装備

2019/01/11

Tactical Gear Laboratory ―戦術装備研究所―【2019年2月号掲載】

 

装備を愛する、現代の騎士たちに捧ぐ

 

Tactical Gear Laboratoryでは魅力的なタクティカルギア(装備)を調査、研究していく。サバイバルゲームをより深く楽しむために、装備そのものだけでなく装着方法も紹介していこう。

 


 

Shalwar Kameez シャルワール・カミース

 

Tactical Gear Laboratory ―戦術装備研究所―

 

 シャルワール・カミースは、着丈の長いブラウス(カミース)と、ゆったりとしたシルエットのパンツ(シャルワール)のセットで着用される、インドやパキスタンなどの南アジアやアラブ地域で着られている被服だ。シャルワールはウエストが1mぐらいあるのが普通で、腰ひもを使って絞って履く。パキスタンの隣国アフガニスタンでも着られている。首都や大型都市部ではジーンズのような西洋の衣類を着た若者が増えているが、アフガニスタン全土ではシャルワール・カミースを着用している人が多い。アフガニスタンやパキスタン、そしてイエメンやシリアで活動する過激派集団の多くがシャルワール・カミースを着用しているのは、その西洋文明への排他的な思想の影響もあるようだ。

 

Tactical Gear Laboratory ―戦術装備研究所―

シャルワール・カミースの上に巻いている大きな布(およそ2m×1.5m)は、パトゥと呼ばれるウール製のストールだ。防寒着として使用する以外にも、風呂敷のように荷物を運んだり、礼拝時の敷物として使うこともある。羽織っていると銃や装備が見えないという利点もある

 

Tactical Gear Laboratory ―戦術装備研究所―

シャルワール・カミースには基本的には胸にしかポケットがないため、携行品を収納するにはベストを着るのが一般的だ。シャルワール・カミースをオーダーした際に同じ生地でベストもオーダーすることが多いようだ

 

Tactical Gear Laboratory ―戦術装備研究所―

民間人も自衛のためにAKなどのライフルを持つ。中東ではAK用の装備が必要となるため、ローカルメイドの簡素なモデルを作るテーラーもある。中国軍の五六式チェストリグに似たデザインで、背中で縛って固定する

 

 インドでは装飾がなされて配色もきらびやかなシャルワール・カミースが多いが、反対にアフガニスタンでは無地でシンプルなデザインが多い。特に白が好まれるのは、白が神聖な色とされるからだ。富裕層は高級生地を用いた多くのシャルワール・カミースを所有しているが、貧困層では代々使い回す場合もある。最近では安価な中国製品が現地でも流通しているが、シャルワール・カミースは本来フルオーダーメイドだ。生地を選び、自分の属する宗派や地域、部族の伝統的なデザインになるように作る。襟や袖口のデザインや留め方だけでなく、裾の長さも違いがあるのだ。

 

Tactical Gear Laboratory ―戦術装備研究所―

カミースはゆったりした作りの裾の長いシャツだ。シャツの長さはその部族によって違うが左右は腰あたりまでスリットが入っていて歩行に支障ないデザインになっている

 

Tactical Gear Laboratory ―戦術装備研究所―

パコールはウール製の帽子で、巻き上げることでサイズや形状を整えられる。現地の若者は個性を表現するためにパトゥの巻き方やパコールのかぶり方でおしゃれする

 


 

Custom Kameez

 

Tactical Gear Laboratory ―戦術装備研究所―

 

 アメリカやヨーロッパの特殊部隊員は中東での作戦行動で地元民が着るシャルワール・カミースを着用している。その姿が大きく注目されたのは、2001年の同時多発テロ以降アフガニスタンへ派兵された彼らの姿が多くの報道機関によって放送されたからだ。特にアフガニスタンのタリバン捕虜収容所における反乱で姿を見せた、CIA職員のカミースとタクティカルパンツを組み合わせた姿は印象的なものとなった。シャルワール・カミースは遠目になら住人に偽装でき、現地の気候に対応できる衣類としての実用性を兼ね備えている。また、地元民への敬意を表し、親近感を持ってもらうための心理的効果を期待しているとも言われている。彼らが着用するカミースはスタンダードなデザインのもの以外に、戦闘服と同じような機能を持たせたカスタムされたものを着ることもあるのだ。

 

Tactical Gear Laboratory ―戦術装備研究所―

カミース自体がオーダーメイドであるため、カスタムの自由度は高い。コンバットシャツと同じように両腕にパッチを貼るためのベルクロが縫製されたものや、首元や袖口をベルクロでサイズ調整できるようにカスタムされたものが多い。ニーリングした際に、裾が膝にかからないように丈を短くしているのも特徴的だ。戦闘を意識したカスタムといえるだろう

 

Tactical Gear Laboratory ―戦術装備研究所―

マガジンポーチ以外にさまざまなポーチが縫製されたチェストリグなら、無線機やハンドガンを収納することができる。Mayflower R&C UWチェストリグIVのようなオールインワンスタイルのモデルが特殊部隊には愛用されている

 

Tactical Gear Laboratory ―戦術装備研究所―

Mechanix Wearの最新グローブは、タッチスクリーンに対応可能であり、汎用性の高さと世界中で流通していて入手が容易なことから非正規戦闘部隊にも愛用者が多い

 

Tactical Gear Laboratory ―戦術装備研究所―

難燃性素材を用いたDirect Actionのビーニーキャップ。ビーニーキャップは頭部を保護するだけでなく、現地のイスラムキャップに似たデザインというカモフラージュ効果を考慮している

 


 

撮影協力(各装備)

※各アイテム毎のお取扱い店については本誌記事にてご確認ください

 

MODEL:Carlos
TEXT:Ghost(Ghost in the Dark)
PHOTO:黒田 敏之

 


この記事は2019年2月号 P.148~151より抜粋・再編集したものです。

 

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