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2021/08/21

カイデックス・ホルスターを作ろう!! ~成型編~【ホルスターDIY徹底解説】

 

ホルスターをDIYする

 

 現代のホルスターの主流となっているカイデックス・ホルスターは素材が加工しやすく、自作することが容易である。今回は前編で下準備をしたホルスターをいよいよ成型していく。その様子を解説するので、これから自分でホルスターを作ろうと思っている方はぜひ参考にしていただきたい。

 

 


 

カイデックスの成型

 

 さて、いよいよカイデックスを成型しよう。まず、必要な分を切り出そう。今回は2mm厚カイデックスを使用する。1.5mm厚は加工しやすいが、厚みのある物体に使用すると歪みやすいので注意。2mm厚が加工しやすさと強度のバランスがいい。さて、完成イメージ図が縦140mm×横80mmだったので、厚みなどを考慮し、さらに余裕を持たせて縦180mm×横300mmを使うことにした(完成サイズギリギリだと加圧したときに歪みが出ることがある。充分に余裕をとったほうがいい)。

 

切断にはPカッターを使う。定規に沿って、軽く1 ~ 2回ほど浅い溝を彫ったら、繰り返し彫って溝を深くしていく。ある程度まで掘り進めたら、カイデックスを折り割る

 

 成型はカイデックスを専用のプレッシャーフォームで挟み、上下から木板等で圧力を加えることで行なう。全体に等しく圧力を加えられる大型のプレス機があれば最適だが、そんなものは一般家庭には無いので私は木工バイスを使用している(1個¥6,000ほど)。木板は右の写真のように一辺をナイロンストラップで繋げている。こうしておくと一人でも作業がしやすい。薄いもの(ナイフや弾倉)用、厚いもの(ハンドガン)用、でストラップの長さを変えている。また、なるべく全体に圧力が等しく加わるように、厚いもの用は木板を二重にしている。

 

カイデックスの成型に必須のプレッシャーフォーム(発泡ウレタンシート)は、マトリックス・アイダさんで取り扱っている(大型サイズ30mm厚×330mm×500mm ¥3,300)

 

加熱・加圧をするまえに、プレッシャーフォームの上にカイデックスやハンドガンを置いて、位置を確認しておこう

 

カイデックスの加熱はヒートガンを使っている。オーブントースターを使う人もいるようだ。ヒートガンは、写真のように熱がこもるように箱に入れて使うといい。カイデックスは高温になるので、軍手必須!

 

カイデックスは加熱しすぎると表面が溶けてテカテカになってしまう。これを防ぐため、裏面から熱風を当てるとよい

 

カイデックスに“ コシ”が無くなりフニャフニャになったら、成型に入ろう。カイデックスが冷めないように、ここからは迅速かつ丁寧に作業を進めよう(迅速な作業のためにも、最初の位置確認が重要だ)

 

カイデックスは全体を等しく包むように。凹部などを指でグイグイ押したくなるが、下手に部分的な圧力を加えると歪みの原因となるので注意

 

プレッシャーフォームを重ねて、その上から木板で挟み込む。前述のとおりストラップで連結してあるので、片手で作業できる

 

木工バイスを2 ヵ所に取り付け、全体に等しく圧力が加わるようにする。「これでもか!」というくらい、しっかり圧力を加えること

 

プレッシャーフォームが隅々まで加圧して、カイデックスがハンドガンに密着、きれいなシルエットのホルスターになる(加圧が足りないとボヤけたシルエットの緩いホルスターになってしま)。加圧時間は5 ~ 8分ほどがいいだろう

 


 

切削加工

レンタル工作室を使おう!

 

 

 成型できたカイデックスに完成イメージ図に従ってカットラインを描き込み、切削作業をすすめていくわけだが、ここから先の作業は電動工具が必要になってくる(手作業でも出来ないわけではないが、かなり労力がかかる)。とはいえ、自宅に電動工具を持っている人は少ないだろう。また、電動工具は騒音も発生することから、その意味でも一般の家庭では難しい。
 そこでオススメしたいのが、レンタル工作室の利用だ。最近のDIY人気の高まりから、さまざまな電動工具を備えた時間貸しの工作室が増えている。今回は千葉県松戸市にある「工作室アルタイル」さんを利用させていただいた。

 

工作室アルタイル

 

千葉県松戸市根本89-1 
http://k-altair.jp/

営業時間:11:00 ~ 20:00(最終受付19:00)

[料金]

  • 入会金:¥3,300(学生 ¥1,500) 
  • 使用料:30分 ¥880 / 180分 ¥2,530 / 1日 ¥4,950(学生 ¥4,620) 
  • 工具類は時間内使用自由(一部、別料金)

 

 

 切断はバンドソーを使用した。高速回転する帯状の刃により切断する工具で、直線や大まかな曲線を切断できる。似たような工具に卓上糸ノコギリがあるが、あちらはより細かい作業に適している。なお、前編で紹介したアクリルや木製の治具も、こうした電動工具を使って製作するといいだろう。

 

バンドソーは大まかな外形の切断に使おう。カイデックスをスイスイと切断することができた。あとで削って整えるので、余裕を持たせた切断がお薦めだ

 

細かいところを切断するときは、木片などを利用しよう。電動工具を使うときは、事故に充分注意すること!

 

表裏でカットラインが異なる部分は、電動リューターの丸鋸ビットで切断した。なお、アルタイルさんに電動リューターは置いていないため持参した

 

カットラインに沿って切り出すと、一気にホルスターらしくなってきた。切断面はまだ荒いため、これから削りを入れて整えていく

 


 

削って仕上げていく

 

 

 バンドソーなどで大まかに切断したら、削って仕上げていく。まず使うのがベルトサンダー。切断面を削り、平面にしていくことができる。また、角を当てれば曲線にすることもできる。くぼんだ部分や細かい箇所は、電動リューターのヤスリビットを使うといいだろう。なお、削りすぎないように、たびたびハンドガンを入れてグリッピングなどを確認したほうがいい。

 

最後はサンドペーパーで切断面を仕上げる。400番があれば充分だと思うが、こだわる方は600番や1000番で、より滑らかに仕上げてもいいだろう

 


 

ネジ穴を開ける

 

 アダプターを固定する裏面の3 ヵ所、テンション調整用の1 ヵ所、合計4 ヵ所に穴を開ける。まず、位置を確認してセンターポンチで目印を穿っておくと間違いがない。目印に従い、卓上ボール盤で穴を開ける。アダプター固定用、テンション調整用とも、使用するシカゴスクリューのメスネジ首下径にあわせた穴を開けよう。

 

センターポンチでネジ穴の目印を打つ。前編で紹介したT字型治具はネジ位置に穴を開けており、写真のようにセンターポンチのガイドとして使うことができる

 

センターポンチで付けた目印の位置に、卓上ボール盤で穴を開けた。ハンドドリルでも穴を開けることはできるが、真っすぐ垂直に加工できるボール盤のほうが正確だ

 


 

レーザーカッターでスリットを刻む

 

 工作室アルタイルさんにレーザーカッターが設置されていたので、試しに使ってみることにした。大きな段差のある面には使用できないとのことなので、比較的平坦な前方部分にクサビ型のスリットを入れてもらった。こちらで描いたイラストデータ(JPEG)を渡すと、スタッフさんが機械を操作しカットしてくれた。使用料は時間制で25分¥2,750(会員¥1,980 /学生会員¥1,980、データ制作料¥500 ~)。

 

レーザーで焼き切っていく。蒸発したガスがカイデックス表面を焦がしたり溶かしたりするので、カットするときはマスキングしておくように

 

カット終了。切断面はとてもシャープで、カッコいいスリットを刻むことができた。なお、切断面は焦げて黒ずむため、暗めの色のカイデックスが適しているかもしれない

 


 

ネジ類の取り付け

 

 テンション調整用には、レプマートさんの「スクリューセット カイデックス用ホルスターパーツ留め具 本体用」を使った。テンション調整のため治具で10mm厚の空間を設けているので、セットに付属する11mm厚ゴムスペーサーを内部に挿入し、ネジで固定した。ハンドガンを挿してみたところ、ややタイトだったため、2mm厚ゴムスペーサーを追加して厚みを出し、ネジで微調整した。自作ホルスターはタイトすぎたり、緩すぎたり、クオリティが安定しないことが多いので、テンション調整機構はあると便利だ。
 裏面にはサファリランドの「クイック・ロッキング・システムキット」を取り付けた。既存の汎用アダプターを使用できるようにすることで、自作ホルスターながら実用性がグッと高まった!

 

レプマートさんのスクリューセットは、メスネジの首下が長いので厚みのあるハンドガンのテンション調整用にピッタリだ。またワッシャーが付属するのも嬉しい

 

ホルスターの堅さ(緩さ)にあわせて、挿入するゴムスペーサーの厚みを変えよう

 

サファリランド「クイック・ロッキング・システムキット」を同社の純正ネジで取り付ける。純正ネジが無い場合は、シカゴスクリューに2mm厚などのゴムスペーサーを噛ませて使うといいだろう(やや穴径が大きいのでシカゴスクリュー単体だと不安定)

 


 

完成!

 

 

 完成したホルスターをサファリランド製CUBLベルトループに取り付けてみた。レーザーカッターで入れたスリットが、いいアクセントになっていると思う。また、ダークレッドを使ったことも黒いホルスターに見慣れていると新鮮かもしれない。

 

治具を使ったことで開口部が大きく広い、挿入しやすいホルスターとなった

 

トリガーガード下側ギリギリまでホルスターはカットした。こうすることでグリッピングを妨げない

 

スリットがアクセントになっている。こうした飾りを加えるのもオリジナルホルスターならではの楽しみだ

 

 カイデックスの工作は、それほど難しいものではないので、ぜひチャレンジしてほしい。たとえ失敗しても熱すれば板状に戻るので、トライ&エラーで自分の理想のホルスターを作ってみよう!

 

商品取り扱い店舗

 

この記事は月刊アームズマガジン2021年8月号 P.62~69より抜粋・再編集したものです。

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