実銃

2023/06/25

【実銃】名門ワルサーの新たなフラッグシップピストル「Walther PDP」シリーズ

 

 名銃PPQから競技用のQ5 MATCHを経て、究極のストライカーファイアピストルとして誕生したワルサーPDP。今回は名門ワルサーの技術が惜しみなく注がれた最新ピストルのレポートを公開しよう。

 

 

ワルサーピストル 期待の新星

 

 スポーツシューティングの世界において圧倒的なシェアを得ているワルサー。その秘訣は高い精度とトリガーフィーリングにある。つまりは狙ったところに弾が飛び、撃ちたいときにスムーズにトリガーが動く、という「それができれば苦労はしないよ」と言いたくなるような、シンプルかつ難しい命題を真っ向から解決しているのだ。

 一方で、通常のピストル分野においてのワルサーは(あくまで個人的に、だが)ややネガティブなイメージがある。射撃精度自体は最高級のレベルにあると思うのだが、トリガーフィーリングが非常に悪いのだ。その理由は、ワルサー最大の顧客であるドイツ警察の要望に合わせていることにある。暴発防止のため、トリガープルを極端に重くしているのだ。無論、安全意識が高いのはよいことなのだが、それにしてもやりすぎ感がある。これだけ重くしていては、かえって正しい姿勢で射撃ができずに逆効果なのではないだろうか? と訝しんでしまうほどだ。

 そんなワルサーのピストルだが、現在主に展開されているのはストライカーファイア・ポリマーフレームピストルのPPQとそのバリエーションだ。そのPPQの発表後しばらくして、マッチガンとしてPPQをベースとしたQ5 MATCH SFを発表した。これはそれまでのワルサー製ピストルとは違い、競技用ならではの最高峰のトリガーフィーリングを実現した銃だった。そのうえ、バランスを考慮した結果スチールフレームを採用している。ポリマーフレーム全盛期のこの時代に、わざわざポリマーフレームの銃をスチールフレームへと改修したのである。この発表を見た時は「ついにワルサーがキレたか!」と興奮を隠せなかった。
 さらに2021年7月、そのQ5 MATCH SFのテイストを取り入れつつ、PPQを法執行機関向けに進化させたPDPが発表された。発表からしばらく経ち、フランス国内でもだいぶ出回ってきたので今回レポートに踏み切ったというわけである。

 

 

PDP COMPACT 5"

  • 使用弾:9mm×19
  • 全長:210mm
  • バレル長:127mm
  • 重量:740g
  • 装弾数:15発

 

 

PDP Full Size 4"

  • 使用弾:9mm×19
  • 全長:184mm
  • バレル長:102mm
  • 重量:695g
  • 装弾数:18発

 

 今回用意したモデルはPDP COMPACT 5"とPDP Full Size 4"の2挺だ。モデル名はそれぞれバレルとフレーム(グリップ)の長さを表している。PDP COMPACT 5"はフルサイズの5インチバレルにコンパクトサイズのフレームを持ち、PDP Full Size 4"は4.5インチバレルにフルサイズのフレームを組み合わせている。

 先述の通り、PDPのベースはQ5のベースにもなったPPQだ。だがフレーム・スライドともに新規設計で、内部メカニズムが共通という構成になっている。ワルサーP99からの伝統となる、曲面で構成されたエルゴノミクスデザインの握りやすいグリップは健在で、それとは対照的にスライドは武骨な印象となっている。しかし見た目とは裏腹に、ごつごつしたスライドは大きめのセレーションのおかげで非常に操作しやすく作られている。バレル位置については特別低く配置されているようなこともなく標準的。スライド後端にはPPQのものによく似たかまぼこ型のリアプレートが見て取れて、この銃がPPQベースであることを改めて実感できる(もっとも、刻印は「PDP」と彫られているが)。オプティクスレディでドットサイトにも標準対応し、マズル周辺のエッジもカットされていてホルスターに入れやすくなっているなど、モダンピストルに求められる要素は一通り網羅されている。

 

ワルサーのお家芸とも言える、手に吸い付くようなグリップはPDPでも健在。それどころかさらに進化して、よりコントローラブルな射撃を実現している。そんなグリップと相反する武骨なスライドは一見不格好にも見えるが、一度手にするとこれにも機能的な理由があることがわかる

 

立方体のような形状のスライド。リアプレートはPPQのものと同一規格のものが使われているが、刻印はしっかり「PDP」と彫られている

 

 マガジンキャッチは左右選択式だが、スライドストップは現代の銃らしくアンビ。マニュアルセーフティの類はなく、トリガーセーフティが設けられている。そのトリガーには「パフォーマンスデューティトリガー」と銘打たれており、非常にキレのある撃ち心地を実現している。。グリップは手に吸い付くような優れたデザインで、それに加えて側面に「パフォーマンスデューティテクスチャー」と名付けられたチェッカリングが施されているおかげで、オイルなどにまみれた手であっても滑ることなく握ることが可能だ。グリップにはもうひとつ、前方下部に「レッドドットエルゴノミクス」と呼ばれる、緩やかに前方に突き出すカーブが施されている。これはワルサーの往年の名銃、PPKのマガジンバンパーのDNAを受け継いだものと思われ、グリップの安定感と、トリガーフィーリングの向上をもたらし安定した射撃を実現した。さらに射撃精度を上げるため、チャンバーの前方にテーパーを付けて弾薬を固定する「ステップアップチャンバー」を採用するなど、ワルサーの持つテクノロジーと経験が詰め込まれた意欲作となっている。

 

マガジンハウジングはマグウェルなどの機能がない、シンプルなもの

 

 この銃の細部と実射した際のレポートは月刊アームズマガジン2023年4月号に掲載されているので、気になった方は併せてご覧いただければ幸いだ。

 

 

Special Thanks to Le cercle de tir de Wissous
Photo&Text:櫻井朋成(Tomonari Sakurai)

 

この記事は月刊アームズマガジン2023年4月号に掲載されたものです。

 

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