実銃

2024/05/21

【実銃】シューティングに特化したベネリの実力とクアッドリロード「TTI Benelli M2 Ultimate 3 Gun」【後編】

 

TTI Benelli
M2 ShotGun

Taran Tactical Innovations Benelli M2 Ultimate 3Gun

 


 正式名称は“TTI Benelli M2 Ultimate 3 Gun”という、3Gun競技用に作り上げられた“勝つためのショットガン”だ。この21インチバレル、8連マガジンのモデルが、映画『ジョン・ウィック:パラベラム』で印象的に使われ、一躍人気モデルとなったのは、皆さんもご存じであろう。
 今回は、3Gun競技に特化した9連マガジンモデルを紹介したい。
3Gun=スリーガン:ライフル、ピストル、ショットガンを使うアクションシューティング競技

 

前編はこちら


 

クアッドロード


 映画『ジョン・ウィック:パラベラム』に登場するTTI M2のシーンの中でも印象的だったのが、シェルキャリアから「ガシッ」と握りしめた4発のショットシェルを「シャコン、シャコン」と2動作でロードしてしまう場面であった。

 昨今の3Gunマッチでこのクアッド(4つのという意味)ロード(Quad Load:QL)は、もう勝つためには必須のリロード方法で、各シューター共に工夫と凝らした手法を見せてくれる。

 

プラスティックケースに入ったのがチョーク。黒いレンチを使って脱着する

 

 基本的には利き手でロードする“ストロングハンドロード”と、トリガーハンドの持ち替えを省くために、左手でロードする“サポートハンドロード”がある。どちらも完璧に完遂するには相当な練習が必要で、ポイントは、ガン側にそれなりのカスタマイズが必要なのと、ローディングハンドは、専用のシェルホルダーを使って、4発を確実にがっちりと握りしめるという点だろう。

 

 ローディングポートは極限まで削り込んでポリッシュし、親指がポートの中に入り込まないでも2発がロードできてしまう必要がある。現時点でわたしのQL完遂率は65%ほどで、かなりの勢いで1-2発がポロリと指の間からこぼれていってしまう。

 

左がフル(F)、右がインプルーヴドシリンダー(IC)だ

 

 マッチでは恥ずかしながらチキンアウト(ビビッて引いてしまうこと)して、デュアルロード(2発ずつロードする)に終始することが多かった。3Gunにおけるショットガンステージは、このいかに速くロードするかというのが大きなヤマとなることが多く、約1秒強をセーブするためにギャンブルするか、着実にロードをしていくかが大きなポイントだったのだ。


 1ステージで2回シェルを落としてしまうと、たいていは弾数が合わなくなってすべてのターゲットを撃てなくなってしまう。これでペナルティを喰うよりは、3秒損してもステージをコンプリートした方が良い。ああ、これが悲しくも2流シューターの妥協なのであった。

 

 QUAD LOAD Support Hand 

 

マガジンの残弾が少なくなってきたら、ガンをくるりと回し、ストックを脇に固定する。サポートハンドは4発のシェルを「ガシッ」と握りしめている

 

2個のシェルが一直線になるよう気を付けて、親指の当たっている方(この場合下側)のシェルをローディングポートに持っていく

 

握りしめたシェルの先端をキャリアに押し当て全体を前にスライドする

 

下側のシェルを親指で押し込むようにする

 

次の2発を押し込む

 

 QUAD LOAD Support Hand 

 

マガジンがエンプティになった。ロードに入る。バット部分を押し上げ担ぐようにする

 

ここで親指の位置を決めておくのが重要だ。かなりの力で握りしめる

 

イケダ氏はポートを上に向けているが、これを横向きにしてサイドからロードした方が速いという人もいる

 

上から押し込んでがっちりホールドしたままスライドさせる

 

残り2発も同様に、先端をがっちり押し込んでスライドさせる。ジョン・ウィックを観た人ならわかると思うが、押し込むというより放り込む感じなのだ

 


 

実射


 今回の実射テストでは、ベネリならではの速射性能を試すとともに、ターゲッドロードとOOバックのチョークと距離によるパターンの広がり、そしてガロンボトルにおける破壊力を記録してみた。

 用意したショットシェルは、バスプロショップで安売りしていたHERTER'Sのターゲット(7.5号、2.41mm)、FEDERAL Field&Target(8号、2.25mm)、FIOCCHI OO Buck(9ペレット)、FEDERAL OO Buck(9ペレット)の4種類である。

 

10ヤードからFチョークでターゲットロードを撃つ

 

10ヤード、Fチョーク、ターゲットロードでの結果。広がりは6インチほどだが、そのほとんどは3インチ程度に集中している

 

 まずは、ターゲットショットによるパターンのテストだ。TTI M2には、3種類のチョークが付属してくる。絞りの少ない順に、インプルーヴドシリンダー(IC)、モディファイド(M)、フル(F)の3種類だ。

 インプルーヴドシリンダー、10ヤードからターゲットロードを撃つと、そのパターンはだいたい10-11インチ(約25-28cm)に拡がる。このパターンというのはワッズの材質や形状によっても変わってくるので、これはHerter'sでの結果ということになる。

 

マズルフラッシュが映り込んだ瞬間。ICチョークをセットして、10ヤードと15ヤードからターゲットロードで撃った

 

同じターゲットにOOバックを撃った。これは10ヤード

 

 中央の大きな穴は、ワッズが突き抜けた痕だ。この同じ状態で15ヤードまで下がると、そのパターンは18-19インチ(45-48cm)まで広がる。このターゲットロードをセルフプロテクションとして考える人もいるが、15ヤードというのはこのセットアップ(21インチバレル、ICチョーク)では限界の距離ともいえそうだ。


 次は同じICチョークで、Fiocchi OOバックを撃ってみる。結果は10ヤードが約5インチ(約12.7cm)、15ヤードだと10インチ(約25cm)ほどになることが分かった。これも15ヤード以内が有効射程ということになるだろう。

 

10ヤードからシルエットの下腹部にあたる黒四角を撃つ。概ね10-11インチにまとまった。上の胸に当たる黒四角には15ヤードから撃ったもの。こちらは18-19インチに拡がった

 

9発が約5インチにまとまった。左にワッズが飛んでいる。中央上の大穴は、ターゲットロードのもの

 

15ヤードからのICチョークOOバック。約10インチほどにまとまった

 

15ヤードからターゲットロードを撃つ

 

シルエット上の黒四角が15ヤードの着弾だ。9-10インチに散っているが、その多くは6インチほどに集まっている

 

OOバック、Fチョーク、10ヤード(下)と15ヤード(上)の着弾パターン


 今度は比較として、Fチョークで撃ってみる。ターゲットロードでは、それぞれ6インチ(ほぼ3インチほどに集中している)と9インチ(そのほとんどは6インチほどに集中している)という結果で、OOバックでは5インチと7インチほどに集弾した。

 3Gun競技では、スラッグを撃つことも考えてICチョークで撃つのが通常だが、ハウスプロテクションと考えても、やはりICチョークが適当と考えるのが順当だろう。

 

15ヤード。この距離だと外す気がしない。ヒットの瞬間。黒煙が跳ね返ってくる


 次にICチョークで、ハンドスロワー(クレーを投げるツール)を使って投げ上げたクレーを撃ってみた。このハンドスロワーを使ったクレーはそのスピードが遅いので、ICでも全く問題なくクレーを粉砕することができた。


 今度は土手に9枚のクレーをランダムに置き、それを15ヤードから片っ端から粉砕していくという速射テストだ。撃ってみると、9個のターゲットというのは、ショットガンにとっては果てしなく続く緊張の連続で、少しでも集中が途切れると外してしまう。それでも9枚を粉砕できた時の達成感は、思わず奇声を上げてしまうほど楽しいものだった。

 このスピードと射撃精度は、やはりTTI M2ならではのものだと肯けるテストであった。

 

クレーを撃ってみる。見事命中した


 そしてフィナーレは、OOバックによる1ガロン(約3.8L)ジャグの破壊テストである。まずは5ヤードほどの距離から、2個のジャグに撃ち込んでみる。これはもはや爆発ともいえる破壊力で、2個のジャグは破裂して5m以上吹き飛び、面白いことに水飛沫は十字状にばら撒かれるというのがわかった。これは3回試してみて、両方のOOバックに起きたパターンなので、そういうものなのだろう。

 3回ともシューターは綺麗に水をかぶる結果となった。

 

5ヤードから、1ガロンジャグ2個を撃つ


 次にTTI M2の連射性を活かして、3個のガロンジャグを横に並べ、可能な限りのスピードで撃ってもらった。イケダ氏は慎重なタイプなので、外さない程度で撃ってくれたが、その時間は3秒以下で、少し練習すれば2秒も切れそうな勢いだった。今度はターゲットを2リットルのソーダにして連射してもらう約束にしてテストを終えた。

 

着弾したフロントのジャグは高く舞い上がって、5mほど吹き飛ばされる。水飛沫は十字に飛んでいるのがわかる


 ついでにやっとこさ手に入れたスティールターゲットにも連射してもらったが、15ヤードの距離から撃っても、ほぼ全弾がターゲット内に入ることが分かった。着弾の瞬間はかなりの着弾音とともに黒煙が立ち上り、ターゲットそのものがぐらりと揺れるかなりのインパクトを見せた。

 やはりショットガンのハウスプロテクションにおけるポテンシャルはかなりのものといえるだろう。

 

ガロンジャグを3個、横に並べて10ヤードから3連射する

 

これは2個目へのインパクトの瞬間。さすがOOバック、水の飛び具合が違う。撃った後に思わず笑みがこぼれてしまう爽快さだ

 

 私自身はターゲットロードをセルフプロテクションに使うのは懐疑的で、やはりここはOOバックにしたいところだ。連射の利くショットガンでダブルタップ、やはりこれがプロテクションの基本だと考えている。でもジョン・ウィック氏は、基本ヘッドショットでしたね…。

 

18インチバレルのRemington 870(上)と。ポンプアクションの6連ショットガンは、やはり我が家のマスターショットガンだ

 

Photo&Text:Hiro Soga

 

この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2021年10月号に掲載されたものです

 

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