2024/05/22
時代の狭間に生まれたチェコスロバキアの独自機関銃「Vz.52/57 軽機関銃」【無可動実銃】
この1挺は戦うために作られてきた本物の銃だ。
数奇な運命に導かれ、今はこの日本という平和な地で静かに眠っている。
発射機構を排除され魂を抜かれても、その銃の魅力が廃れることはない。
時代と共に歩んだ歴史を、培われた技術体系を銃はその身を持って示してくれる。
その姿は銃に魅了された我々に新たなる知見をもたらすことだろう。
さあ、今回も無可動実銃のことを語ろう……。
爆発的な人気のZB26シリーズの末裔
Vz.52は第二次世界大戦後の1952年にチェコスロバキア軍に採用された軽機関銃である。大戦中ドイツに併合され実質上解体されたチェコスロバキア軍は戦後新たな軍隊として再建する必要があり、そのための兵器が求められた。
歩兵用の軽機関銃については、戦前より傑作として知られたブルーノZB26があったが、戦争による兵器性能の向上の中で時代遅れになりつつあった。そのため新型の軽機関銃開発が要求された。その結果生まれたのがVz.52だ。
開発は1948年の完全共産化以前から開始されたためか、社会主義国のなかではソ連らしさのない異色の軽機関銃となっている。チェコスロバキアが独自で開発した7.62mm×45弾は性能も良く、ライフルと軽機関銃で共用するなど戦後の厳しい経済状態でも合理的に戦力を強化できる工夫がされている。
また通常のマガジンとベルトリンクの両方で運用できるなど、時代を先取りした設計でもあった。また、ブルーノZB26を開発したヴァーツラフ・ホレクが直接設計にかかわった最後のオリジナルZB26シリーズの末裔でもあるのだ。
Vz.52/57 軽機関銃
- 全長:1,040mm
- 口径:7.62mm×39
- 装弾数:25発/ベルト給弾
- 価格:¥880,000
- 商品番号:【8757】
工業国チェコスロバキアの威信を賭けた軽機関銃
第二次世界大戦を契機にフルパワーのライフル弾よりドイツのStG44のようなインターミディエイト弾が有効であることが証明されたため、フルパワー弾を改める動きが生まれた。この概念に沿って始まった新型弾薬開発はヨーロッパで活発であったが、冷戦が本格化すると東西陣営で弾薬の共通化が進み、多くの計画が頓挫している。
幸運にもチェコスロバキアが独自で開発した7.62mm×45弾は完成したが、その数年後にはワルシャワ条約機構加盟国が7.62mm×39弾を標準化したことで変更を余儀なくされた。この口径変更に対応したのがVz.52/57である。
1959年から1964年までチェコスロバキア軍に使用され、優れた性能を持つVz.52/57であったが、ワルシャワ軍で一般的な機関銃弾が7.62mm×54R弾であったため、Vz.52の改良では対応できなかったのであろう。新たにUk vz.59汎用機関銃に順次交代されている。余剰となったVz.52シリーズはキューバやナイジェリアなどに供与された。
ZB26を基に改良を施した設計のため、作動機構などはほとんど同一であるが、同じくZB26をベースとしたブレン軽機関銃のガスチューブ/ガスピストンの設計も取り入れたZB26の集大成ともいえる。他にもドイツのMGの特徴である箱型マガジンとベルト給弾の使い分けといった、戦場で活躍した軽機関銃の長所を積極的に盛り込んだ。給弾方式の変更も部品の入れ替えなどをせず単純な操作で切り替えが可能だ。
銃の上部にフィードカバーがあり、これを開けるとマガジンが挿入でき、閉じるとベルトリンクを右側から挿入できた。それぞれの挿入口は使用しない時はダストカバーで塞がれ異物混入による故障の心配もない。射撃後の空薬莢はレシーバー下部から、ベルトリンクはフィードカバーの左側からそれぞれ排出される。
Vz.52は本来であれば末永く使用されるべき兵器であったが、不運なことはワルシャワ条約機構の同盟がまだ形成されていなかった時期に登場したことだ。時代に合わせて完成させながらも、時代に翻弄されて消えて行くしかなかったVz.52シリーズはもっと評価されるべき軽機関銃ではないだろうか。
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TEXT:IRON SIGHT
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この記事は月刊アームズマガジン2024年6月号に掲載されたものです。
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