エアガン

2024/05/16

イマドキのスナイパーライフルの新常識!?「ARCAスイス規格」とは?

 

 銃器のカテゴリーの中で最も進化を遂げているのがスナイパーライフルのカテゴリーだ。銃本体はもちろんスコープやアクセサリー類、さらにスナイピングテクニックに至るまで日進月歩で改良されている。ここではスナイパーライフル用アクセサリーとして軍・法執行機関において続々採用されているものの、日本ではあまり馴染みのない「ARCAスイス」規格のアダプターや自由雲台について解説する。
 

 

 スナイパーライフルを安定して構えるために欠かせないアイテムとしてバイポッド(二脚)がある。このバイポッドに加えて近年はトライポッド(三脚)が用いられることが多い。バイポッドは主にプローンポジション(伏せ撃ち)で用いるものだが、トライポッドはスタンディングポジション(立射)やシッティングポジション(座射)で用いたり、屋内からの狙撃や遠距離の敵を観測する(スポッティング)時に活用されている。バイポッドは銃に直接装着するイメージが強いが、トライポッドの場合、雲台にアダプター(アタッチメント)を介して銃を固定する。トライポッド用アタッチメントで知られているのが、アメリカ海兵隊が採用するHOGサドルや、その廉価版であるPIGサドルである。これらはトライポッドに装着してコの字型のクランプで万力のように銃本体を挟んで固定する。シンプルな構造で安定して固定できるメリットがある反面、かさばるのがデメリットと言える。

 

スタッフが個人的に所有しているARCAスイスの自由雲台「Z1+」が付いたアメリカのRRS(リアリー・ライト・スタッフ)製のカーボン三脚。RRSの三脚とARCAスイスの自由雲台のコンビネーションはテッパンの組み合わせだという

 

 そんなHOGサドルやPIGサドルなどのアタッチメントを介さずに、トライポッドの雲台に銃を直接固定するために導入されたのが「ARCAスイス」規格のアダプターと雲台である。「ARCA(アルカもしくはアーカ)スイス」とはフランスに本拠地を置くARCAスイスインターナショナルが開発した自由雲台とそれに対応したアダプターの規格で、カメラ用雲台のスタンダード規格のひとつである。ARCAスイスの自由雲台は精巧かつ強固にロックしつつもスムーズな操作性を実現しており、世界中のフォトグラファーから絶賛されているという。そのARCAスイス規格に軍・法執行機関のエリートスナイパーたちが着目したのだ。
 

これがARCAスイス規格の自由雲台「Z1+」。ARCAスイスのロゴがさり気なく入れられている。アダプターを支えるアスフェリカル(非球面)ボールは大きく、かつ精巧に作られている。右側にあるメインロックノブを回して角度調整を行ない、ボールへのテンションは完全に緩みきることなく常にテンションが掛かっている状態になっている

 

 ARCAスイスのアダプター部分の形状はハンドガンのフロントサイトやリアサイトに用いられているドーブテイル(dovetail=あり溝で固定する方法)に似ており、正面から見て台形状のアダプターをクランプで挟み込むんで固定する。銃本体にアダプターを装着しておけばARCAスイス規格の自由雲台に素早くかつ正確に固定できる。ちなみに、ARCAスイス規格はピカティニー規格やM-LOK規格とは異なり、正確な寸法がARCAスイスによって提供・情報公開されていないという。そのことからひと口にARCAスイス規格といっても各社によって微妙な違いがあるとされる。

 

自由雲台に装着されているARCAスイス規格のクランプ部分。いわゆるドーブテイル式で、​​あり溝は上下に2つ設けられており上側にアダプターを装着する

 

 トライポッドに銃を載せる場合に固定方法もさることながら耐荷重が重要となってくる。すべてのトライポッドと雲台には耐荷重が設定されており、特にスナイパーライフルの場合はスコープを含めた本体重量が4kg以上あることから最大荷重が高いものを選ぶ必要がある。しかし、実際には耐荷重だけで決められるわけではない。

 今回の記事を作るにあたり、某ECサイトでARCAスイス規格に対応した耐荷重10kgの比較的安価な自由雲台を購入して4kg近い重量の銃を載せたところ、いくらロックを締めても銃が水平に保たれなかった。しかし、スタッフ所有のRRS製三脚とARCAスイスの自由雲台「Z1+」のコンビネーションに同じ銃を載せたところ、そんなに強くロックを締めなくても水平に保ってくれる。これには驚いたのと同時に機材の性能の違いとはこういうことなのかと実感されられた。実際にARCAスイス規格のアダプターを使ってトライポッドで固定しようとする場合、まずはしっかりとした自由雲台を選ぶことから始まる。
 

クランプにARCAスイス規格のアダプターを装着してみよう。まずはロックを緩めてアダプターをクランプの溝にあわせてスライドさせる

 

クランプにアダプターをスライドさせたらノブを回して固定する。左右から挟み込んでアダプターを固定するので、素早い着脱と強固な固定を両立させている

 

 ARCAスイスはエアガン用としては浸透していないものの、実銃では一般的になりつつある。ボルトアクションライフルのフォアエンド下面にARCAスイス規格のレールが標準装備され、トライポッド用アダプターだけではなくスリング用やバイポッド用アダプターもあるという。スナイパーライフルにこだわりたい方や最新のスナイパーライフル事情に興味のある方はARCAスイスを覚えておくと便利だろう。

 

 

ストライクインダストリーズの「M-LOK ARCAレールアダプター」。M-LOKハンドガードに装着でき、長めのレールにより汎用性が高められている。価格は18,480円(セキトー)

 

レールアダプターを正面下から見たところ。断面が台形状(ドーブテイル)になっているのがわかるだろうか。アダプターの厚みは意外と薄い

 

アダプターにはネジが切られた穴が数カ所設けられており、別途六角ボルトを装着することでロックが緩んでズレた時の脱落防止になる

 

M-LOKハンドガードにレールアダプターを装着したところ。ハンドガード根元付近にレールアダプターを装着することでバランスよくトライポッドに載せられる

 

ストライクインダストリーズの「ピカティニー to ARCA QDアダプター」。ピカティニーレール仕様のハンドガードやアクセサリーレールに装着できる。価格は15,180円(セキトー)

 

アクセサリーレールにQDアダプターを装着したところ。トライポッドだけではなくARCAスイス規格のバイポッドなどを装着したい時に便利

 

某ECサイトで購入したM-LOK対応のARCAスイス規格のアダプター。シンプルな作りだが必要にして充分なもの。四隅には脱落防止用の六角ボルトが備わっている

 

某ECサイトのアダプターを装着したところ。ストライクインダストリーズ製に比べてやや厚みがある。メーカーによって微妙に寸法が異なるとはこのことだろうか

 

某ECサイトのM-LOK対応アダプターを介してARCAスイスの自由雲台+RRSのカーボン三脚の組み合わせに載せてみた。銃はスコープやバイポッド込みで4kg以上あるもののしっかり保持している。銃と比べると自由雲台のボール部分の大きさがわかる

 

メインロックノブをグリップを握る側とは反対側にすることで即座に角度が調整できる。高さは三脚の脚を伸縮させて調整する必要があるので、据え置いて長時間同じポジションを維持しなくてはならない場合に適している

 

TEXT:毛野ブースカ

 

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