2018/08/21
タナカ SIG P220 IC 陸上自衛隊 ブローバックガスガン 製品レビュー 【2018年7月号掲載】
タナカ
SIG P220 IC 陸上自衛隊 ブローバックガスガン
※実射シーンとインプレッションはこちらの動画をご覧ください。
陸自ファンに人気のP220が実射性能を大幅に向上させてグレードアップ
タナカの傑作ガスブローバックハンドガンSIG P220 陸上自衛隊が「SIG P220 IC」という名でフルリニューアルされた。そのポイントは実射性能および実用性の向上。名称にもなっているフレーム先端まで一体化された金属製シャーシIC(Integrated Chassis
system /インテグレーテッド・シャーシ・システム)を採用。ブローバック時のフリクションロスが低減され、ブローバックスピードがアップした。ブローバックエンジンはマグナブローバックメカを搭載。可変ホップアップはホールドオープン状態で工具を使わずに調整が可能となった。マガジンの装弾数は20 発に増加され、マガジン前部のスリットに給弾口が追加されている。外観面では刻印やシリアルナンバーが変更され、表面も実銃同様の素材による色の違いが再現されている。従来型をお持ちの方なら、撃ち味、命中精度ともにグレードアップしたP220 IC にきっと驚くはずだ。
スライド&フレーム右側の刻印は、製造年月が「1986.11」になり、シリアルナンバーが「08782」に変更された
スライド左側の「P」の刻印は従来型よりも前に移された。スライド左側の刻印にある「NMB」は製造元であるミネベアミツミ(Nippon Miniature Bearing) の略称である
従来型ではフロントサイト下部にテーパー状の段差があったが、P220 IC ではオミットされてフラットになった
SIG のハンドガン独特のアールのきついトリガー。トリガー前面にはピッチの細かいセレーションが施されている
フレーム左側グリップ上部に設けられたデコッキングレバーとスライドストップ。もちろん実銃同様にハンマーをデコックできる
グリップ左側下部にはランヤードリングが追加されている。マガジンキャッチはヨーロピアンタイプ
スリムなマガジンの装弾数は20 発。マガジン前部のスリットには給弾口が追加されて装填しやすくなった
実銃同様にスライドをホールドオープンさせた状態でテイクダウンレバーを下方に90度回すとフレームからスライドが分離できる
ブローバックエンジンには熟成が重ねられたマグナブローバックメカがチョイスされている
完全新規設計のチャンバーと可変ホップアップシステム。ホップアップはチャンバー後部にあるダイヤルを回して調整する
狭いフレーム内にハンマーやシアはもちろん、ガスブローバックガンの要であるノッカーなどが巧みに組み込まれている
P220 IC の名称になっているユニット化された「インテグレーテッド・シャーシ・システム」。安定したスムーズなブローバックアクションの実現はもちろんのこと、耐久性や生産性を重視したデザインとなっている
タナカ・森氏に聞く SIG P220 IC 自衛隊開発の裏側
毛野 今回のSIG P220 IC の開発の経緯を教えて下さい
森 ペガサスを搭載したガスリボルバーや、AIRシリーズのボルトアクションライフルの開発などに注力していたことで、オートマチック系のバージョンアップまで手が回っていませんでした。今回、P220を選んだ理由は人気があるからです。人気があるがゆえに、バージョンアップできていないことにちょっと負い目を感じていた部分はありました。そんな経緯から手をかけようとなり、ようやくまとまったところなのです。
毛野 ICを導入した理由を教えて下さい
森 当社ではヘビーウエイトモデルやメッキモデルなどバリエーションが多いため、フレームなどの樹脂の成型物の寸法をバリエーションごとに変えていかなくてはならないのです。そこで、外側の成型物に左右されず、機関部の変更だけで済む、バリエーションごとの性能の変化が起きないようにしたかったのです。それと、これは感覚的なことなのですが、インナーシャーシが内蔵されていることで剛性感が増し、丈夫に感じる、安心感が出る、愛着が沸くのではないかと考えました。
毛野 従来の製品との違いは何でしょうか?
森 当社はモデルガンメーカーなので、パーツ構成や配置の仕方など、今まで良くも悪くもモデルガン的な要素が前面に出ていました。そこで今回はガスガンと割り切ってガスガン専用の設計から始めました。エアガンとしての実用面を追求しましたが、それでもタナカらしさが出たものとなりました。タナカらしさとは、細部に渡ってこだわるところでしょうか。効率化を目的に作っているものの、寸法が必要な部分はしっかり採寸するなど、1 個1個手をかけて作ったものが、結果的に出来上がりました。コンセプトはシンプルかつコンパクトに収める。それでも細かい部分にこだわったものになりました。
毛野 マグナブローバックメカを採用した理由は?
森 いろいろな要因はあるのですが、BB 弾を発射した後、ガスを100%ブローバックアクションに使える。無駄のないガスの切り替え構造は優れており、それは捨てがたい魅力です。また、マグナブローバックメカのポテンシャルをどこまで引き出せるかという挑戦でもありました。スリムなシングルカアラムマガジンでどこまでいけるか。初弾から最終弾までの弾速の低減を極力抑える、省エネなアクションが実現できるのか。結果としてうまくいったかと思います。命中精度についても、新規のラバーチャンバーを導入するなど、マグナブローバックメカの特性を理解しつつ、さらに向上させました。ガスリボルバーのバージョン2 モデルのように、新しいものをドンドン取り入れるというよりは、ひとつのシステムや製品を大事に育てたい、熟成させたいという思いが強いです。
毛野 今後の展開について教えて下さい
森 オートマチックピストルはリボルバーやボルトアクションに比べて開発がやや後手に回っていた部分があったので、今後はガスガン、モデルガンともにオートマチックにどんどん力を入れていきます。
聞き手 : 毛野ブースカ、松尾哲司
IG P220 IC について熱く語ってくれたタナカの森 大樹氏。今後はオートマチックピストルが続々登場するとのこと
DATA
- 全長 : 208mm
- 全高 : 141mm
- 全幅 : 36mm
- 重量 : 740g
- 装弾数 : 20発
- 平均値 :67.3m/s(0.45J)
- 集弾性 : 68mm(20m)
- 価格 : ¥24,800(税抜)
- お問い合わせ先 : タナカ
初速(m/s) | |
1発目 |
67.4 |
2発目 |
67.4 |
3発目 | 67.6 |
4発目 | 67.6 |
5発目 |
67.5 |
6発目 | 67.4 |
7発目 | 67.4 |
8発目 | 67.1 |
9発目 | 67.0 |
10発目 | 67.0 |
TEXT:毛野ブースカ