2021/08/11
価格40万以上! 米軍特殊部隊スナイパーも愛用したスコープを解説!!
米軍特殊部隊のスナイパーも愛用してきたスコープ
プロのフォトグラファーであると同時にライフル射撃が趣味の須田壱が愛用しているスコープ「NIGHTFORCE NXS 5.5-22×50」は、コストパフォーマンス、信頼性の高さに定評があり、米軍特殊部隊のスナイパーにも愛用されてきた。
今回は前回に引き続き、そのスコープの実力を解説していく。
高い性能と機能性
ランニングターゲット競技においては、狩猟と同様にレンズの明るさは有効だ。屋外射場の移動標的は日陰になっている場合が多く、周囲との明暗の差が激しいため明るいレンズの方が素早く標的を発見できる。
競技では、ライフルはストックを腰の位置に添えて待機し、標的が見えてから挙銃(きょじゅう=銃を構える)する。その動きの中で素早く標的を視認。銃をスイングさせながらレティクルを標的に乗せ、ミルドットを使ってリードを取りつつトリガーを引く…というのが一連の射撃のプロセスで、勝負は一瞬となる。その際、レティクルがずれていたり、パララックス(視差=レティクルと標的の像がずれて見える)が大きいスコープでは勝負にならず、その点でもNXSは優れた信頼性と性能を発揮する。
そのほかエレベーションノブ、ウインデージノブ、サイドフォーカスノブの操作性のよさ、正確さ、そして耐久性も見るべきポイントと言えるだろう。NIGHTFORCE NXSは幅広い環境や競技に対応することができるのだ。
各部の機能解説
①Remington M700
筆者がランニングターゲット競技に愛用するレミントンM700。使用弾は.223(5.56mm×45NATO)の弱装弾で、この銃にナイトフォースNXS 5.5-22×50を載せている。
②バトラーキャップ
大事なレンズを傷や汚れから守るキャップ。蓋がヒンジ式で外す必要がない。
③接眼レンズ
自分側(覗く方)のレンズ。アイレリーフ(自分の目とスコープとの間隔)は95mmに設定されており、これができていないと正確に見えず視野も狭くなる。
④対物レンズ
ターゲット側の対物レンズは50mmと大きさは充分。大きいほど採光しやすく明るく見える(ただし大きすぎても邪魔になる)。多層の反射防止マルチコートにより前から見るとグリーンがかっており、100%近い透過率を実現。
⑤エレベーションノブ
銃弾は弾道を描くので、距離によって着弾位置が上下する。そこで、例えば300mでレティクルの中央に命中するよう調整することをゼロイン(零点規正)という。エレベーションノブは、ゼロイン時にレティクルの上下方向を調整するノブ。この機種にはゼロストップ(ZeroStop)機能がある。例えば急遽100m先の目標を撃つためにエレベーションを動かしても、300mのゼロインにゼロストップをかけておけば、ノブを戻す際回した回数を覚えてなくても300mの位置で止まる、という便利機能だ。
⑥水準器
弾はライフリングに噛んで回転しながらバレル内を進むため、銃の角度が変わると着弾点が変わってくる。そこで銃が水平な状態にあるか確認するために、写真のような市販の水準器を装着している。
⑦フォーカスノブ
フォーカス(焦点)調整を行ない、パララックスを抑えピントを合わせるためのノブ。10倍を超えるスコープでは特に必要な機能で、低倍率のスコープの場合はフォーカス調整がないものが多い(だいたい100mの距離で合わせてある)。このノブを引っ張ると、レティクルが発光する(イルミネーションレティクル)。
⑧ズームリング
ズームリングを回すと、この機種の場合5.5倍~ 22倍のズーム(拡大)ができる。ズームリング後方にはパララックス調整リングがあり、接眼側で標的とレティクルを一致(視力の違いで変わる)させる視度調整ができる。
⑨ウインデージノブ
レティクルを左右方向に調整するノブ。ゼロイン時に加え、横風で弾着が変わる時にも調整のために使う。
⑩スコープリング
ランニングターゲット競技で使用するため、軽量なアルミ製のリューポルドMark 4 30mm Mediumをチョイス。チューブとの接触面はコンパウンドで磨いてアタリを取っている。
ナイトフォースNXSの視界
ここではスコープを覗いた際の視界をご覧いただきたい。50m先の直径30cmのブルズアイターゲットを見てみた。カメラレンズ越しなので完全ではないが、実際の印象としては高性能スコープらしくとにかく明るく、像がクッキリしていることに感動すら覚える。
まとめ
スコープの性能は日進月歩で、少し前では考えられなかった6-60×や8-80×など10倍比率のズームスコープも登場している。もっとも、こうした実銃用の高性能スコープは非常に高価でエアガンに載せるにはオーバースペックもいいところだが、お金のある方なら最高の製品に触れ所有欲を満たす、という楽しみ方はあるだろう。
筆者の場合は射撃競技と狩猟で使う、という明確な目的があったので、奮発してその当時最高のものを買った訳だが、その選択は今でも正しかったと思う。今回はそのNXSについて解説したが、月刊アームズマガジン2021年8月号ではさらに詳細なレポートを掲載している。併せてお楽しみいただければ幸いだ。
Photos:須田壱(スタジオゼット)
Text:須田壱(スタジオゼット)/アームズマガジンウェブ編集部
この記事は月刊アームズマガジン2021年8月号 P.46~51より抜粋・再編集したものです。