2020/01/14
【中編】Anson “Hollywood” Beck Law Enforcement Class
厳しいガンコントロールにも関わらず、かなりの射撃人口をかかえる米・南カリフォルニア。タクティカルトレーニングとして定期的にクラスを開催しているスクールは、なんと40以上もある。受講者がローエンフォースメント(LE :ポリスなど法執行機関)関係者のみというカービンクラスを取材させてもらった。
【前編】Anson “Hollywood” Beck Law Enforcement Classはコチラ!
17挺の5.56mmが一斉に発射されると、空気が揺らぐのがわかる。スタンディングから、このニーリングまで1.5秒ほどで移行する。
異なったスキルを持つ生徒たちに、各々が満足するような1日カリキュラムを組み上げるというのは、それこそ至難の技だ。この日のカリキュラムを順番に追ってみたい。
1:サイトイン=50ヤード(約45m)から、スローファイアでサイトインをする。各人がどこを狙えばどこに着弾するか、完全に把握しておく。
2:3ヤードから25ヤードまでのポイントオブインパクト(狙点と着弾点)を確認=M4スタイルのカービンでは、サイトの位置が実際のボア(バレル中心の延長線)より上にあるため、距離が近くなるほど狙点(サイトを使って狙ったポイント)と着弾点に上下差が出る(狙った場所より下方に着弾してしまう)。ピンポイントで命中させるため、各距離での着弾点を覚え込ませていく。
スタンスを見ると、シューターの技量が見えてくる。肩に力が入っておらず、なかなかいいといわれていた。
3ヤードからライフルを放つというのは、あるようでない経験だ。LEOには必要不可欠なトレーニングとなる。この距離では狙点よりも着弾点のほうが5~6cmも下になる。
3:各距離からの、スタンディング(立射)、ニーリング(膝射)、プローン(伏射)と各ポジションへの素早い移行=「トゥースタンディング、トゥーニーリング、フォープローン!」というコマンドがかかったら、立射2発、膝射2発、伏射4発を撃つ。コマンドの順番、弾数は、毎回異なる。
4:タクティカルリロード&エマージェンシーリロード=タクティカルリロードというのは、装着したマガジンにまだ弾が残っていても、新しい状況に入る前にマガジンチェンジをしておくこと。時間と機会があれば、常にフルマガジンを装着しておく。エマージェンシーリロードは、撃ちつくしたマガジンのスピードリロードのことだ。
「体はYの字になるよう、左右均等に足を広げるようにする」
「タクティカルリロードは、このようにマガジンをクロスさせてマグチェンジする。少しでも時間があれば、常にフレッシュマガジンを装填しておけるようにするんだ」
5:ジャムクリア=これは、考えられるジャム(排夾不良、ダブルフィード、ケースの張り付き等)を作為的に作り上げ、それを素早くクリアして撃てる状態まで持っていくこと。瞬時にジャムの種類を見極め、すぐにクリアできれば処理をするが、時間がかかる場合には、セカンダリウェポン(ハンドガン等)に素早く移行する。
6:ターン&シュート=90度もしくは180度回転し、ターゲットを撃つ。すぐ横にパートナーがいても、銃口を向けることなく安全に素早く回転しなければならない。
エジェクションポートから2発のケースが見えている。チャージングハンドルを引いてボルトをオープンにし、マガジンを抜いてクリアする。
肩越しに危険を察知したら、ライフルを中心に回転する。
7:シュートオンムーブ=前後に動きながら、正確に撃つ。
8:アングルシュート=バリケードの上下左右から身体の露出を最小限にして、角度を変えて撃つ。ここではバリケードを撃ってしまう生徒が続出する。
これだけのカリキュラムをこなしていると、1日などあっという間に終わって
しまう。
【アームズマガジンウェブ編集部レビュー】
アンソン”Hollywood”ベック氏によるカリキュラムは非常に興味深い。多岐に渡る実戦的な内容となっており、射撃技術だけでなくマルファンクションなどへの対応まで網羅されているのが特徴的だ。次回の後編では、このクラスを締めくくる勝ち抜き戦にスポットを当てる。
Text&Photo:Hiro Soga
編集部レビュー:アームズマガジンウェブ編集部
この記事は月刊アームズマガジン2020年2月号 P.118-125より抜粋・再編集したものです。