装備

2023/11/17

アメリカ軍特殊部隊が愛用する装備「Crye Precision JPCシリーズ」

 

特殊部隊御用達のプレートキャリア

 

 アメリカ軍特殊部隊の装備で最も有名なメーカーの1つがCrye Precisionだ。同社はニューヨーク州ブルックリンに本拠地を構えるタクティカルギアメーカーで、コンバットシャツ&パンツ、マルチカム迷彩など21世紀の戦闘に欠かせない製品を開発してきた。

 プレートキャリア、JPCシリーズは優れた機能性を秘めており、米軍の様々な特殊部隊で使用されるだけでなく、世界中の軍や法執行機関から愛用されており、米軍特殊部隊の装備を語る上では欠かせない。今回はその装備の魅力を改めて解説しよう。

 

 

JPC (Jumpable Plate Carrier)

 

 世界中の軍や法執行機関に採用されているJPCは、特殊部隊の定番アイテムの1つだ。Crye Precisionが開発したプレートキャリアJPCは試作型をアメリカ軍特殊部隊でテスト納入し、現場の意見を確認。その意見を反映した改良版が2010年のアメリカの銃器装備最大のショーであるショットショーで公開され、翌年には製品版が展示された。

 

 JPCの大きな特徴は拡張性にある。着用者の前後を守るプレートカバー、そしてカマーバンドにMOLLE/PALSシステムを採用することで、各種対応ポーチが装着可能になった。軽量コーデュラナイロン素材を使用することで軽量化にも成功。また身体のサイズに合わせてS~XLを選択できるのも魅力だ。

 

 

 ボディカラーは軍や法執行機関の使用を意識してマルチカム・コヨーテ・レンジャーグリーンを基本色としており、カスタムカラーモデルも存在する。サイズによってMOLLEのコマ数は異なり、写真のSサイズは一番MOLLEのコマが少ない。またモデルによっては、サイズ以外にプレートバックに収納するプレートによってSAPIプレート用とスイマーカット用の2種類がある。任務に応じて多彩に対応する装備、それがJPCだ。

 

フロントパネルを跳ね上げたところ。左右のカマーバンドがベルクロで保持され、ここも胴回りに合わせて容易に調整できる

 

ショルダーはベルクロで保持され、サイズ調整が容易。カバーはストレッチ素材で薄くできている。カバー脇のループは無線機のコードなどを通すために使用される

 

Skeletalカマーバンドシステム。コーデュラ素材とプラスチック系硬質素材を組み合わせたハーネス、表裏にMOLLE/PALSシステム対応のポーチが装着できる

 

 

JPC2.0

 

 JPCの良さを残しつつ、使用者のフィードバックを元に改良されたJPCの発展型――それがJPC2.0である。前面のマガジンポーチ部をパネル化し、肩と腹部にクイックリリース機構を追加。背面に各種バックパネルの装着可能なギミックが加わるなど、JPCと比べてよりカスタムの幅が広がったことが分かる。

 

 

 クイックリリース機構はJPCではオプションパーツとして付け加えることができたが、JPC2.0からは標準装備化。リリースを引くことでスムーズにアーマーを脱げるようになった。またマルチカムブラックがカラーバリエーションに加わったのもさりげないポイントだ。夜間、暗所などの環境で作戦を行なう特殊部隊、法執行機関のために開発され、プロフェッショナルなイメージを犯罪者に感じさせる心理効果もある。法執行機関は従来の装備とカラーを合わせやすく、特殊部隊は夜間強襲任務などで使用する。

 

クイックリリース機構は海上作戦で海中転落してしまった際や、被弾時アーマーの下の患部を見る際など、迅速にアーマーを脱がす必要がある場合に重宝される。今でこそ当たり前のようについている機能だが、当時は画期的なシステムだった

 

JPCの頃からおなじみのSkeletalカマーバンドシステム。この内側にサイドプレートポーチを装着することで側面からの被弾を防ぐことができる。このほかにもカマーバンド全体を覆うデザインのソフトアーマー用ポーチもある

 

JPCシリーズのカマーバンドは背面のMOLLEにストラップを通して固定し、その長さでサイズを調整する。また側面にあるジッパーとMOLLEを使い、バックパネルをがっちり固定できる

 

様々なアイテムを収納できるジップバックパネルを装着した様子。収納部分が大きいPACK ZIP-ON PANEL 2.0、MOLLEを前面に配したMOLLE ZIP-ON PANEL 2.0など、パネルの種類は豊富。任務に応じて付け替えることができる。またパネルはCAGE ARMOR CHASSIS、CPC、AVSなど各種Crye Precisionのアーマーに互換性がある

 

セットアップ例

 

SEALsがクロアチアのZSSと行なったVBSS訓練での写真だ。隊員は、カマーバンド内側に無線機を収納、胸部にはジャガーノート(スマホケース)、腹部はポーチを追加するなど、MOLLEを生かしたセットアップをしている(Photo by DOD)

 

アメリカ陸軍基地フォート・マッコイで射撃訓練を行なうFBI SWAT隊員。JPCのカンガルーマガジンポーチを使用せず、MOLLEにマガジンポーチを装着している。JPC前面フラップの内側に配されたMOLLEへCrye Precisionのグローインアーマーのストラップを通して装着しているのだ。なかなか工夫が凝らされたセットアップだ(Photo by DOD)​​​​​

 

USASOCインターナショナルスナイパーコンペティションに参加したアメリカ海兵隊のMarine Raidersと思われる隊員。JPCの背面には、3連のフラッシュバンポーチと海兵隊員がよく用いるブリーチングツール用のキャリアを右に装着している。スナイパーコンペティションに参加するシューターの場合、バックパックを背負うため背中面はフラットな仕様になっていることが多い。最近はアサルターでも何も備えていない隊員もいる。恐らくメディカルバッグを背負うためか、車輌やヘリの移動のためだろう(Photo by DOD)

 


 

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TEXT:珈琲

 

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