2023/04/15
【実銃】魅力的なハンドガンをカスタムする「BAR-STO PRECISION MACHINE」
魅惑のカスタムガン
カスタムガンが欲しい。まずは精度と信頼性が高く、美しくカッコ良いカスタムなら最高である。ガンスミスに丸投げするか、例えばナイトホークなど、一流のカスタムファクトリーが提供しているテーマ別のセミカスタムを手に入れるなど、そのチョイスは限りない。ただしセミオートピストルの場合は、現在自分が所有しているガンに、マッチグレードのカスタムバレルをきちんとフィッティングしてもらうだけで、それこそ見違えるほど魅力的なハンドガンに生まれ変わるということを、ご存じだろうか。
バレルの重要性
オートピストルの心臓ともいえるのが“バレル(銃身)”である。 発射ガスに蹴っ飛ばされたブレット(弾頭)は無理やり強力な回転を与えられ、ライフリングを刻まれて、マズルから飛び出ていく。
このバレルがいかに精細に製作され、そしてスライドとフレームにフィットされているかで、そのガンの精度が決まってくる。理論上はバレルの工作精度が高く、ショットごとにバレルが同じ位置に戻ってくれば、何発撃っても50ヤード(約45.7m)先のターゲットには弾痕はひとつ、ということになるはずだ。
まあ現実には、弾薬の均一性に問題があったり、汚れなどの外的要因もあって、可動部分の多いオートピストルで精度を上げるのは並大抵のことではない。また一般的にそれほど精度の高いガンが要求されているかというと「そうでもない」というのが、現実ではなかろうか。「ガンの精度が良くても、シューター自身の精度が低い(つまりヘタという意味)ので、それほどの精度は必要としない」という考え方も言い得て妙の感がある。
BAR-STOバレル
昨今では、CNCマシンの普及によって工作精度が著しく向上し、いわゆる大量生産のファクトリーガンでも、25ヤード(約22.9m)で3 〜6インチ(約7.6 〜15.2cm)の集弾性能を持つ個体が少なくない。これはこれで、必要充分の精度といえる。
ただし、これがカスタムガンともなると話は大きく変わってくる。50ヤードでヘッドショットを狙いたいカスタムの世界では、25ヤードで1インチ(2.54cm)以下の精度は必要だが、かといってトリガーを引けば必ず発射可能という信頼性をおざなりにするわけにもいかず、せめて最低500発はクリーニングなしでファンクション(機能)してほしい。つまりカスタムガンでは、精度と信頼性という、いわば相反する要素を、高い次元で絶妙にバランスさせねばならない。
我々のような旧世代にとって、カスタムの第一歩は “BARSTO”のステンレスバレルに換装することであった。そして、精度に不満のある場合は、アーヴに電話する、というのが、最適な解決策だったのだ。
アーヴ・ストーン・ザ サード(Irv Stone Ⅲ)。40年以上の経験を持つ生粋のマシニスト/ガンスミスである。現在はサウスダコタ州に会社を移してしまったが、長年マスタークラス競技シューターだったアーヴの経験と知識、そして最新の工作機器と熟練の技術の上に成り立っているのが、“BAR-STOプレシジョンマシン”が手掛けるバレル/カスタムガンなのだ。
凄腕のガンスミス
筆者がシューティングを始めた1980年代、.45オートのカスタムといえば、まずはバーストバレルをインストールしてもらうことにあった。生産量がさほど多くないバーストでは、まずアーヴにコンタクトしてバレルの在庫を確認すると、大体の生産スケジュールが定かになる。その日程に合わせてガンを送ると、バレルをインストールして送り返してくれるというものだった。費用はバレル代とセミフィットバレルなら65ドルの工賃のみである。
何度かやり取りをした後は、ほとんどのガンスミシングも引き受けてくれるようになり、2000年代に入ると自社ブランドのハンドガンをリリースすべくマニファクチャーライセンスも取得して、2011や1911を続々とリリースし始めた。
これらのモデルに派手さはないが、当然のごとく定評のあるマッチグレードステンレス・バーストバレルを装備しており、その精度とリライアビリティ(信頼性)はお墨付きであった。
現在でもバレルのインストレーションだけでなく、スライドのカットや前後サイトの再インストール、またはポリマーグリップのリシェイプからステップリングまでこなしてくれる。アーヴに任せて安心なのは、その経験に裏打ちされた技術だけでなく、彼自身がかなりシリアスな競技シューターでもあり、さらにはポリスデパートメント(警察署)やLE(ロー・エンフォースメント:法執行機関)等、その道のプロフェッショナルたちと数々のプロジェクトを経験してきた蓄積がある点だ。
バーストバレル。1本150ドルのカッコいいドロップインバレルに賭けてみるのもいいが、きちんとハンドフィットされたバーストのブルバレルが燦然と輝いて見えるのは、筆者だけだろうか。
Photo&Text:Hiro Soga
この記事は月刊アームズマガジン2023年5月号に掲載されたものです。
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