2023/03/12
【装備解説】特殊部隊が使用するカスタムカミースの魅力
民族衣装を着こなす特殊部隊
特殊部隊の任務はダイレクトアクションやテロ対策などの軍事行動はもちろんだが、中には現地住民の支持や協力を得るための民事作戦(民生支援)を行なうこともある。その際には現地で使用される衣服を使用することも多く、たとえばアフガニスタンでの任務の場合、特殊部隊仕様のカミースに身を包んだ部隊の姿が確認されている。今回はこのカスタムカミースについて解説しよう。
サルワール・カミース
サルワール・カミースは下半身に履くサルワールと、上半身に纏うカミースが組み合わさった民族衣装で、ゆったりとしたデザインが特徴的だ。南アジアを中心に着用されており、アフガニスタンの現地住民にも広く親しまれている。
上の写真は2011年6月にアフガニスタンのクナル州で行なわれた映画の日のイベントで、東部特殊作戦部隊所属のCST(※)の女性隊員が子供たちをエスコートしている様子が撮影されている。隊員たちは現地の慣習に従い髪をスカーフで隠し、カミースを着ている。一方でタクティカルパンツを着用し、ベルトに護身用の拳銃を携帯するなど、使いやすいように着こなしている。また上腕部にベルクロやポケットを加えるなどカスタムしたカミースは特殊部隊隊員に愛用されている。
※CST:Cultural Support Team(文化支援チーム)。作戦区域の文化、価値観、知識を学び、現地住民と接することで彼らの信頼を得て、随行する特殊部隊の任務を支援した
CIA SAC
カミースを着用したオペレーターで有名な例として、アメリカの情報機関CIAに所属するSADが挙げられる。2001年同時多発テロを受けて、同年にアフガニスタンに潜入したSADのメンバーは、北部同盟が戦闘で捕虜としたタリバン兵を収容していたカライジャンキーにある捕虜収容所で極秘に尋問作業を行なっていた。その捕虜収容所で起きた暴動と鎮圧までの一連の騒動をドイツの報道機関が捉え、全世界に配信された。その際、SADメンバーはカミースを着用しており、注目を集めることとなった。
※SADは現在、SACに名称を変更している
SACはその内部には戦術活動部隊と呼ばれる非正規戦闘作戦を遂行する実働部隊、SOG(特殊作戦グループ)を有しており、準軍事作戦も遂行することができる。POO(準軍事作戦担当官)とSSO(特殊技能担当官)を有し、今もどこかで米国の安全のために情報を収集し続けている。
STYLING
SAC隊員は作戦区域に潜入するため、アメリカ人、アメリカ政府職員と判断される装備や衣服を着用しない。該当区域の現地住民が使用する衣服を調達する、あるいはメーカー名などのタグを切り取ることで、身元が特定されないように徹底している。基本的に装備はバックパックに収納するため、3day assault packが多用される。多くのメーカーが生産しているが、特定されないようにメーカー不詳のモデルを使用し、サイドストラップには防寒着や風呂敷として活用されるパトゥを固定している。
月刊アームズマガジン2023年4月号ではここで紹介したカミーススタイリングの他にも様々なスタイリングを紹介している。併せてご覧いただければ幸いだ。
この記事は月刊アームズマガジン2023年4月号に掲載されたものです。
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