
クライが開発したコンバットパンツは、軍・法執行機関においてコンバットシャツとセットで使用されることが多く、特殊作戦群隊員も同様である。irodori military COMBAT PANTSは、コンバットパンツの始祖であるクライのデザインをベースに着用者の使い勝手をより考慮したデザインとなっている。
TEXT:Ghost(Ghost in the Dark)
SPECIAL THANKS:irodori military
株式会社 帝健
この記事は月刊アームズマガジン2024年7月号に掲載されたものです。
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