実銃

2021/03/08

【実銃】アメリカナイズされたAKスタイルショットガン「FOSTECH ORIGIN 12」

 

 ロシアのサイガに代表されるマガジン着脱式のセミオートショットガンは、リロードの速さに加えアサルトライフルに近い操作性を持つことから、3ガンマッチなどの射撃競技用としても好まれている。そのサイガがクリミア併合に伴う対ロシア制裁の影響によりアメリカやEU圏内での入手が困難となったことから、こうした銃への需要に応えるべくアメリカのFOSTECHは、サイガと同様のAKスタイルのセミオートショットガンを新たに開発した。今回はその実銃、ORIGIN 12のレポートを紹介する。

 


 

ショットガンの有効性

 

 離れたターゲットを倒すための武器の主流が弓や投石器から銃や大砲へと進化するなかで、広範囲に多数の弾丸をまき散らす「散弾」も出現した。弾頭が増える一方で1つあたりの大きさは小さく殺傷力は低下するものの、1回の射撃で有効弾を与える確率は1発の弾よりも高くなる。

 そして散弾を撃てる「ショットガン(散弾銃)」はご存知のように狩猟において広く用いられるようになり、飛翔する鳥のように動きの素早い動物に対しても有効弾を与えやすくなり、そこからクレー射撃という競技も生まれた。

 対人戦闘においてもショットガンの有効性は確認されており、古くはアメリカ独立戦争で用いられたほか、第一次大戦ではポンプアクションのウィンチェスターM1897、通称「トレンチガン」をアメリカ軍が使用。狭い塹壕内での近接戦闘で威力を発揮した。第二次大戦やベトナム戦争でもやはりアメリカ軍が使用し、主にジャングル戦で活躍しており、現代の戦闘でも有用であることは実証されている。

 とはいえショットガンの主流は狩猟やクレー射撃のようなスポーツシューティングやホームディフェンスであったことから、ポンプアクションやセミオートであっても多数の弾薬を素早く装填できる着脱式マガジンではなく、固定されたチューブマガジンを装備していることが多い(信頼性が高く、スリム化できるという面もあるが)。しかし、近接戦闘におけるメインウェポンとして使うのなら、やはりより素早く複数のショットシェル装填できる着脱式マガジンの方が有利な場面もあるだろう。

 そこで今回紹介するのが、着脱式マガジンを採用したORIGIN 12である。

 


 

FOSTECH ORIGIN 12
Long Barrel Shotgun

 

 

  • 口 径:12ゲージ
  • 全 長:890mm
  • バレル長:470mm(18.5インチ)
  • 重 量:4,200g
  • 装弾数:5/8/10/20/30発

 

着脱式マガジンを採用した「ORIGIN 12」

 

 着脱式マガジンを採用する数少ない例の一つが、ロシアのサイガだ。だが、2014年のロシアによるクリミア併合以降、対ロシアの制裁措置にともないロシア製の銃火器は輸入に制限が課され、EU諸国やアメリカではサイガの入手が困難となった。ならばこちらで作ろう、と開発されたのがアメリカのフォステック(FOSTECH)が手がけたORIGIN 12である。このショットガンはサイガ同様のガス圧作動方式を採用し、本体にポリマーを多用しているのが特徴だ。サイガ12と比べてひと回り大きく直線的。デザインもより近代的で、面構えもゴツく派手で、映画やゲームで好まれそうな雰囲気だ。

 

ガスレギュレーター(フォアグリップの前端、バレルの上)は工具不要(ショットシェルの薬莢底部をはめ込んで回す)で調整可能。装薬量や弾頭重量の異なるさまざまなショットシェルに対応し、セミオート射撃でも確実に作動(回転)させることができる

 

チャージングハンドルはハンドガードの左側上部にある。銃を構えて操作するにはやや遠く、本体が重いこともあり力を入れにくい。さらにリコイルスプリングが強いため、コッキングはなかなか手強い

 

ダストカバーを開けたところ。ショットシェルを排出するためエジェクションポートは大きく、ボルトキャリアーもゴツい

 

セレクターレバーはアンビタイプ。指かけ部が90 °の角度で2枚あり、セレクターの位置がどちらにあってもアクセスしやすくなっている

 

 マガジンは5連ボックスマガジンが標準で、オプションで8連と10連のボックス、また20連と30連のドラムマガジンも用意されている。とくにドラムマガジンはシャープなスケルトンデザインで、無駄にカッコいい。これにショットシェルを詰め込んで装填すると、ORIGIN 12はなんとも迫力のある姿になるのだ。

 20連ドラムマガジンにショットシェルをフルロードするにもコツがいる。ドラムマガジン+銃本体で重さは8kgくらいありそうで、これを振り回すとなるとそれなりの体力と覚悟が必要だ。

 次のレポートではこの迫力ある銃を実射。その様子をお届けしよう。

 

実射レポートはこちら

 

 

TEXT & Photos:櫻井朋成(Tomonari SAKURAI)

Special Thanks to

Armurerie FMR Unique :https://armurerie-fmr.fr

 

この記事は月刊アームズマガジン2021年4月号 P.126~133より抜粋・再編集したものです。

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