実銃

2019/04/04

COLT PYTHON .357 MAGNUM 実銃レポート

 

“リボルバーのロールスロイス”と呼ばれるコルトのマスターピース

 

COLT PYTHON .357 MAGNUM 実銃レポート

 

 

 近代的なリボルバーを生み出したコルトは、その後もシングルアクションアーミーや、ガバメントモデルなど、多くの歴史的な銃器を登場させている。その中でも.357マグナムを使用する近代リボルバーの傑作を選ぶとなれば、多くのシューターが1955年に登場したパイソン(PYTHON)を選ぶだろう。

 

 

COLT PYTHON .357 MAGNUM 実銃レポート

 

 

 パイソンは、放熱性を高めたベンチレーテッドリブと、反動を軽減させるためのフルラグを備えたブルバレルを持ち、アジャスタブルサイトを搭載し、特に作動の調整がなされ、仕上げはコルトの職人がていねいに磨き上げたうえでブルーイングを施した「コルトロイヤルブルー」仕上げ。このためS&W製リボルバーや、他のコルト製リボルバーと比べてもかなり高額となったが、コルトのアイコンとも呼べるプレミアムなリボルバーであり「リボルバーのロールスロイス」とも呼ばれた。

 

 

COLT PYTHON .357 MAGNUM 実銃レポート

近代リボルバーの基礎を築いたコルトから最高級リボルバーとして1955年に登場したのがパイソンである。構造的にはスイングアウトによる装填方式とダブルアクションによる撃発方式を採用している

 

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加熱した銃身からの陽炎がサイティングの邪魔をしないよう、冷却のためにもうけられたバレル上部のベンチレーテッドリブ。そして、バレル下部には重量を増加して反動を軽減する目的のフルラグが銃身に沿ってスラリと伸びている

 

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スタイルのいいグリップ。だが、ダブルアクショントリガーを操作するには握りにくい

 

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細部まで磨きこまれ、「コルトロイヤルブルーフィニッシュ」と称されるヒートブルー仕上げが施されている

 

 

 迫力のある外見と、美しい仕上げ、そして高い命中精度を約束する高精度バレルと、スムーズなトリガープルは高い人気を誇り、コレクターだけではなく競技射撃、そして法執行機関でも使用された。残念ながら、人件費の高騰により、熟練工の手作業に依存する部分の多かったパイソンの品質は70年代から低下、1980年代後半、さらにオートマチックピストルの人気が高まりから需要が低迷し、ついに1999年には生産が停止した。

 

 

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1955年の発売当時、リボルバーとしては最強のカートリッジであった.357マグナム弾。シリンダーは充分に大きく、チャンバーの間も肉厚となっている

 

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ハンマーには大型のスパーが備えられ、美しい手作業によるチェッカリングが刻まれている

 

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透き通るブルー仕上げ。パイソンは今では失われてしまった美しさに溢れている。今ではビンテージガンとして投資の対象とまでなったパイソンであるが、高性能なハイクラスリボルバーとして開発され、多くの射撃競技や法執行官のホルスターに収まり酷使されていた

 

 

 歴史あるコルトリボルバーの中でも、失われてしまった職人の技によって完成されたパイソンはまさにマスターピースと呼ぶのに相応しく、現在でも多くのコレクターによって高値で取引される、所有する喜びを得られるハンドガンの1挺である。なお、今回紹介するのは1975年製のパイソン4インチモデルだ。

 

 

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強力な.357マグナム弾を撃っても不安のない重量とサイズを持つパイソン。S&Wではパイソンと同サイズのLフレームを持つM568シリーズを開発、大成功を収めて現在でも生産が続けられている

 

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.357マグナム弾(左)と、.38スペシャル弾。.357マグナム弾はS&Wが1934年に開発したカートリッジであり、.38スペシャル弾をベースとし、ケース長を3.2mm延長、火薬量を増やし初速を増加している。FBI(米連邦捜査局)の検査によると、.357マグナム口径を使い、125grのJHP(ジャケッテドホローポイント・写真の弾頭) を1500fps程度で撃ち出した場合、もっとも対人用として威力を持つ拳銃弾であるとしている

 

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.357マグナム/125grJHPを撃ったところ。ワンハンドでも充分な重量を持つフルラグを供えたバレルの効果によって、リコイルは心地良い程度に抑えられている

 

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パイソンのダブルアクションは非常にスムーズだが、引き始めは軽く、徐々に重くなっていく特長を持っている。また、トリガーのストロークもS&Wのリボルバーに比べて長く、扱いにくく感じてしまう

 

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撃った後はスイングアウトし、エジェクターロッドを押して排莢する。磨き込まれたチャンバーによって空薬莢が張り付くことがない

 

 

 パイソンが誕生した1955年、そのスタイルと性能は市場に大きな反響を生み、そして続く70年代までがリボルバーの黄金期だと言えるだろう。70年代に入ると、アメリカ製品の品質の低下が起こり、職人による手作業に頼っていた多くのコルト製品は大きな影響を受けることになる。そして80年代に入ると、9mmオートピストルがサービスオートとしての信頼を獲得し始め、リボルバーの役割は急激に縮小していった。そしてコルトは90年代後半にはリボルバーの生産を大幅に縮小する。

 

 

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サイドプレートを外すと、磨きこまれた内部パーツが現れる。コルト・ポジティブ・ロックと呼ばれる機構により、トリガーが完全に引かれた状態にならない限り、ハンマーはフレームに固定されたファイアリングピンに触れることはできない。高い安全性を確保したメカニズムである

 

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コルトは多くのリボルバーでリーフスプリングをハンマースプリングとして採用していた。リーフスプリングはコイルスプリングに比較すると均一な製造が難しく、耐久性に劣る場合がある。そのため、コルトでは1挺ずつのトリガーの調整が必要となり、人件費の上昇とともに、均一な製品を作り出すことが難しくなってしまった。これらが最終的な製品価格の上昇と、品質に影響したと言える

 

 

 コルトパイソンはアメリカが豊かな時代に、熟練工がプライドを持って作り上げ、磨かれ、ブルーイングされたモダンリボルバーの傑作であり、再度作り出すために必要な要素は今ではもう失われてしまっている。パイソンはもうシューティングマッチや実戦で使用されることはないかもしれないが、アメリカの銃器の歴史において、欠かすことのできない魅力溢れるリボルバーである。

 

 

TEXT&PHOTO:SHIN

 

 


この記事はアームズマガジン2019年5月号 P.126~133より抜粋・再編集したものです。

 

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